韓国海洋水産部は「南海只族海峽の竹防簾(チュッパンリョム)漁業」が9日、国連食糧農業機関(FAO)が指定する世界農業遺産に新たに登録されたと明らかにした。写真は設置された竹防簾の様子。[写真 ニュース1]
◇「南海の竹防簾」、韓国8件目の世界農業遺産登録
この日、海洋水産部や南海郡によると、7~8日に開かれた国連食糧農業機関(FAO)世界農業遺産国際会議で、南海の竹防簾を世界農業遺産に登録することで最終的に決定した。韓国の遺産としては8件目となる。これに先立ち、2014年から▷済州島(チェジュド)のパッタム農業システム▷青山島(チョンサンド)のクドゥルチャン灌漑水田▷河東(ハドン)の伝統茶農業システム▷錦山(クムサン)の高麗人参農業システム▷潭陽(タミャン)の竹林農業システム▷済州の海女漁業システム▷河東・光陽(クァンヤン)、蟾津江(ソンジンカン)の蟾津江のソントゥル(手綱)蜆漁システム--など7つの農・漁業が世界農業遺産に登録された。
FAOは伝統を持つ農漁業システムの保全を目的に2002年から世界農業遺産制度を運営してきた。地域共同体の食糧・生計維持に寄与し、自然資源に対する独創的な適応技術など5つの基準で選定する。昨年末基準で世界28カ国89種類の農漁業が世界農業遺産に指定された。
◇狭い水路・速い潮流で魚を待ち受ける罠漁業
南海郡などによると、南海の竹防簾は水の流れが速い狭い水路に竹で作った「オサリ」(またはオサル)と呼ばれる罠の漁具を設置してカタクチイワシ(韓国語:ミョルチ)などの魚をとる伝統漁業だ。長さ10メートル前後のカシの杭を数百本、「V」字形に打ち込み、杭の間に竹を簾のように細かく編んで柵を作った後、満潮の時に海水に乗って流れ込んだイワシが干潮の時に柵に押し戻されて円筒形の罠の中に閉じ込められるという仕組みだ。
このような竹防簾は南海只族海峡の自然環境に合わせて発達した。只族海峡は幅が375メートル~2700メートルと狭く、潮の干満の差は最大3.6メートルと大きい。このように狭い水路に時速13~15キロメートルという速さで潮流が流れ込むため、泳ぐ力を失った魚がこの漁具に押し流されてくる。南海郡只族海峡には竹防簾が23基設置されている。
◇「宝物のカタクチイワシ」をとる500年の歴史の「原始漁業」
竹防簾によってとれた「南海竹防カタクチイワシ」は地域を代表する特産品として、カタクチイワシの中でも最上品として扱われる。漁船で網によってとれたカタクチイワシはほとんどが漁獲過程でうろこが取れたり漁獲直後に息が絶えたりして風味や商品性が落ちるが、竹防カタクチイワシは竹防簾の中に入ってきたイワシを生きたままザルですくい出すため、うろこが損なわれることなく状態が良好なため高い品質を維持することができる。
竹防簾は地域住民の重要な生計基盤であり、「ミョルチサムパプ」(カタクチイワシの葉野菜包みご飯)、「ミョルチサムジャン」(カタクチイワシの合わせ味噌)、「ミョルチフェムッチム」(カタクチイワシの刺身和え物」、「ミョルチチョッカル」(カタクチイワシの塩辛)、「ミョルカンジャン」(カタクチイワシの醤油)など、地域の食でも大きな比重を占めてきた。
竹防簾の歴史は500年を越える。朝鮮睿宗(イェジョン)元年(1469年)に編纂された『慶尚道続撰地理誌』には「防箭(パンジョン)ではイシモチ、ガンギエイ、タコが産出される」という記録が残っているが、ここに登場する「防箭」が竹防簾と最も近い用語と推定される。1752年英祖(ヨンジョ)の時に制定された『均役事目』を読むと、慶尚道の漁業を説明する内容の中で「竹を編んで簾を作り、杭を立てて柱とし、魚路を横断することを防簾(パンニョム)という」という一文に登場する「防簾」こそが竹防簾だ。
◇漁業のデモンストレーションに文化解説まで…「大きな役割を果たした地域の自発的参加」
南海の竹防簾漁業はこのように独特の海洋環境と歴史的背景、文化活動などと絡み合い、現在まで発展を続けてきた。海洋水産部はこのような価値に着目して竹防簾漁業を2015年国家重要漁業遺産に指定した。続いて2023年に世界農業遺産登録申込書を提出、今回その価値が世界的に認められた。
特に今回の登録には地域共同体の自発的な参加と伝統継承に対する意志が核心的な動力として働いた。今年5月、世界農業遺産関連専門家による現場実態調査が行われた当時、漁業関係者が伝統漁法をデモンストレーションして見せ、文化解説にも積極的に取り組んで登録の基盤を固めた。南海郡は竹防簾漁業の価値を広く知らせて観光と関連付けたさまざまな後続事業を準備中だ。郡守のチャン・チュンナム氏は「登録過程で多大な協力をしてくれた竹防簾保存会メンバーと漁業関係者の皆さんに深く感謝申し上げる」と明らかにした。
この記事を読んで…