半導体産業の構造は1980年代中盤に大きな変化を迎えた。半導体を設計だけするファブレスと製造だけするファウンドリーというビジネスモデルが定着することになり、製造工程別に専門企業が登場した。米国主導の自由貿易の流れにより半導体製造工程をひとつの国や地域ですべて遂行するのではなく、複数の国がそれぞれ核心能力を発揮する世界的供給網が形成された。
長期にわたり構築された世界的半導体供給網は半導体を最も効率的で経済的に生産するための構造だった。世界的半導体供給網をうまく活用した米国は半導体製造工程のうち最も付加価値が高い設計分野(ファブレス)に集中した。
世界市場で注目されるエヌビディアをはじめとしてクアルコム、ブロードコム、AMDのような企業が成長した。これらファブレス企業は設計した半導体に対する知的財産権(IP)を持っており、自社ブランドで製品が発売されるため世界の半導体市場で米国のシェアが最も高い。
しかし2021年に米国政府が半導体など4つの核心産業供給網に発動した大統領令などを通じて確認されたように、米国で直接生産される半導体の割合はとても低い。半導体は台湾、韓国、中国などアジア地域で最も多く生産されているが、こうした現象を強く批判してきた政治家が20日に就任したトランプ米大統領だ。
彼は数年前から台湾のTSMCが世界の半導体市場で重要な企業に浮上すると「台湾が米国の半導体産業を奪っていった」と批判した。大統領選挙期間に「米国の経済復活に向け他の国々から製造業を再び米国に取り戻す」と公約を提示した。彼が言及した「他の国々」に韓国も含まれている。
2021年に世界的な半導体不足現象が発生してから米国政府の半導体産業政策に米国国内半導体製造施設拡充が追加された。半導体製造施設拡充に向けバイデン政権は韓国のサムスン電子と台湾のTSMCなどにも米国企業と差別のない補助金支給を約束した。これを受けこれら企業はいま米国に工場を建設している最中だ。
ところが第1次トランプ政権に続き第2次政権では米国優先主義基調がさらに強まる見通しだ。これに伴い、米国企業と差別のない補助金を支給することにしたバイデン政権の政策が第2次トランプ政権でそのまま履行されるのか不透明になった。
こうした不透明な状況で韓国政府と企業は対米投資に対し2種類のシナリオを考えることができる。まず米国の世界的半導体再編の動きに参加し米国に工場を拡張することだ。この場合米国に投資をもっと増やさなければならないため半導体補助金をしっかりと受けるための戦略を立てなければならない。このためには米国との同盟を強化し韓国政府と企業の交渉能力を最大限引き上げなければならない。すなわち、トランプ氏の意図を正確に把握しウィンウィンできる戦略が必要だ。
次に米国政府の補助金を期待せず韓国のメガ半導体クラスターに投資を集中する方法がある。トランプ氏は関税を高めれば製造工場が米国に戻るという趣旨の発言をした。だが半導体は産業構造上単純に関税回避のために米国に工場を作る必要はない。したがってこれ以上米国に工場を増やすことが上策ではなくなるかもしれない。それよりはいま京畿道竜仁(キョンギド・ヨンイン)一帯に推進中の世界最大規模の半導体クラスターを1日でも早く完成することが近道となり得る。これを通じ韓国が半導体供給国の地位をさらに強化すれば対米外交交渉力をより高めることもできるだろう。
いま半導体先進国は2021年の世界的半導体供給不足現象後に先を争って半導体産業支援関連法を制定し角逐を行っている。これに伴い、世界的半導体供給網が再編される混沌期にある。ここに米国優先主義を標ぼうしたトランプ氏が当選したことで米国の半導体産業政策方向は決して韓国に有利に見えない。だが韓国政府と企業はこれよりさらに厳しい状況もうまく突破してきたため賢明な判断と優秀な戦略で対処できると期待する。
キム・ヤンペン/産業研究院(KIET)専門研究委員
◇外部執筆者のコラムは中央日報の編集方針と異なる場合があります。
長期にわたり構築された世界的半導体供給網は半導体を最も効率的で経済的に生産するための構造だった。世界的半導体供給網をうまく活用した米国は半導体製造工程のうち最も付加価値が高い設計分野(ファブレス)に集中した。
世界市場で注目されるエヌビディアをはじめとしてクアルコム、ブロードコム、AMDのような企業が成長した。これらファブレス企業は設計した半導体に対する知的財産権(IP)を持っており、自社ブランドで製品が発売されるため世界の半導体市場で米国のシェアが最も高い。
しかし2021年に米国政府が半導体など4つの核心産業供給網に発動した大統領令などを通じて確認されたように、米国で直接生産される半導体の割合はとても低い。半導体は台湾、韓国、中国などアジア地域で最も多く生産されているが、こうした現象を強く批判してきた政治家が20日に就任したトランプ米大統領だ。
彼は数年前から台湾のTSMCが世界の半導体市場で重要な企業に浮上すると「台湾が米国の半導体産業を奪っていった」と批判した。大統領選挙期間に「米国の経済復活に向け他の国々から製造業を再び米国に取り戻す」と公約を提示した。彼が言及した「他の国々」に韓国も含まれている。
2021年に世界的な半導体不足現象が発生してから米国政府の半導体産業政策に米国国内半導体製造施設拡充が追加された。半導体製造施設拡充に向けバイデン政権は韓国のサムスン電子と台湾のTSMCなどにも米国企業と差別のない補助金支給を約束した。これを受けこれら企業はいま米国に工場を建設している最中だ。
ところが第1次トランプ政権に続き第2次政権では米国優先主義基調がさらに強まる見通しだ。これに伴い、米国企業と差別のない補助金を支給することにしたバイデン政権の政策が第2次トランプ政権でそのまま履行されるのか不透明になった。
こうした不透明な状況で韓国政府と企業は対米投資に対し2種類のシナリオを考えることができる。まず米国の世界的半導体再編の動きに参加し米国に工場を拡張することだ。この場合米国に投資をもっと増やさなければならないため半導体補助金をしっかりと受けるための戦略を立てなければならない。このためには米国との同盟を強化し韓国政府と企業の交渉能力を最大限引き上げなければならない。すなわち、トランプ氏の意図を正確に把握しウィンウィンできる戦略が必要だ。
次に米国政府の補助金を期待せず韓国のメガ半導体クラスターに投資を集中する方法がある。トランプ氏は関税を高めれば製造工場が米国に戻るという趣旨の発言をした。だが半導体は産業構造上単純に関税回避のために米国に工場を作る必要はない。したがってこれ以上米国に工場を増やすことが上策ではなくなるかもしれない。それよりはいま京畿道竜仁(キョンギド・ヨンイン)一帯に推進中の世界最大規模の半導体クラスターを1日でも早く完成することが近道となり得る。これを通じ韓国が半導体供給国の地位をさらに強化すれば対米外交交渉力をより高めることもできるだろう。
いま半導体先進国は2021年の世界的半導体供給不足現象後に先を争って半導体産業支援関連法を制定し角逐を行っている。これに伴い、世界的半導体供給網が再編される混沌期にある。ここに米国優先主義を標ぼうしたトランプ氏が当選したことで米国の半導体産業政策方向は決して韓国に有利に見えない。だが韓国政府と企業はこれよりさらに厳しい状況もうまく突破してきたため賢明な判断と優秀な戦略で対処できると期待する。
キム・ヤンペン/産業研究院(KIET)専門研究委員
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