「お手上げです。私たちが負けました」。
朴槿恵(パク・クネ)政権時代の2014年7月。電話の向こうから聞こえる金融委員会高位幹部の声には虚脱感が濃厚ににじみ出ていた。住宅貸出規制(LTV・DTI)をめぐり国土交通部と駆け引きする状況で出た敗北宣言だった。景気を回復させなければならないという全方向からの圧迫にも当時の金融委はそれなりにしっかり持ちこたえるようだった。場合によっては家計負債増加傾向に火を付けかねないという懸念だった。
だが力のバランスは最初から傾いていた。2期経済チームのトップであり政界の実力者に上げられる崔炅煥(チェ・ギョンファン)経済副首相が不動産景気浮揚に力を入れるところだったためだ。金融委だけでなく韓国銀行もその気勢に押されそうだった。貸出規制緩和とともに基準金利も本格的に下がり始めた。崔副首相と当時の李柱烈(イ・ジュヨル)韓国銀行総裁が会合を持ち、有名な「以心伝心」という発言が出てきた後だ。
同年末に家計貸出規模は国内総生産(GDP)の80%台に到達した。負債比率80%は臨界点と呼ばれる。経済問題に常に二面性があるように負債も同じだ。適正な水準ならば富を育て消費を促進する。だがある水準以上に大きくなれば資産バブルを作り、債務負担で消費を押さえ込む否定的効果がさらに大きくなる。
「金融委の抵抗」で見られるように当時の政策担当者もこれを知らないはずはなかった。だが当時は家計負債より至急な問題が景気急落を防ぐことという論理が力を増していた。経済が成長してこそ究極的に負債負担が減り、体力を回復して構造改革にも出られるという名分も加わった。当時は世界的金融危機の後遺症に「ニューノーマル」と呼ばれる低成長基調が固定化していたところだった。ここにセウォル号事故の余波まで襲ったため、どんなことでもやらなければならないという雰囲気が強かった。
結局朴槿恵政権は家計負債に関する限り「意図的な誤答」を出した。すぐには解決しにくい問題にこだわって時間を浪費するよりは相対的に簡単な問題から解いて点数を上げるという受験生の戦略と似ていた。だがいつも状況は計画通りに流れはしないものだ。弾劾で政権が座礁し途中で試験会場を出る状況になった。
続けて発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権は「人為的浮揚はない」として前政権と差別化した。「金を借りて家を買え」の代わりに「家は買うものではなく住む所」と一喝することもした。あふれる流動性に住宅価格は不安に流れたが文在寅大統領も「不動産問題は自信があると豪語したい」として豪快にふるまった。前面に出たのは不動産政策の失敗で苦労した盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代の人たちだった。浪人までしたのに再び失敗するはずはないというような態度だった。
結果はだれもが知っているように惨憺たる失敗だった。27回の対策を出したがいつも正解とは距離があった。各種貸出規制と税金処方が相次いだが一方を押せば一方が膨らむ風船効果が頻発した。政策に対する不信が大きくなり仮需要を刺激した。これに対し粘り強い供給のシグナルが必要だという専門家の助言は無視された。過度に強い自己確信が毒になった格好だ。問題をしっかり読んで出題者の意図を把握する前に答から出すようなものだった。2020年末に家計負債比率は結局100%を突破した。
尹錫悦政権ではそれなりに一息つくものと思われた。2021年に始まった急激な基準金利引き上げに住宅価格は鈍化し、増えるばかりだった家計負債も減り始めた。だがそれほど長くは続かなかった。金利引き上げが止まり貸出規制が徐々に解除されると家計負債は再び増え始めた。銀行の家計向け貸付は5カ月連続で増加している。
その間に問題の難易度まで超難問度水準に上がった状態だ。負債比率(105%)は主要国でスイスとオーストラリアに次いで世界3位だ。「負債規模があまりに大きく、利率が少し上がるだけでも使える余力が減り、成長率を下げる効果が現れる」というのが韓国銀行の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁の警告だ。もう負債の増加速度や質の問題を超え、規模そのものだけでも問題になる水準という話だ。
李総裁はまた、当面は貸出規制など軽微な政策で対応しなくてはならないが、効き目がない場合には金利を上げるマクロ政策も考慮することができると言及した。それだけ状況を深刻にみているという意味だ。
韓国銀行が相次いで警告音を出したのに続き韓国政府も近く不動産対策を出す予定という。本格的に試験台に立った形だ。不安な市場心理を早期に安定させる確実なシグナルを期待する。朴槿恵政権のように避けようとしたり、文在寅政権のように失敗を繰り返したりする余裕がいまはないためだ。
チョ・ミングン/経済産業ディレクター
朴槿恵(パク・クネ)政権時代の2014年7月。電話の向こうから聞こえる金融委員会高位幹部の声には虚脱感が濃厚ににじみ出ていた。住宅貸出規制(LTV・DTI)をめぐり国土交通部と駆け引きする状況で出た敗北宣言だった。景気を回復させなければならないという全方向からの圧迫にも当時の金融委はそれなりにしっかり持ちこたえるようだった。場合によっては家計負債増加傾向に火を付けかねないという懸念だった。
だが力のバランスは最初から傾いていた。2期経済チームのトップであり政界の実力者に上げられる崔炅煥(チェ・ギョンファン)経済副首相が不動産景気浮揚に力を入れるところだったためだ。金融委だけでなく韓国銀行もその気勢に押されそうだった。貸出規制緩和とともに基準金利も本格的に下がり始めた。崔副首相と当時の李柱烈(イ・ジュヨル)韓国銀行総裁が会合を持ち、有名な「以心伝心」という発言が出てきた後だ。
同年末に家計貸出規模は国内総生産(GDP)の80%台に到達した。負債比率80%は臨界点と呼ばれる。経済問題に常に二面性があるように負債も同じだ。適正な水準ならば富を育て消費を促進する。だがある水準以上に大きくなれば資産バブルを作り、債務負担で消費を押さえ込む否定的効果がさらに大きくなる。
「金融委の抵抗」で見られるように当時の政策担当者もこれを知らないはずはなかった。だが当時は家計負債より至急な問題が景気急落を防ぐことという論理が力を増していた。経済が成長してこそ究極的に負債負担が減り、体力を回復して構造改革にも出られるという名分も加わった。当時は世界的金融危機の後遺症に「ニューノーマル」と呼ばれる低成長基調が固定化していたところだった。ここにセウォル号事故の余波まで襲ったため、どんなことでもやらなければならないという雰囲気が強かった。
結局朴槿恵政権は家計負債に関する限り「意図的な誤答」を出した。すぐには解決しにくい問題にこだわって時間を浪費するよりは相対的に簡単な問題から解いて点数を上げるという受験生の戦略と似ていた。だがいつも状況は計画通りに流れはしないものだ。弾劾で政権が座礁し途中で試験会場を出る状況になった。
続けて発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権は「人為的浮揚はない」として前政権と差別化した。「金を借りて家を買え」の代わりに「家は買うものではなく住む所」と一喝することもした。あふれる流動性に住宅価格は不安に流れたが文在寅大統領も「不動産問題は自信があると豪語したい」として豪快にふるまった。前面に出たのは不動産政策の失敗で苦労した盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代の人たちだった。浪人までしたのに再び失敗するはずはないというような態度だった。
結果はだれもが知っているように惨憺たる失敗だった。27回の対策を出したがいつも正解とは距離があった。各種貸出規制と税金処方が相次いだが一方を押せば一方が膨らむ風船効果が頻発した。政策に対する不信が大きくなり仮需要を刺激した。これに対し粘り強い供給のシグナルが必要だという専門家の助言は無視された。過度に強い自己確信が毒になった格好だ。問題をしっかり読んで出題者の意図を把握する前に答から出すようなものだった。2020年末に家計負債比率は結局100%を突破した。
尹錫悦政権ではそれなりに一息つくものと思われた。2021年に始まった急激な基準金利引き上げに住宅価格は鈍化し、増えるばかりだった家計負債も減り始めた。だがそれほど長くは続かなかった。金利引き上げが止まり貸出規制が徐々に解除されると家計負債は再び増え始めた。銀行の家計向け貸付は5カ月連続で増加している。
その間に問題の難易度まで超難問度水準に上がった状態だ。負債比率(105%)は主要国でスイスとオーストラリアに次いで世界3位だ。「負債規模があまりに大きく、利率が少し上がるだけでも使える余力が減り、成長率を下げる効果が現れる」というのが韓国銀行の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁の警告だ。もう負債の増加速度や質の問題を超え、規模そのものだけでも問題になる水準という話だ。
李総裁はまた、当面は貸出規制など軽微な政策で対応しなくてはならないが、効き目がない場合には金利を上げるマクロ政策も考慮することができると言及した。それだけ状況を深刻にみているという意味だ。
韓国銀行が相次いで警告音を出したのに続き韓国政府も近く不動産対策を出す予定という。本格的に試験台に立った形だ。不安な市場心理を早期に安定させる確実なシグナルを期待する。朴槿恵政権のように避けようとしたり、文在寅政権のように失敗を繰り返したりする余裕がいまはないためだ。
チョ・ミングン/経済産業ディレクター
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