2022北京冬季オリンピック(五輪)が20日に閉幕した。選手たちの汗、結実に歓呼しながらも、心の片隅はすっきりしなかった五輪だ。言論統制や不公正判定論争、中華主義愛国心にまみれた観客、薬物検出後も出場した15歳のフィギュア少女とその背後の大人たちの姿などで全体主義や権威主義強大国の暗い面が際立った。1936年ベルリン五輪、1980年モスクワ五輪、1984年ロサンゼルス五輪、1988年ソウル五輪、2008年北京五輪など、歴代五輪は開催国の体制の性格、国際社会力の流れまで見せた歴史の象徴だ。今はITの発達で数億人がリアルタイムで現場を見ながら評価もする。
現場の雰囲気に加えて駐韓中国大使館の常軌を逸した行動で韓国内の反中感情は高まった。中国のTHAAD(高高度ミサイル防衛体系)報復と文化工程、文在寅(ムン・ジェイン)政府の低姿勢の対中外交で蓄積された感情だ。全体より個人の生活や自由、公正に鋭敏な青年世代からは嫌中まで感じられる。
最近、駐韓オーストラリア外交官と会った席で「経済報復を受けながらも中国に数年間対抗しているオーストラリアの立場を、韓国の国民は理解することができる」と話したところ、改まった表情でこう答えた。「反中がオーストラリアの目標ではない。オーストラリアの国益を最優先にするところでやむを得ず取っているアプローチ法にすぎない」。
2017年5月末、オーストラリアで政府官僚・学者に会った時、彼らの会話のテーマはすべて「中国をどう扱うべきか」だった。米国中心に安保同盟を結んでいるオーストラリアは2000年代以降、「アジア局」という地形的アイデンティティを強化し、10年の交渉の末に2014年中国とFTAを締結した。オーストラリアの最大輸出国(38%)であり、最大貿易黒字相手国が中国で、オーストラリア内の留学生の30%が中国人だ。中国のTHAAD報復に振り回されていた韓国よりも、当時中国を警戒する雰囲気がはっきり感じられた。オーストラリア訪問中に会ったある官僚は1カ月前に中国代表団が台無しにした国際会議の話をしながら首を左右に振った。オーストラリアで開かれたダイヤモンド取引関連の会議にオブザーバーとして参加した台湾を除外しろとし、ジュリー・ビショップ外交長官の開幕挨拶の言葉を遮って大騒ぎしたという。2016年中国側から資金を受け取ったオーストラリア政治家のスキャンダルもあったというが、とにかく「これ以上中国に依存してはいけない」という危機感、決起が感じられた。
2017年はオーストラリア政府が対外政策方向を再確立する外交白書タスクフォースを稼動した年だ。中央政府と6州政府、海外公館、産業界、シンクタンク、大学の専門家の意見を総網羅し、1年間作業した結果を同年11月に首相と外交および商務長官が共同で発表した。オーストラリア政府が14年ぶりに出した白書の核心は覇権国に浮上した中国。「(習近平執権以後)さらに好戦的になって行く中国と民主主義価値を巡り衝突する可能性があるため、オーストラリアは同盟関係を深化して考えが似ている領域内の国家と戦略的提携を拡大しなければならない。そうしてこそ自由民主主義と政治・経済・宗教の自由、人権・法治などオーストラリアのアイデンティティを守ることができる」というものだ。最近、米英豪3カ国のインド太平洋における安全保障枠組み(AUKUS=オーカス)、日米豪印戦略対話(QUAD=クアッド)同盟を結成した背景だ。
「中国の報復はオーストラリアの主権を守り同盟を維持するための費用と見なす。これに対してオーストラリア内の論争はないほうだ」(イ・ベクスン元豪大使)というが、これは白書を出して激しい社会的議論を経たからこそ可能だったことではないかと思う。オーストラリア外交部によると、白書は「政府の方向と裁量により対外政策を再確立する必要がある時に作り、今後5~10年のガイドラインをまとめた包括的な枠組み」だという。
韓国はどうか。毎年出てくる外交白書は外交部が部内で集合した1年の外交活動記録集で自画自賛性が濃厚だ。実際のところ、我々は国家アイデンティティを守って国益最大化のためにどのような外交軸を持つのかに対する国家的総論を集めたことがない。そのため政権が変わるたびに外交政策はコロコロ変わる。大統領候補が「領海侵入の中国、北朝鮮漁船を撃沈してしまわなければならない」「THAADのような凶悪なものではなくボイラーを置く」〔李在明(イ・ジェミョン)〕と話し、「THAAD追加配置」〔尹錫悦(ユン・ソクヨル)〕というたった1行の公約を発表しただけで、ため息だけが出てくる。
もちろん韓国社会の外交・安保政策をまとめて白書に入れる過程は容易ではない。北朝鮮を巡って両極端に二分されているうえに対北観点で派生する対米・対中外交路線も陣営の沼に落ちているからだ。だが、やろうと声さえ上げれば、自由と民主主義、人権と法治の価値を追求する文化魅力国・韓国の生存と平和繁栄政策ロードマップを作る賢人は多い。北京冬季五輪を通じて隣り合った図体の大きい国々のアイデンティティを国民皆が再確認したという点は意味が少なくない。だが、反中の声ばかり高めたからといってできることではない。
キム・スジョン/論説委員
現場の雰囲気に加えて駐韓中国大使館の常軌を逸した行動で韓国内の反中感情は高まった。中国のTHAAD(高高度ミサイル防衛体系)報復と文化工程、文在寅(ムン・ジェイン)政府の低姿勢の対中外交で蓄積された感情だ。全体より個人の生活や自由、公正に鋭敏な青年世代からは嫌中まで感じられる。
最近、駐韓オーストラリア外交官と会った席で「経済報復を受けながらも中国に数年間対抗しているオーストラリアの立場を、韓国の国民は理解することができる」と話したところ、改まった表情でこう答えた。「反中がオーストラリアの目標ではない。オーストラリアの国益を最優先にするところでやむを得ず取っているアプローチ法にすぎない」。
2017年5月末、オーストラリアで政府官僚・学者に会った時、彼らの会話のテーマはすべて「中国をどう扱うべきか」だった。米国中心に安保同盟を結んでいるオーストラリアは2000年代以降、「アジア局」という地形的アイデンティティを強化し、10年の交渉の末に2014年中国とFTAを締結した。オーストラリアの最大輸出国(38%)であり、最大貿易黒字相手国が中国で、オーストラリア内の留学生の30%が中国人だ。中国のTHAAD報復に振り回されていた韓国よりも、当時中国を警戒する雰囲気がはっきり感じられた。オーストラリア訪問中に会ったある官僚は1カ月前に中国代表団が台無しにした国際会議の話をしながら首を左右に振った。オーストラリアで開かれたダイヤモンド取引関連の会議にオブザーバーとして参加した台湾を除外しろとし、ジュリー・ビショップ外交長官の開幕挨拶の言葉を遮って大騒ぎしたという。2016年中国側から資金を受け取ったオーストラリア政治家のスキャンダルもあったというが、とにかく「これ以上中国に依存してはいけない」という危機感、決起が感じられた。
2017年はオーストラリア政府が対外政策方向を再確立する外交白書タスクフォースを稼動した年だ。中央政府と6州政府、海外公館、産業界、シンクタンク、大学の専門家の意見を総網羅し、1年間作業した結果を同年11月に首相と外交および商務長官が共同で発表した。オーストラリア政府が14年ぶりに出した白書の核心は覇権国に浮上した中国。「(習近平執権以後)さらに好戦的になって行く中国と民主主義価値を巡り衝突する可能性があるため、オーストラリアは同盟関係を深化して考えが似ている領域内の国家と戦略的提携を拡大しなければならない。そうしてこそ自由民主主義と政治・経済・宗教の自由、人権・法治などオーストラリアのアイデンティティを守ることができる」というものだ。最近、米英豪3カ国のインド太平洋における安全保障枠組み(AUKUS=オーカス)、日米豪印戦略対話(QUAD=クアッド)同盟を結成した背景だ。
「中国の報復はオーストラリアの主権を守り同盟を維持するための費用と見なす。これに対してオーストラリア内の論争はないほうだ」(イ・ベクスン元豪大使)というが、これは白書を出して激しい社会的議論を経たからこそ可能だったことではないかと思う。オーストラリア外交部によると、白書は「政府の方向と裁量により対外政策を再確立する必要がある時に作り、今後5~10年のガイドラインをまとめた包括的な枠組み」だという。
韓国はどうか。毎年出てくる外交白書は外交部が部内で集合した1年の外交活動記録集で自画自賛性が濃厚だ。実際のところ、我々は国家アイデンティティを守って国益最大化のためにどのような外交軸を持つのかに対する国家的総論を集めたことがない。そのため政権が変わるたびに外交政策はコロコロ変わる。大統領候補が「領海侵入の中国、北朝鮮漁船を撃沈してしまわなければならない」「THAADのような凶悪なものではなくボイラーを置く」〔李在明(イ・ジェミョン)〕と話し、「THAAD追加配置」〔尹錫悦(ユン・ソクヨル)〕というたった1行の公約を発表しただけで、ため息だけが出てくる。
もちろん韓国社会の外交・安保政策をまとめて白書に入れる過程は容易ではない。北朝鮮を巡って両極端に二分されているうえに対北観点で派生する対米・対中外交路線も陣営の沼に落ちているからだ。だが、やろうと声さえ上げれば、自由と民主主義、人権と法治の価値を追求する文化魅力国・韓国の生存と平和繁栄政策ロードマップを作る賢人は多い。北京冬季五輪を通じて隣り合った図体の大きい国々のアイデンティティを国民皆が再確認したという点は意味が少なくない。だが、反中の声ばかり高めたからといってできることではない。
キム・スジョン/論説委員
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