スペインサッカー連盟（ＲＦＥＦ）のルイス・ルビアレス会長が２０２３女子ワールドカップ（Ｗ杯）授賞式で優勝したスペイン代表チームの選手に強制的にキスをした「奇襲キス」事件だが、関連した論争はまだ収まる兆しを見せていない。スペイン検察はルビアレス会長の行動を性犯罪としてみて予備調査に着手し、スペイン地域サッカー協会はルビアレス会長の辞任を求めた。ルビアレス会長の母親は息子には罪がないことを主張するためにハンガーストライキを始めた。

２８日（現地時間）、ロイター通信やフィナンシャル・タイムズ（ＦＴ）などによると、スペイン検察がルビアレス会長の行動が性犯罪に該当する可能性があるとし、予備調査に着手したと明らかにした。

この日、検察広報担当はこのような事実を明らかにして「この事件に関連して数件の告訴状が入ってきたが、ジェニファー・エルモソ選手が要請する場合にのみ本格的な捜査に着手することができる」と説明した。検察関係者はエルモソ選手に正式に刑事告訴するかどうかを尋ねたという。エルモソ選手が１５日以内に告訴を提起すれば法的手続きが始まる。スペイン刑法によると、セクハラ容疑が認められれば１～４年の懲役刑を受けることになる。


また、スポーツ行政裁判所（ＴＡＤ）はこの日臨時会議を開いてルビアレス会長に対する訴訟開始について検討した。これに先立って２５日、スペイン政府のスポーツ上級委員会（ＣＳＤ）はルビアレス会長が授賞式でその権限を乱用してスポーツの品格と礼儀を違反する行為を行ったとして資格停止など懲戒を要請した。もしＴＡＤ訴訟が行われてルビアレス会長の違反行為が認められるならスポーツ団体役員の資格を２～５年間剥奪される。

スペイン１９地区の地域サッカー協会会長もこの日会議を開いてルビアレス会長の辞任を要求する案を全員一致で採択した。

地域会長団は共同声明を通じて「最近の事件とスペインサッカーのイメージを深刻に傷つけた容認できない行為に関連し、ルビアレス会長に直ちに会長職から辞任するよう求める」と明らかにした。

これに先立って２０日、ルビアレス会長は女子Ｗ杯授賞式でスペイン代表チームのエース、エルモソ選手の顔を両手で抱えてキスをした。授賞式が生中継された後で批判が相次ぎ、エルモソ選手も「嫌だった」と明らかにしてセクハラ問題に発展した。

ルビアレス会長は謝罪したものの、エルモソ選手の同意を受けたと主張した。エルモソ選手はしかし「キスに同意していないことを明確にしたい」と反論した。そのうえルビアレス会長が炎上した世論を落ち着かせるためにエルモソ選手に謝罪映像に出演してほしいと要請したという現地メディアの報道も登場し、世論がさらに悪化した。国際サッカー連盟（ＦＩＦＡ）も２６日、ルビアレス会長に「９０日の職務停止」処分を下して追加調査に入った。

しかしルビアレス会長はエルモソ選手のほうがうそをついているとし、辞退ではなく法的対応に出ている。スペインＥＦＥ通信によると、ルビアレス会長の母親であるアンヘレス・ベハルさんもこの日息子の潔白を主張して「息子に対する攻撃が終わる時まで食べ物を口にしない」と明らかにした。ある教会でハンガーストライキを始めたベハルさんは「私の息子は非人間的で血生臭い魔女狩りの犠牲者になった」としながら、エルモソ選手に対して「（合意してキスしたという）最初の供述を維持して真実を語りなさい」と要求した。

この問題は女性選手の人権問題にも発展した。この日マドリードで開かれたフェミニスト団体が主催したデモに参加した数百人はエルモソ選手に対する支持の意向を明らかにしてスポーツ界に蔓延した女性選手に対する差別を根絶しなければなければならないと主張した。国連のステファン・デュジャリック報道官もこの日「エルモソ選手と合意して（キスが）行われたといういかなる兆候も見られない」としながら「性差別は相変らずスポーツで重要な問題だ。スペイン政府とスポーツ当局はすべての女性選手の権利を尊重する形でこの問題を扱わなければならない」と強調した。