今年3月、中国共産党第20回党大会以降、初めて両会(全国人民代表大会と人民政治協商会議)が開かれた。両会期間、国務院首相の政府業務報告を通じて今年の中国の国政運営方向と政策が発表され、主要国家の職責に対する人事任命も終わった。韓中友好協会〔会長・辛正承(シン・ジョンスン)元駐中大使〕は今月6日「2023中国の両会結果と韓中関係」をテーマに今年初めての中国専門家フォーラムを開催した。この日のフォーラムでは、新任の李強・首相を巡り、それぞれ異なる予測と「戦狼外交」の行方、韓中関係の見通しなどのさまざまな懸案を巡り熱を帯びた討論が広がった。下記は成均(ソンギュン)中国研究所の李熙玉(イ・ヒオク)所長の提案内容の要約と主な質疑応答の内容。
▽李熙玉所長(提案)
両会以降、李強首相のデビューを巡り意見が交錯している。習近平の核心の腹心で「秘書室長」水準の首相の自律性が大きく落ちると見る向きがある。反面、温州など商業発達地域の党書記を歴任して経済的DNAを備えているという評価もある。ランニングメイト的関係だった習近平-李克強体制と比較すると、習近平-李強は相対的に垂直的関係だが、習近平の強力なバックアップを受けてむしろ強力な推進が可能かもしれないという予測もある。実際、李強首相は昨年10月外資企業誘致のためのさまざまな政策を打ち出している。また今回李克強政府の要人がほぼ留任して前任政府の政策的連続性が強調されている。
今回の国務院機構改編の目的は米国の対中国圧迫を大きな背景として、科学技術の高度化、金融制度の先進化、食糧安全保障、社会安全などを実現するところにある。特に今回「中央社会工作部」という組織が作られた。公式統計はないが、最近中国では一日に2000件以上のデモが発生しているが、このようなデモはフラッシュモブ形態でSNSを乗って伝播し、監視が難しい状態で組織化した。中国は社会安全を名目に内部の取り締まりを強化してより一層保守化している。
外交の部分では中国が仲裁にさらに積極的に出るだろうというメッセージが伺える。イランとサウジアラビア間の仲裁とロシアとウクライナに責任感ある対話を促したことも一種の「休戦外交」「仲裁外交」と見ることができる。全人代で韓半島(朝鮮半島)および韓中関係についての直接的な言及はなかった。ただし韓国に対する中国の立場は最近韓日首脳会談後に中国外交部報道官が記者会見で述べた言葉からある程度把握することができる。韓日関係に対しての直接的な評価はなかったが、「排他的地域主義は危険だ」「アジア版NATOは阻止しなければならない」などの発言が出てきた。4月末の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の訪米後、韓日米安保共助や拡張抑制などの関連措置に対する中国の反発も予想される。韓中首脳の相互訪問意志もなさそうだ。事実上、当面韓中首脳会談は開かれないという仮定の下で韓中関係をどのように管理するかが重要な課題だ。幸い、今年下半期10月ごろに韓日中首脳会談がソウルで開かれる可能性が高いが、この時に韓中関係の新しいモメンタムを作ることができるように外交力を発揮しなければならない。
▽韓中友好協会の辛正承(シン・ジョンスン)会長
ここ数年間、中国の戦狼外交が非常に強まった。主要なイシューがあるたびに中国は韓国に対して中国の立場で歩調を合わせるように直・間接的に求めたことがある。また、民間次元で記者や学者の見解をそれとなく牽制(けんせい)する動きもあるという。だとするなら、今後習近平体制特有の戦狼外交外交スタイルは続くと考えるか。
▽李熙玉所長
「ツートラック」の傾向が強まっている。中国外交は4つの分派がある。省察論は中国が企業外交にこのように積極的なのに、米国の対中圧迫状況で誰も中国を助けないことは深刻な問題なので、ソフトパワーと文化的伝播力を高めなければならないと主張する。強硬論は米中競争で今から押されてしまえば限りなく押されるため、強対強に進まなければならないという考えだ。慎重論は米国の対中攻勢には限界があるので中国が先制的に過敏に反応する必要がないというもので、準備論は米中競争の長期化に徹底的に備えなければならないという主張だ。中国内部の基調は慎重論と準備論に近いと考える。表面では強硬だが内部では力の限界を感じていると思われる。中国の戦狼外交は今後「目には目を、歯には歯を」のような「報復(tit for tat)」戦略を維持して「グローバル安保イニシアチブ」「グローバル文明イニシアチブ」など中国式談論を通じてアプローチする「ツートラック」戦略を状況によって取るものとみられる。
▽法務法人タソルの崔鎭旭(チェ・ジンウク)代表弁護士
韓米同盟強化は結局韓国が進むべき道だが、これに対して中国が反発するなら中国のどんな措置が予想されるか。
▽李熙玉所長
THAAD(高高度防衛ミサイル)葛藤当時、中国の報復可能リストをメディアに公開したのは国家利益を考慮する場合、愚かな行動だった。今でもそのような動きがあるとのことで懸念される。今後、中国は「名分ある」報復を行う可能性が高い。特に中国も2060年までの炭素中立を宣言したので、尿素水・レアアース(希土類)・バッテリー・電気自動車(EV)のように環境要素が加味された素材・部品・産業が報復リストに入る可能性がある。過去、中国は消費財で報復したが、今は全体市場において消費財の比率が3~4%にしかならないため効果が制限的だ。反面、環境分野は報復の効果は大きいが名分ははっきりしているので備えが必要だ。
▽趙商勲(チョ・サンフン)元オーストラリア大使
今は過去の冷戦時代のように中国との関係を別途管理するのが難しくなった。米国の場合もテスラ、アップルなど企業との利害関係が中国と複雑に絡み合っている。このような状況で米国の対中国圧迫という大前提一つだけで韓国が外交政策を展開するのは弱点になり得るのではないだろうか。
▽李熙玉所長
事実上、米中間「新冷戦」という用語自体が間違っている。過去の冷戦は敵対的イデオロギー、分割された経済ブロック、敵対的軍事同盟という3軸に構成されていた。今はさまざまな面で米中が完全にデカップリング(脱同調化)、またはインシュレーション(絶縁)ができない構造だ。米国もこれを知っているので、中国に対する攻勢を全面的、戦術的、戦略的に分けて接近している。考えが硬直すれば外交空間を確保することが難しくなる。集団的な討論が必要で、外交的知恵を持った方々を通じて韓中関係を新たにポジショニングしなければならない。
▽漢陽大学の文興鎬(ムン・ホンホ)教授
最近のように、これほど最高指導者に対する説得力のない内容が人民日報前面をめ尽くしたことがあっただろうかと思う。このように習近平思想と主体教育に執着するところを見ると、本当に習近平リーダーシップには問題があるのではないかと疑うようになる。近ごろ中国国内または海外在留中の中国人大学生との対話で彼らの不満が非常に大きいことを感じた。中国の青年たちは大学と修士過程まで終えても就職できず、国家はむしろ青年の水準の高さを恨む。悲観的で夢や未来を失った青年たちが習近平政権の最も大きな憂慮点ではないかと思われる。彼らは中国内部の人権問題にも敏感だ。反体制ではないが自分の意見を表出する青年が多くなった。
「年内の韓日中首脳会談で韓中関係の新しいモメンタムを探すべき」(2)
▽李熙玉所長(提案)
両会以降、李強首相のデビューを巡り意見が交錯している。習近平の核心の腹心で「秘書室長」水準の首相の自律性が大きく落ちると見る向きがある。反面、温州など商業発達地域の党書記を歴任して経済的DNAを備えているという評価もある。ランニングメイト的関係だった習近平-李克強体制と比較すると、習近平-李強は相対的に垂直的関係だが、習近平の強力なバックアップを受けてむしろ強力な推進が可能かもしれないという予測もある。実際、李強首相は昨年10月外資企業誘致のためのさまざまな政策を打ち出している。また今回李克強政府の要人がほぼ留任して前任政府の政策的連続性が強調されている。
今回の国務院機構改編の目的は米国の対中国圧迫を大きな背景として、科学技術の高度化、金融制度の先進化、食糧安全保障、社会安全などを実現するところにある。特に今回「中央社会工作部」という組織が作られた。公式統計はないが、最近中国では一日に2000件以上のデモが発生しているが、このようなデモはフラッシュモブ形態でSNSを乗って伝播し、監視が難しい状態で組織化した。中国は社会安全を名目に内部の取り締まりを強化してより一層保守化している。
外交の部分では中国が仲裁にさらに積極的に出るだろうというメッセージが伺える。イランとサウジアラビア間の仲裁とロシアとウクライナに責任感ある対話を促したことも一種の「休戦外交」「仲裁外交」と見ることができる。全人代で韓半島(朝鮮半島)および韓中関係についての直接的な言及はなかった。ただし韓国に対する中国の立場は最近韓日首脳会談後に中国外交部報道官が記者会見で述べた言葉からある程度把握することができる。韓日関係に対しての直接的な評価はなかったが、「排他的地域主義は危険だ」「アジア版NATOは阻止しなければならない」などの発言が出てきた。4月末の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の訪米後、韓日米安保共助や拡張抑制などの関連措置に対する中国の反発も予想される。韓中首脳の相互訪問意志もなさそうだ。事実上、当面韓中首脳会談は開かれないという仮定の下で韓中関係をどのように管理するかが重要な課題だ。幸い、今年下半期10月ごろに韓日中首脳会談がソウルで開かれる可能性が高いが、この時に韓中関係の新しいモメンタムを作ることができるように外交力を発揮しなければならない。
▽韓中友好協会の辛正承(シン・ジョンスン)会長
ここ数年間、中国の戦狼外交が非常に強まった。主要なイシューがあるたびに中国は韓国に対して中国の立場で歩調を合わせるように直・間接的に求めたことがある。また、民間次元で記者や学者の見解をそれとなく牽制(けんせい)する動きもあるという。だとするなら、今後習近平体制特有の戦狼外交外交スタイルは続くと考えるか。
▽李熙玉所長
「ツートラック」の傾向が強まっている。中国外交は4つの分派がある。省察論は中国が企業外交にこのように積極的なのに、米国の対中圧迫状況で誰も中国を助けないことは深刻な問題なので、ソフトパワーと文化的伝播力を高めなければならないと主張する。強硬論は米中競争で今から押されてしまえば限りなく押されるため、強対強に進まなければならないという考えだ。慎重論は米国の対中攻勢には限界があるので中国が先制的に過敏に反応する必要がないというもので、準備論は米中競争の長期化に徹底的に備えなければならないという主張だ。中国内部の基調は慎重論と準備論に近いと考える。表面では強硬だが内部では力の限界を感じていると思われる。中国の戦狼外交は今後「目には目を、歯には歯を」のような「報復(tit for tat)」戦略を維持して「グローバル安保イニシアチブ」「グローバル文明イニシアチブ」など中国式談論を通じてアプローチする「ツートラック」戦略を状況によって取るものとみられる。
▽法務法人タソルの崔鎭旭(チェ・ジンウク)代表弁護士
韓米同盟強化は結局韓国が進むべき道だが、これに対して中国が反発するなら中国のどんな措置が予想されるか。
▽李熙玉所長
THAAD(高高度防衛ミサイル)葛藤当時、中国の報復可能リストをメディアに公開したのは国家利益を考慮する場合、愚かな行動だった。今でもそのような動きがあるとのことで懸念される。今後、中国は「名分ある」報復を行う可能性が高い。特に中国も2060年までの炭素中立を宣言したので、尿素水・レアアース(希土類)・バッテリー・電気自動車(EV)のように環境要素が加味された素材・部品・産業が報復リストに入る可能性がある。過去、中国は消費財で報復したが、今は全体市場において消費財の比率が3~4%にしかならないため効果が制限的だ。反面、環境分野は報復の効果は大きいが名分ははっきりしているので備えが必要だ。
▽趙商勲(チョ・サンフン)元オーストラリア大使
今は過去の冷戦時代のように中国との関係を別途管理するのが難しくなった。米国の場合もテスラ、アップルなど企業との利害関係が中国と複雑に絡み合っている。このような状況で米国の対中国圧迫という大前提一つだけで韓国が外交政策を展開するのは弱点になり得るのではないだろうか。
▽李熙玉所長
事実上、米中間「新冷戦」という用語自体が間違っている。過去の冷戦は敵対的イデオロギー、分割された経済ブロック、敵対的軍事同盟という3軸に構成されていた。今はさまざまな面で米中が完全にデカップリング(脱同調化)、またはインシュレーション(絶縁)ができない構造だ。米国もこれを知っているので、中国に対する攻勢を全面的、戦術的、戦略的に分けて接近している。考えが硬直すれば外交空間を確保することが難しくなる。集団的な討論が必要で、外交的知恵を持った方々を通じて韓中関係を新たにポジショニングしなければならない。
▽漢陽大学の文興鎬(ムン・ホンホ)教授
最近のように、これほど最高指導者に対する説得力のない内容が人民日報前面をめ尽くしたことがあっただろうかと思う。このように習近平思想と主体教育に執着するところを見ると、本当に習近平リーダーシップには問題があるのではないかと疑うようになる。近ごろ中国国内または海外在留中の中国人大学生との対話で彼らの不満が非常に大きいことを感じた。中国の青年たちは大学と修士過程まで終えても就職できず、国家はむしろ青年の水準の高さを恨む。悲観的で夢や未来を失った青年たちが習近平政権の最も大きな憂慮点ではないかと思われる。彼らは中国内部の人権問題にも敏感だ。反体制ではないが自分の意見を表出する青年が多くなった。
「年内の韓日中首脳会談で韓中関係の新しいモメンタムを探すべき」(2)
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