◇EU、WTO通さずに外国補助金制裁
それだけでなくEUの企業を買収合併したりEUの企業と合弁投資をすることが制限される恐れがあり、EUで実施する公共調達参加が禁止されることもある。EUはWTO協定など他の国と結んだ協約上の義務は順守するとしているが、外国補助金問題を欧州委員会が調査して判断することからWTO規範を抜け出すものだ。
EU補助金法の施行時期は来年中盤と予想される。しかし施行時期がいつであれ5年前に支給された補助金に対してまで法が遡及適用されるため外国企業への波及効果は相当なものだろう。米メディアのポリティコはEUの外国補助金法の主要ターゲットとして鉄鋼・アルミニウムメーカー、インフラ企業、技術とエネルギー企業、そして造船業を含む運送関連企業を挙げた。
これと関連し、特にいわゆる構造調整補助に対するEUの否定的な見方に注目する必要がある。EUの法律は外国政府が長期的な再建計画がない破綻企業を延命するために支援する行為がEU市場を最も大きくゆがめるとみている。これは20年ほど前の大宇造船海洋の構造調整のような事例を念頭に置いたものと考えられる。
◇補助金大きくなれば構造調整も難しく
大宇造船海洋は構造調整(ワークアウト)を通じて起死回生した事例だ。2000年末に倒産の危機に瀕した大宇重工業(現代斗山インフラコアと大宇造船海洋の母体)の債権団は造船部門を切り離して大宇造船海洋という会社を作った後、金融機関の貸付債権を株式に転換した。一部の負債に対しては返済期限の延長、利子減額、短期債の長期債転換などを通じて会社の財政負担を減らした。おりしも中国の経済成長で物流量が増加し船舶発注量が大幅に増加したのに力づけられ大宇造船海洋の経営状態は急速に改善した。
世界の造船市場で韓国と競争していたEUは反発した。市場から消え去るべきだった造船所が政府の補助金で生き残り、低価格受注行為で欧州の造船所に被害を与えたとして2002年10月に韓国政府をWTOに提訴した。
この事件でEUは構造調整に参加した債権団が韓国政府の指示を受けて出資転換や負債棒引きをしたものと主張した。これに対して韓国が掲げた主要防衛論理は経済論理だった。債権団の構造調整は商業的に合理的な決定であるため違法な補助金ではないというものだった。造船所を破綻させた場合、債権団が回収できる清算価値より企業として存続させる場合の価値が高いという会計法人の報告書が韓国の主張の基礎になった。EUは構造調整案の問題点をひとつひとつ指摘して市場原理に反すると主張したが、韓国の防衛論理を根本的に破ることはできなかった。この事件は結局2年以上にわたる激しい法廷攻防の末に事実上韓国の勝訴で終わった。
いま再びEUが大宇造船海洋に対して補助金紛争を提起するならば韓国は果たしてまた防衛できるだろうか。外国補助金法が施行されるならばもうEUは韓国の造船補助金問題をWTOに行かず自国内調査手続きで扱おうとするだろう。補助金問題がWTOの手を離れてEUの国内手続きで扱われる以上、20年前の事件と同じ公正な結果を期待するのは難しいだろう。
◇補助金減らしてこそ自由市場協力可能
これまで米国やEUなど西側諸国は中国の反市場的産業補助金を非難し国際規範と価値に基盤を置いた国際経済秩序に従うよう主張してきた。米国は同じ考えを持つ自由民主主義市場経済国同士の連帯も強調した。
しかし彼ら自らWTOの規範を無視して友好国の企業に対してまで差別的な補助金法を吐き出すならば、自由市場経済を信奉する国々の協力体制は崩れるほかない。普遍的価値は見いだすことができず、ただ自国中心主義の素顔を見せる補助金競争は自制されなければならない理由だ。
別の一方で各国が安定したサプライチェーンを確保し技術産業を育成するために補助金競争を行っているのは厳然とした現実だ。これまで韓国政府は国際補助金規範を過度に意識したり通商摩擦を懸念して産業支援にためらってきた側面がなくはない。もう補助金政策で最優先の判断基準は国益、特に韓国企業の競争力強化になるべきではないだろうか。あふれ出る外国の補助金立法に綿密に対応する一方、国際的な流れに合わせて韓国の補助金政策と関連制度を点検する必要があると考える。
金斗植(キム・ドゥシク)/法務法人世宗代表弁護士、国際通商法センター長
【コラム】中国が火を付けた半導体支援、米国は電気自動車で対抗(1)
それだけでなくEUの企業を買収合併したりEUの企業と合弁投資をすることが制限される恐れがあり、EUで実施する公共調達参加が禁止されることもある。EUはWTO協定など他の国と結んだ協約上の義務は順守するとしているが、外国補助金問題を欧州委員会が調査して判断することからWTO規範を抜け出すものだ。
EU補助金法の施行時期は来年中盤と予想される。しかし施行時期がいつであれ5年前に支給された補助金に対してまで法が遡及適用されるため外国企業への波及効果は相当なものだろう。米メディアのポリティコはEUの外国補助金法の主要ターゲットとして鉄鋼・アルミニウムメーカー、インフラ企業、技術とエネルギー企業、そして造船業を含む運送関連企業を挙げた。
これと関連し、特にいわゆる構造調整補助に対するEUの否定的な見方に注目する必要がある。EUの法律は外国政府が長期的な再建計画がない破綻企業を延命するために支援する行為がEU市場を最も大きくゆがめるとみている。これは20年ほど前の大宇造船海洋の構造調整のような事例を念頭に置いたものと考えられる。
◇補助金大きくなれば構造調整も難しく
大宇造船海洋は構造調整(ワークアウト)を通じて起死回生した事例だ。2000年末に倒産の危機に瀕した大宇重工業(現代斗山インフラコアと大宇造船海洋の母体)の債権団は造船部門を切り離して大宇造船海洋という会社を作った後、金融機関の貸付債権を株式に転換した。一部の負債に対しては返済期限の延長、利子減額、短期債の長期債転換などを通じて会社の財政負担を減らした。おりしも中国の経済成長で物流量が増加し船舶発注量が大幅に増加したのに力づけられ大宇造船海洋の経営状態は急速に改善した。
世界の造船市場で韓国と競争していたEUは反発した。市場から消え去るべきだった造船所が政府の補助金で生き残り、低価格受注行為で欧州の造船所に被害を与えたとして2002年10月に韓国政府をWTOに提訴した。
この事件でEUは構造調整に参加した債権団が韓国政府の指示を受けて出資転換や負債棒引きをしたものと主張した。これに対して韓国が掲げた主要防衛論理は経済論理だった。債権団の構造調整は商業的に合理的な決定であるため違法な補助金ではないというものだった。造船所を破綻させた場合、債権団が回収できる清算価値より企業として存続させる場合の価値が高いという会計法人の報告書が韓国の主張の基礎になった。EUは構造調整案の問題点をひとつひとつ指摘して市場原理に反すると主張したが、韓国の防衛論理を根本的に破ることはできなかった。この事件は結局2年以上にわたる激しい法廷攻防の末に事実上韓国の勝訴で終わった。
いま再びEUが大宇造船海洋に対して補助金紛争を提起するならば韓国は果たしてまた防衛できるだろうか。外国補助金法が施行されるならばもうEUは韓国の造船補助金問題をWTOに行かず自国内調査手続きで扱おうとするだろう。補助金問題がWTOの手を離れてEUの国内手続きで扱われる以上、20年前の事件と同じ公正な結果を期待するのは難しいだろう。
◇補助金減らしてこそ自由市場協力可能
これまで米国やEUなど西側諸国は中国の反市場的産業補助金を非難し国際規範と価値に基盤を置いた国際経済秩序に従うよう主張してきた。米国は同じ考えを持つ自由民主主義市場経済国同士の連帯も強調した。
しかし彼ら自らWTOの規範を無視して友好国の企業に対してまで差別的な補助金法を吐き出すならば、自由市場経済を信奉する国々の協力体制は崩れるほかない。普遍的価値は見いだすことができず、ただ自国中心主義の素顔を見せる補助金競争は自制されなければならない理由だ。
別の一方で各国が安定したサプライチェーンを確保し技術産業を育成するために補助金競争を行っているのは厳然とした現実だ。これまで韓国政府は国際補助金規範を過度に意識したり通商摩擦を懸念して産業支援にためらってきた側面がなくはない。もう補助金政策で最優先の判断基準は国益、特に韓国企業の競争力強化になるべきではないだろうか。あふれ出る外国の補助金立法に綿密に対応する一方、国際的な流れに合わせて韓国の補助金政策と関連制度を点検する必要があると考える。
金斗植(キム・ドゥシク)/法務法人世宗代表弁護士、国際通商法センター長
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