韓国与党・国民の力の大統領候補の一人、尹錫悦（ユン・ソクヨル）前検察総長が８日、いわゆる「告発教唆」疑惑に登場する文書を「出どころと作成者がない怪文書」と規定した。また、過去の「金大業（キム・デオプ）兵風工作」事件などに言及しながら「私がそんなに恐いのか。私を国会に呼んでほしい。堂々と私の立場を話す」とも述べた。

予告になかった尹氏のこの日の記者会見は午後４時４０分に国会疎通館で開かれた。記者会見を自ら要望した理由については「選挙を迎えるたびにこうした形の工作と煽動で選挙をしてよいのかという嘆かわしい思いで皆さんの前に立った」とし「今後、政治工作をするのならよく準備をしてまともにやるべきだ」と語った。

「告発教唆」疑惑とは、昨年の４・１５総選挙を控えて尹検察総長が孫準晟（ソン・ジュンソン）検事（当時最高検察庁捜査情報政策官）を通じて、当時の金雄（キム・ウン）未来統合党候補（現国民の力議員）と接触して統合党が与党の人物を告発するようにそそのかしたという疑惑だ。孫検事が金議員に送ったという告発状に関連し、尹氏は「私の妻（キム・ゴンヒ氏）と韓東勲（ハン・ドンフン）検事長の事案２件を一つにして告発状を書くというのは常識に合わない。検事が作成したというのは常識的に納得がいかない」と話した。


◆尹氏「私がそんなに恐いのか。工作して除去すれば政権が創出されるのか」

また尹氏は「いったいこれ（告発状）を野党に渡して何をどうするということなのか。告発教唆を通じて私に有利なことがあるのか」と反問した。

続いて「金大業事件」「キヤン建設事件」などに言及し、「国民はでたらめに流されて判断を誤る方たちではない」とし「私がそんなに恐いのか。私一人を工作で除去すれば政権創出がそのまま実現するのか」と声を高めた。金大業事件とは、２００２年の大統領選当時、李会昌（イ・フェチャン）ハンナラ党候補の家族（息子と夫人）に関連した疑惑の提起で、捜査の結果すべて虚偽暴露と確認されたが、それは大統領選の後だった。

尹氏は「国会に呼んでほしい。堂々と私の立場を話す」とし「疑惑を提起した人は事実でなければ責任を取る覚悟をしてほしい」と警告した。

この日の尹氏の記者会見は昼食後に突然決定した。尹氏陣営の関係者が記者会見について伝えられたのは会見開始２時間前の午後２時３０分で、取材陣に伝えられたのは１時間後の午後３時３０分ごろだった。当初、「疑惑は事実でないので強く対応しよう」という参謀の助言に対し、尹氏は「もう少し見守ろう」と慎重な姿勢を見せたという。しかしこの日午前、金雄議員が記者会見で「記憶がない」と述べて関連疑惑が解消されなかったため、尹氏側の雰囲気も変わった。午後に会見場に出てきた尹氏の手にはＡ４用紙もなかった。原稿なく冒頭発言－質疑応答と続いた１８分間、尹氏は終始、声を高めて関連疑惑を強く否認した。

尹氏はこの日の会見で、関連文書をメディアに情報提供した人を最高検察庁監察部が公益申告者と認めたことも非難した。尹氏は「その人が誰であり、過去に汝矣島（ヨイド）で何があったのかすべて聞いた」とし「要件も合わない人を、メディアに情報提供してすべて公開した人を突然公益情報提供者にするのか」と批判した。情報提供者というＡ氏に向けては「そのような爆弾を投げたのなら、隠れずに堂々と出てきて、デジタル文書の出どころ、作成者を正確に出すべきだ」と要求した。一方、尹氏側は自主的に「政治工作真相究明特別委員会」も設置した。

この日の会見をめぐり国民の力では「尹錫悦特有の野性が戻ってきた」という評価が出てきた。６月末の政治参加宣言以降、相次ぐ失言で支持率が停滞していた尹氏が、「告発教唆」疑惑という危機局面で自ら前に立って正面突破を図ったということだ。尹氏は検察総長在だった昨年１０月の国政監査で、共に民主党の猛攻に「検察総長は法務部長官の部下ではない」と発言して退かず、強い印象を残した。

尹氏のこの日の会見を民主党は強く糾弾した。李龍彬（イ・ヨンビン）報道官は論評で「本質を曇らせて大声を出し『国会に呼べ』と言いながら、政治攻勢と違わない強引な主張ばかりした」とし「このような傍若無人の態度を見せるのなら記者会見をする必要もない。不誠実で傲慢不遜の態度」と批判した。李在明（イ・ジェミョン）京畿道（キョンギド）知事陣営のイ・ギョン報道官は論評で「報道したのがメジャーのメディアでないからといって蔑視し、最高検察庁で公益申告者と認められた情報提供者を攻撃した」とし「メッセージで反論できないためメッセンジャーを攻撃しようという明白なやり方」と一喝した。

これに先立ち尹氏は会見で「今後、政治工作をするのならインターネットメディアにするのではなく、国民の誰もが知るメジャーなメディアを通すべき」と述べた。これに対しある記者が「メジャーでなければ疑惑を報道できないのか」と尋ねると、尹氏は「（工作をするのなら）最初から読者も多いところですべきだ。どうせみんながついてくるのに。ＫＢＳ（韓国放送公社）やＭＢＣ（文化放送）で始めるなり、そうでなければもっと見守るかだ」と話した。