高校時代、「無限大」は定められた数字ではないが、どれほど大きな数字を無限大というのか実感がわかなかった。大学に入ってこのような混乱は整理された。アリが1年余りの寿命で休まずに動けばその距離が約7キロ程度だから、それより数倍も遠い距離はアリの観点では無限大ということだ。整理すれば、我々の関心の対象が存在する時間と空間の大きさを基準にして物理的な変化がそれ以上予想されない大きさが無限大であり、相対的な比較を表す数学的な概念だ。無限大に関する話をする理由は次の質問のためだ。
月までの距離約38万キロは我々が日常で扱う時間と空間の大きさと比較すると決して無限大ではない。しかし少なくとも8月5日以前まで韓国の人々にとって月は無限大にある存在だった。いくら月に行きたくても特別な技術がなければ不可能であるため、概念的には無限大の位置にあったからだ。特別な技術能力とは、宇宙ロケットと衛星開発能力、そして地上システム運営技術をいう。もちろん技術がなくても経済力が十分にあれば莫大な費用を支払って他国のロケットと探査船で月に行くことも可能だ。しかしこうした選択は宇宙技術の発展と国家の発展を結びつける機会を基本的になくすものであり、非常に浪費的な選択だ。結局、無限大の距離の月を接近可能な月に変えるにはいくつかの条件が必要だが、宇宙技術能力と必要な費用に対応できる財政能力の2種類だ。すなわち、十分な宇宙技術能力と経済力があれば、月探査を国家発展の手段として活用可能ということだ。もう韓国はこの基準を満たす世界7番目の国になったのだ。
8月5日に大韓民国の最初の宇宙探査船「タヌリ」が米国で打ち上げられた。名前も馴染みのないBLT (Ballistic Lunar Transfer)軌道に沿って600万キロを飛行して月に向かっている。先日「タヌリ」は太陽と地球の重力が相殺されるラグランジュ点を通過し、月に向かう軌道に方向を転換したが、今回の探査旅程で最も難しい部分の一つだった。BLT軌道は地球を中心にした形をしていて、タヌリが無限大の領域の月を有限の実体に変える任務を遂行していると考えてみる。タヌリはいくつかの科学任務を遂行し、BTSの「ダイナマイト」ミュージックビデオを宇宙インターネットを通じて地球に伝送する予定だ。また、NASAが作った陰影カメラは陰影地域の水の分布を調査し、アルテミス計画の一部である有人着陸船候補地の選定に使用される予定だ。
1969年のアポロ11号の有人月着陸は人類の偉大な飛躍だったが、同時にソ連との体制競争で勝利するための米国の激しい努力の産物だったという点も否定できない。強力な宇宙ロケットと有人着陸船の開発、深宇宙通信ネットワーク構築などは、当時の技術レベルでみると成功の可能性が非常に低かったが、月着陸のために必ず確保すべき米国の最優先課題だった。莫大な予算の投入はもちろん、月着陸だけが勝利のすべてだという論理で、科学任務は最も容易な岩石と塵を採集することに決定した。すなわち、人類最初の月探査は政治的なイシューが主な目的だった。宇宙技術はその目的を実現する重要な手段であり、科学探査は宇宙科学のための最小限の案だった。今でも先進国の宇宙探査は科学任務を目標に掲げるが、その内容をみると、特別に考案された宇宙技術を開発したり技術の検証を一次的な目標にしている。この時に開発した宇宙技術は月着陸後、数十年にわたりスピンオフ技術として我々の生活を大きく変える役割をした。宇宙探査を準備する我々に少なからず示唆する部分だ。
最近、米国の研究機関、戦略国際問題研究所(CSIS)は20余りの国が約100件ほどの月探査計画を樹立または推進中と報告した。我々が知るほとんどの先進国はすべて月探査を計画していて、2020年代はまさにムーンラッシュ(Moon Rush)が予想される。
2回の打ち上げ延期で関心が大きく低下したが、米国の宇宙ロケットSLS(Space Launch System)の打ち上げも月にもう一度行こうというアルテミス計画の最初の部分だ。アルテミス計画は、有人月着陸と人間の居住のための月基地建設、月軌道宇宙ステーションの建設を含む世界最大規模の野心的な月探査計画だ。2027年までに4次にわたり超大型ロケットを完成し、有人着陸船を送り、月軌道に宇宙ステーションを建設するという内容を含む。この計画の核心は、今まで宇宙開発の対象の地球低軌道(LEO)領域を民間企業の事業として譲り渡し、政府はより創意的で挑戦的な深宇宙領域を対象に高難易度技術の開発に集中するという意図だ。すなわち、月に居住できるよう衣食住と生命維持技術はもちろん、地球と月を連結する宇宙通信、月で使用可能な原子力技術、月の資源を活用する技術(ISRU)などの開発を主な目標にしている。こうした技術は火星探査にも活用される核心の未来技術となる。
【コラム】世界と遊離した「ガラパゴス宇宙探査」を警戒すべき=韓国(2)
月までの距離約38万キロは我々が日常で扱う時間と空間の大きさと比較すると決して無限大ではない。しかし少なくとも8月5日以前まで韓国の人々にとって月は無限大にある存在だった。いくら月に行きたくても特別な技術がなければ不可能であるため、概念的には無限大の位置にあったからだ。特別な技術能力とは、宇宙ロケットと衛星開発能力、そして地上システム運営技術をいう。もちろん技術がなくても経済力が十分にあれば莫大な費用を支払って他国のロケットと探査船で月に行くことも可能だ。しかしこうした選択は宇宙技術の発展と国家の発展を結びつける機会を基本的になくすものであり、非常に浪費的な選択だ。結局、無限大の距離の月を接近可能な月に変えるにはいくつかの条件が必要だが、宇宙技術能力と必要な費用に対応できる財政能力の2種類だ。すなわち、十分な宇宙技術能力と経済力があれば、月探査を国家発展の手段として活用可能ということだ。もう韓国はこの基準を満たす世界7番目の国になったのだ。
8月5日に大韓民国の最初の宇宙探査船「タヌリ」が米国で打ち上げられた。名前も馴染みのないBLT (Ballistic Lunar Transfer)軌道に沿って600万キロを飛行して月に向かっている。先日「タヌリ」は太陽と地球の重力が相殺されるラグランジュ点を通過し、月に向かう軌道に方向を転換したが、今回の探査旅程で最も難しい部分の一つだった。BLT軌道は地球を中心にした形をしていて、タヌリが無限大の領域の月を有限の実体に変える任務を遂行していると考えてみる。タヌリはいくつかの科学任務を遂行し、BTSの「ダイナマイト」ミュージックビデオを宇宙インターネットを通じて地球に伝送する予定だ。また、NASAが作った陰影カメラは陰影地域の水の分布を調査し、アルテミス計画の一部である有人着陸船候補地の選定に使用される予定だ。
1969年のアポロ11号の有人月着陸は人類の偉大な飛躍だったが、同時にソ連との体制競争で勝利するための米国の激しい努力の産物だったという点も否定できない。強力な宇宙ロケットと有人着陸船の開発、深宇宙通信ネットワーク構築などは、当時の技術レベルでみると成功の可能性が非常に低かったが、月着陸のために必ず確保すべき米国の最優先課題だった。莫大な予算の投入はもちろん、月着陸だけが勝利のすべてだという論理で、科学任務は最も容易な岩石と塵を採集することに決定した。すなわち、人類最初の月探査は政治的なイシューが主な目的だった。宇宙技術はその目的を実現する重要な手段であり、科学探査は宇宙科学のための最小限の案だった。今でも先進国の宇宙探査は科学任務を目標に掲げるが、その内容をみると、特別に考案された宇宙技術を開発したり技術の検証を一次的な目標にしている。この時に開発した宇宙技術は月着陸後、数十年にわたりスピンオフ技術として我々の生活を大きく変える役割をした。宇宙探査を準備する我々に少なからず示唆する部分だ。
最近、米国の研究機関、戦略国際問題研究所(CSIS)は20余りの国が約100件ほどの月探査計画を樹立または推進中と報告した。我々が知るほとんどの先進国はすべて月探査を計画していて、2020年代はまさにムーンラッシュ(Moon Rush)が予想される。
2回の打ち上げ延期で関心が大きく低下したが、米国の宇宙ロケットSLS(Space Launch System)の打ち上げも月にもう一度行こうというアルテミス計画の最初の部分だ。アルテミス計画は、有人月着陸と人間の居住のための月基地建設、月軌道宇宙ステーションの建設を含む世界最大規模の野心的な月探査計画だ。2027年までに4次にわたり超大型ロケットを完成し、有人着陸船を送り、月軌道に宇宙ステーションを建設するという内容を含む。この計画の核心は、今まで宇宙開発の対象の地球低軌道(LEO)領域を民間企業の事業として譲り渡し、政府はより創意的で挑戦的な深宇宙領域を対象に高難易度技術の開発に集中するという意図だ。すなわち、月に居住できるよう衣食住と生命維持技術はもちろん、地球と月を連結する宇宙通信、月で使用可能な原子力技術、月の資源を活用する技術(ISRU)などの開発を主な目標にしている。こうした技術は火星探査にも活用される核心の未来技術となる。
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