好調の最高経営責任者（ＣＥＯ）が期限を宣告されるとしたら。原因は「がん」ではなく「人工知能（ＡＩ）」かもしれない。技術最前線である米国のビッグテックからハードウエア、ソフトウエア企業までだれもがＡＩビジョンと投資の有無によりＣＥＯの命運が分かれる様相だ。

ビジネスインサイダーなど外信が２日に伝えたところによるとグーグルＡＩのエラー問題でグーグルのスンダー・ピチャイＣＥＯが辞任する可能性がグーグル内外で提起されている。グーグルはテキスト、イメージ、音声などを生成するマルチモーダルＡＩモデルのジェミニを先月１日に発表したが、結果に重大なエラーが発生し２０日後にサービスを停止した。「技術のグーグル」が体面を台なしにした格好だが、その後テック業界の著名投資家であるサミル・アロラ氏は自身のソーシャルメディアアカウントに「（ピチャイ氏は）近く解雇されるか辞任するだろう」と公開批判した。アップルのティム・クックＣＥＯの「ＡＩ失期論」に続きピチャイＣＥＯが「ＡＩ責任論」に直面した状況だ。

◇「ハードウエア＋ＡＩ」に成功したＣＥＯ、地位急上昇


これに対しＡＩに先制対応したＣＥＯは高まった地位と株価で恩恵を得ている。エヌビディアの時価総額は１日に２兆ドルを突破し、サウジアラビアの国営企業アラムコを抜いて世界の企業で時価総額３位に上がった。エヌビディア創業者でＣＥＯのジェンスン・フアン　氏は２００９年のインタビューで「エヌビディアはソフトウエア企業」と宣言したほどＡＩインフラに向けたハードウエアとソフトウエアの結合作業に１０年以上努めてきた。

この日ＰＣ・サーバー企業のデルも１日で株価が３２％上がった。同社のＡＩ用サーバー売り上げが市場の見通しを上回ったためだ。ＰＣ市場が停滞するとデルは１年前にエヌビディアのハードウエア・ソフトウエアと自社のサーバーを結合して企業の生成ＡＩ用インフラ構築事業を始めた。ブルームバーグは「競合のヒューレット・パッカードは高性能サーバー用グラフィック処理装置（ＧＰＵ）を十分に確保できず年間売り上げ見通しを引き下げた」と対照的に伝えた。

◇タイミング逃したアップル、曖昧なサムスン

「管理型ＣＥＯ」の代表格であるティム・クックＣＥＯは先月２８日のアップル株主総会で「ＡＩはすでにアップル製品の裏側で作動している」とし、「アップルがＡＩで遅れをとった」という世間の評を振り払おうとした。彼は「年内に生成ＡＩ関連サービスを出す」と明らかにしたが、この日アップルの株価が小幅に下落するほど市場の反応は冷淡だった。アップルは最近電気自動車のプロジェクトを中止しＡＩに人材を集中しており、音声アシスタントの生成ＡＩにアップグレードするという。

サムスンはモバイル（ＭＸ）ではアップルより先にＡＩフォンを出すなどリードしている。サムスン電子の盧泰文（ノ・テムン）ＭＸ事業部長（社長）は先月、サムスン公式ブログに「モバイルＡＩ時代を開く」という題名で寄稿し、「ＡＩ技術ほど世紀的構造変化を導く革新はなかった」とした。彼は「モバイル機器はＡＩの最も重要な開始点」であり「強力なモバイルＡＩ生態系を構築していく」と抱負を明らかにした。

しかしサムスン電子はメモリー半導体１位企業でありながら、メモリーが重要になるＡＩ時代にしっかり準備できていなかったという指摘を受ける。米半導体企業マイクロンは２６日に第５世代ＨＢＭ（広帯域幅メモリー）３Ｅの量産を発表しエヌビディアから受注した事実も公開した。ＨＢＭはＧＰＵなどＡＩ演算半導体に内蔵されるメモリーだ。メモリー２位のＳＫハイニックスがＨＢＭだけはサムスンを引き離しているが、いまは３位のマイクロンまでサムスンを抜くのではないかという懸念が出ている。この６カ月間でＳＫハイニックスの株価は３１％、マイクロンは３５％上昇したが、サムスン電子の株価上昇は３％にとどまった。

◇再び「経営より技術」の時代

データクラウド専門企業の米スノーフレークは１日、ＣＥＯを交代した。４年間会社を率いて企業価値を３０倍に育てたベテラン専門経営者の後任にＡＩ創業家を選んだのだ。新任ＣＥＯのスリダール・ラマスワミ氏はグーグル出身で、ＡＩ検索エンジンのニーバを創業し、この会社を２０２１年にスノーフレークに売却した後、ＡＩ担当首席副社長を務めてきた。

前ＣＥＯのフランク・スルートマン氏はデータドメイン、サービスナウなど米国のテック企業の３連続企業公開（ＩＰＯ）を成功させた専門経営者で、エンジニアが創業したスノーフレークの経営効率化と企業風土革新を牽引した。しかし同社取締役会は「ＡＩ時代にＡＩリーダーシップが必要だ」として「技術」に再びウエイトを置いた。