ロシアのルーブル貨幣[写真 pixabay]
ブルームバーグとニューヨーク・タイムズ、米オンライン経済専門メディアのクォーツなどによると、ルーブルは先月7日に底を打ってから劇的な回復傾向を見せ、ウクライナ侵攻前の水準に戻った。ビジネススタンダードはルーブルが先月「世界で最も良い成果を出した通貨」だったと伝えた。
ルーブルは5日終値基準1ドル=84ルーブルで、ウクライナ侵攻直前である2月21日の80.42ルーブルと同水準だ。先月7日には139ルーブルで、40%以上急落したが、その後「鋭く持続的な」回復傾向を示し、ほぼすべての損失を回復した。ニューヨーク市立大学のポール・クルーグマン教授はニューヨーク・タイムズのコラムで「ロシアの経済役人らは(ウクライナで戦争を率いている)将官より有能なようだ」と伝えた。
◇ロシア、「極端な防衛」でルーブル反騰させる
クルーグマン教授の指摘の通り、ルーブルの反騰は自由な取引と需要・供給にともなう結果ではなく、ロシアの経済役人らの極端な防衛措置で作り出した。ロシア中央銀行は2月28日に金利を20%引き上げた。ルーブルをドルやユーロに替える代わりに、ルーブルで貯蓄させて下方圧力を減らした。ロシア政府は自国企業が海外で稼いだ収益の80%をルーブルに替えるよう要求することでルーブルに対する相当な需要を創出した。また、外国人が所有する証券の売却を禁止し、ロシア人の海外送金と外国為替貸付を制限した。
ロシア政府は最近西側諸国を相手に天然ガス購入代金をルーブルで決済するようと通知した。該当国がガス代金を支払うためにルーブルを購入すれば通貨の市場価値が自然に高まる効果を期待したものだ。米シンクタンクのアトランティック・カウンシルのチャールズ・リッチフィールド副局長は「ロシアの『ガス代金ルーブル決済政策』がルーブルに対する見通しを変え反騰の要因になった」と話した。
◇「長期的な急落は防ぎにくいだろう」
だがこうした上昇傾向を続けるのは難しいというのが専門家らの共通した見解だ。ロシア中央銀行初代副総裁だったセルゲイ・アレクサシェンコ氏は「ロシアはルーブル相場を維持するため一時的に外国為替市場を閉鎖したが、永遠にルーブルを市場論理から切り離すことはできない。西側の制裁によりすでにロシアの物価上昇が始まっており、製造業者の核心部品不足は深刻化している」と指摘した。
オランダのラボバンクの通貨専門家は「ロシアが外貨建て負債の償還に直面することで通貨は再び圧迫を受けるほかない。ロシアから撤退する外国企業の資産売却と現金引き出しが始まればルーブル急落を防げないだろう」と予想した。ブリンケン米国務長官は「同盟国とともにロシア制裁の弱点はふさぎ、新たな制裁は追加を続けている。近くロシアが人為的に支えていたルーブル相場に変化を見ることになるだろう」と話した。
ルーブルの反騰がロシア経済には事実上の悪材料になりかねないとの指摘も出る。西側ではルーブル上昇を根拠に対ロシア制裁の強度を高めるべきとの主張が力を増している。米共和党のパット・トゥーミー上院議員は「制裁がロシア経済を実質的にまひさせられなかったという証拠。ロシアの石油とガス販売を世界的に遮断しロシアの収入源を根本から封鎖しなければならない」と強調した。
◇「ルーブルへの執着、経済政策判断への障害のシグナル」
英キャピタル・エコノミクスのウィリアム・ジャクソン氏は「ルーブル相場はロシアの経済健全性を代表する指標ではない。ルーブルと関係なくすでにロシアの財政状態は極度にタイトになった」と話した。パリ政治学院のセルゲイ・グリエフ教授は「ロシアはルーブルを反騰させて経済を回復しようとするのではなく、西側の制裁が無力だと『宣伝効果』を得たい」と話した。
クルーグマン教授は「ロシアのルーブル防衛は印象的だがプーチン政権の経済政策がうまくいくという証拠は決してない」と強調した。続けて「プーチンの軍事顧問が恐れからウクライナ戦況を正確に報告できなかったように、彼の経済顧問も似た状況だろう。(ルーブルに対する執着は)ロシアの経済分野でも政策判断に障害がきたという新たな信号かもしれない」と分析した。
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