中央選挙放送討論委員会の主管で18日にソウル上岩洞(サンアムドン)SBSスタジオで開かれた第21代大統領選挙1次候補者討論会で記念撮影する金文洙(キム・ムンス)国民の力候補、権英国(クォン・ヨングク)民主労働党候補、李俊錫(イ・ジュンソク)改革新党候補、李在明(イ・ジェミョン)共に民主党候補 [国会写真記者団]
誰が大統領に選出されるかはもちろん重要だが、長い目で見れば副次的なものかもしれないという考えになる。憲政史上2度目の大統領罷免という国家的悲劇を経験しても、似た事態の再発を防ぐ構造的・制度的補完装置の用意に政界が依然として消極的であるからだ。
世論の改憲圧力に押されるようにようやく李在明候補と金文洙候補が約束でもしたかのように改憲公約をそれぞれ発表した。李候補は大統領4年連任制と決選投票制を導入し、首相を国会で推薦する案などを提示した。金文洙候補は韓悳洙(ハン・ドクス)前首相の提案のように大統領任期の5年→3年短縮、大統領4年重任制、不訴追特権の廃止などを含む改憲案を発表した。金候補が「果敢な政治改革のために直ちに改憲協約を締結しよう」と提案したが、双方の立場の違いが大きいうえ、国会議席3分の2以上の同意を得なければならないため、改憲が短期間で実現するかは疑問だ。
改憲公約とは別に両候補は多様な分野で競争的に公約を出すが、国家大戦略に関する真摯な悩みと議論は見えず遺憾だ。1948年に始まった大韓民国の歴史を振り返ると、李承晩(イ・スンマン)政権は建国と統一が至上課題であり、朴正熙(パク・ジョンヒ)政権は「良い暮らしをしよう」をスローガンに産業化ビジョンを推進した。1987年に直選制を手にして民主化も達成した。その後の国家ビジョンはソウル大法学部教授を務めた為公・朴世逸(パク・セイル)先生(1948ー17)が生前に提示した先進化と統一だった。経済的・物質的にはすでに先進国入りしたが、政治レベルと国民の意識はまだ先進化の敷居を越えられずにいる。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権の核武装暴走と「敵対的な二つの国家」路線で統一ははるか遠い。
このように暗澹とした状況で大韓民国は国家ビジョンをどう新しく提示するべきなのか。国家ビジョンは国家アイデンティティを明確にするところから出発する必要がある。自由民主主義の基本秩序の上で国民の生命と財産、幸福と安全を守ることができるビジョンと戦略を明示しなければいけない。経済・国防・外交・文化と科学技術を包括した総合国力基準で大韓民国発足100周年となる2048年ごろ主要5カ国(G5)入りするという「2048 G5」を中長期国家目標に設定するのはどうだろうか。いくら良いビジョンでも国民の心をつかむことができなければ空念仏となる。国民は汝矣島(ヨイド)政治に嫌気が差して嫌悪するが、それでも政治の役割が重要だ。権力争いに忙しいエリート集団の極限分裂から克服しなければいけない。政治が分散している国民の力量を一つに集めることさえできれば「2048 G5」は夢ではない。
現実は暗鬱であっても希望の芽が全くないわけではない。志ある人たちは「国がこれではいけない」と懸念の声を出し、それなりの代案を探っている。17日に発足した韓国国家戦略学会(会長ハン・ヨンソプ)が良い事例だ。「1993年以降、政権交代の過程で中長期国家戦略が失踪した」という批判的な認識から出発した。極限政争の温床として指弾される第22代国会は20日、「国会外交安保フォーラム」を発足させる。進歩・保守性向の外交・安保専門家と言論人が参加し、政派を超越した外交・安保戦略の最大公約数を模索しようという趣旨だ。主要大統領候補は残りの選挙運動期間にも中長期国家大戦略を真摯に悩むことを望む。国家大戦略を提示する候補に貴重な一票を投じるのはどうだろうか。
チャン・セジョン/論説委員
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