任鍾晳(イム・ジョンソク)元文在寅(ムン・ジェイン)大統領秘書室長が19日、「9・19平壌(ピョンヤン)共同宣言」6周年記念式で「統一するのをやめよう」として北朝鮮が主張する「二つの国家を受け入れよう」と発言し、逆風を受けている。脱北者の朴沖綣(パク・チュングォン)国民の力議員は脱北者と共に記者会見を開き、「3万4000人の脱北者と1000万人の離散家族の胸に釘を刺した」として国民への謝罪を要求した。
次期大統領選挙の候補として言及される呉世勲(オ・セフン)ソウル市長はSNSに「従北だと思っていたが忠北なのか」と投稿し、任元室長の主張は北朝鮮に忠誠を尽くすものではないのかと主張した。普段から言動が慎重な呉市長が理念的な鮮明性を浮き彫りにしながら正統保守層の好感を得ようとしたという評価が出ている。
最近、汝矣島(ヨイド、国会)で「李在明(イ・ジェミョン)親衛隊」と呼ばれる金民錫(キム・ミンソク)民主党最高委員も批判に加勢した。「(統一を強調した)金大中(キム・デジュン)元大統領なら金正恩委員長を説得しても同調はしなかったはず」と指摘した。突然「戒厳準備説」「李在明テロ説」を提起してラクビーボールのような言動で非難を受けた彼が、久々に常識的な発言をして目を引いた。
「突然投げかけた未熟な発想」という金最高委員の指摘のように、任元室長の統一否定はただの即興的な失言だろうか。1989年に全国大学生代表者協議会(全大協)第3期議長として林秀卿(イム・スギョン)氏の秘密訪朝を主導し、民主化と統一を叫んだ「386世代」の象徴性が強い任元室長が、過去最悪の猛暑の影響で統一を否定して「統一部もなくそう」と叫んだのだろうか。波紋が広がると26日、「(南北は)誰も是非を論じることはできない二つの国家」と釘を刺したため、一時的な寝言でないことが明らかになった。
昨年12月30日に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が労働党全員会議で南北関係を「交戦中の敵対的な二つの国家」と規定したのが、任元室長の今回の発言を触発したようだ。北朝鮮宣伝メディアが金委員長の注文を親切に国内まで伝達するこの時代に、昔のスパイのように短波放送をこっそり聴取して秘密指令を受ける必要もない。文在寅政権時代に民主党が国家情報院の対共捜査機能と力量を縮小し、韓国社会の安保意識までが弱まった。さらには憲法4条の統一条項を否定する公然とした発言までが出てくる状況になった。
ところが金正恩委員長と任鍾晳元室長の「反統一論」は同じで異なる点が見える。金委員長の統一否定は世襲独裁政権の生存という切迫した状況から出た「崖っぷちの布石」と解釈できる。たとえ核兵器を手に入れても南北の体制競争で敗れた状況で南北交流と統一議論は吸収統一に向かう可能性があることを金委員長が誰よりもよく知っているからだ。
配給ができない労働党よりも飯を食わせてくれる市場を信頼する「市場世代」が北朝鮮軍の主軸になった状況で「南朝鮮の資本主義の軽そうな文化」の浸透は体制に大きな脅威となる。このようにみると、祖父の金日成(キム・イルソン)主席、父の金正日(キム・ジョンイル)総書記の統一の痕跡まで消して鎖国統治に退行している。統一さえすれば満腹に食べて暮らせるとして北朝鮮住民を洗脳してきたが、政策を突然180度変えて統一を否定したため、表面上には見えなくても内部的な民心離反はかなり強いはずだ。金委員長の統一否定は政治的な賭けということだ。
半面、任元室長の統一否定は所属政党の同僚政治家の共感さえも得られずにいる。反共が国是と認識された1986年10月、全斗煥(チョン・ドゥファン)政権に向けて「この国の国是は反共でなく統一でなければいけない」と堂々と叫んだという理由で拘束された兪成煥(ユ・ソンファン)新韓民主党議員の勇気に例えるのもきまり悪い。
任元室長の統一否定発言は政治的言動の一貫性の側面でも疑わしい。2018年には南北首脳会談準備委員長を務めた。2019年に政界引退を宣言しながら「民間部門で統一運動をしていく」と述べた。その後、何が大きく変わったか。金正恩委員長の統一否定宣言が出ると、わずか9カ月の時差を置いてオウムのように統一を否定して相槌を打ったのではないのか。
すぐには実現しなくても統一という戦略的目標は絶対に放棄できない。もちろん統一を叫んだ86世代が次々と引退する中、MZ世代をはじめとする最近の若者は統一に極度に無関心であるのが実情だ。こうした状況で金正恩委員長の統一否定に相槌を打った任元室長の統一否定論は「逆説的功労」があるのかもしれない。統一を否定するからといって平和が訪れるどころか、永久分断を固着させ、北朝鮮の急変事態が発生すれば、中ロの介入の余地だけを広げるという危機意識を悟らせるのなら。
チャン・セジョン/論説委員
次期大統領選挙の候補として言及される呉世勲(オ・セフン)ソウル市長はSNSに「従北だと思っていたが忠北なのか」と投稿し、任元室長の主張は北朝鮮に忠誠を尽くすものではないのかと主張した。普段から言動が慎重な呉市長が理念的な鮮明性を浮き彫りにしながら正統保守層の好感を得ようとしたという評価が出ている。
最近、汝矣島(ヨイド、国会)で「李在明(イ・ジェミョン)親衛隊」と呼ばれる金民錫(キム・ミンソク)民主党最高委員も批判に加勢した。「(統一を強調した)金大中(キム・デジュン)元大統領なら金正恩委員長を説得しても同調はしなかったはず」と指摘した。突然「戒厳準備説」「李在明テロ説」を提起してラクビーボールのような言動で非難を受けた彼が、久々に常識的な発言をして目を引いた。
「突然投げかけた未熟な発想」という金最高委員の指摘のように、任元室長の統一否定はただの即興的な失言だろうか。1989年に全国大学生代表者協議会(全大協)第3期議長として林秀卿(イム・スギョン)氏の秘密訪朝を主導し、民主化と統一を叫んだ「386世代」の象徴性が強い任元室長が、過去最悪の猛暑の影響で統一を否定して「統一部もなくそう」と叫んだのだろうか。波紋が広がると26日、「(南北は)誰も是非を論じることはできない二つの国家」と釘を刺したため、一時的な寝言でないことが明らかになった。
昨年12月30日に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が労働党全員会議で南北関係を「交戦中の敵対的な二つの国家」と規定したのが、任元室長の今回の発言を触発したようだ。北朝鮮宣伝メディアが金委員長の注文を親切に国内まで伝達するこの時代に、昔のスパイのように短波放送をこっそり聴取して秘密指令を受ける必要もない。文在寅政権時代に民主党が国家情報院の対共捜査機能と力量を縮小し、韓国社会の安保意識までが弱まった。さらには憲法4条の統一条項を否定する公然とした発言までが出てくる状況になった。
ところが金正恩委員長と任鍾晳元室長の「反統一論」は同じで異なる点が見える。金委員長の統一否定は世襲独裁政権の生存という切迫した状況から出た「崖っぷちの布石」と解釈できる。たとえ核兵器を手に入れても南北の体制競争で敗れた状況で南北交流と統一議論は吸収統一に向かう可能性があることを金委員長が誰よりもよく知っているからだ。
配給ができない労働党よりも飯を食わせてくれる市場を信頼する「市場世代」が北朝鮮軍の主軸になった状況で「南朝鮮の資本主義の軽そうな文化」の浸透は体制に大きな脅威となる。このようにみると、祖父の金日成(キム・イルソン)主席、父の金正日(キム・ジョンイル)総書記の統一の痕跡まで消して鎖国統治に退行している。統一さえすれば満腹に食べて暮らせるとして北朝鮮住民を洗脳してきたが、政策を突然180度変えて統一を否定したため、表面上には見えなくても内部的な民心離反はかなり強いはずだ。金委員長の統一否定は政治的な賭けということだ。
半面、任元室長の統一否定は所属政党の同僚政治家の共感さえも得られずにいる。反共が国是と認識された1986年10月、全斗煥(チョン・ドゥファン)政権に向けて「この国の国是は反共でなく統一でなければいけない」と堂々と叫んだという理由で拘束された兪成煥(ユ・ソンファン)新韓民主党議員の勇気に例えるのもきまり悪い。
任元室長の統一否定発言は政治的言動の一貫性の側面でも疑わしい。2018年には南北首脳会談準備委員長を務めた。2019年に政界引退を宣言しながら「民間部門で統一運動をしていく」と述べた。その後、何が大きく変わったか。金正恩委員長の統一否定宣言が出ると、わずか9カ月の時差を置いてオウムのように統一を否定して相槌を打ったのではないのか。
すぐには実現しなくても統一という戦略的目標は絶対に放棄できない。もちろん統一を叫んだ86世代が次々と引退する中、MZ世代をはじめとする最近の若者は統一に極度に無関心であるのが実情だ。こうした状況で金正恩委員長の統一否定に相槌を打った任元室長の統一否定論は「逆説的功労」があるのかもしれない。統一を否定するからといって平和が訪れるどころか、永久分断を固着させ、北朝鮮の急変事態が発生すれば、中ロの介入の余地だけを広げるという危機意識を悟らせるのなら。
チャン・セジョン/論説委員
この記事を読んで…