自動車購入情報プラットフォーム「ゲッチャ」によると、今月ヒョンデ（現代自動車）の「アバンテＨＥＶ」を購入すると９カ月後、起亜「ＥＶ６」は１８カ月後に引き渡される。中国とマレーシアなどの工場で生産に支障が生じており自動車製造に必要な半導体の原材料（素材）とその他の部品供給がまともにできなくなっているためだ。

産業通商資源部によると、こうした世界的な供給網不安の余波で先月韓国の自動車生産台数は３０万６４６２台で昨年４月の３２万３６７２台より５．３％減少した。生活必需品である食品でも最近の世界的供給網不安の余波が大きい。この１年間で食用油価格が２～３倍に上がりフライドチキンなど食用油を必要とする食品全般の価格が急騰した状態だ。これは食用油製造に必要な原材料であるパーム油を世界需要の半分以上供給するインドネシアなどの生産量が急減したためだ。

◇コスト低い国が歯車のようにつながる


天然資源埋蔵量や農地が絶対的に不足している韓国という「資源貧国」で多くの製造企業は各種素材を輸入して中間財や完成品を作って輸出する。時にはコスト削減に向け、または技術力補充に向け部品と装備を輸入したりもする。海外供給網の重要性はそれだけ大きい。

最近のように原油価格が上がったり海外から素材・部品などを適時に調達できなければ製品の生産量維持が難しいだけでなく、企業は単価上昇圧力にともなう収益性悪化に置かれやすい。ＮＨ投資証券関係者は「２０１９年に日本政府が自国産の素材・部品・装備の輸出を規制して一時韓国の半導体業界が困難を経験したのが代表的な供給網崩壊事例」と話した。

これは単に韓国企業だけの問題ではない。１９８０年代から本格化した多国籍企業の海外進出で世界的供給網が形成され始め、２００１年に中国が世界貿易機関（ＷＴＯ）に加入してこうした体系はさらに強固になった。多国籍企業は人件費が安い中国などに工場を建てて素材・部品を中国に運んで製品を作り再び全世界に輸出し始めた。この過程で企業はもっと安い素材・部品を探し世界各地に進出して世界は歯車のようにかみ合った現在の世界的供給網が作られた。こうした理由でいまは供給網がどこか１カ所ではなく、世界共通のアキレス腱になった点で深刻な状況と分析される。どこか１カ所が崩れれば世界が危機に直面しかねないという話だ。

最近も中国が新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け上海などを封鎖し多国籍企業は上海に素材・部品を送ることも、上海の工場を稼動することも、上海で生産した製品を再び輸出することも難しい状況だ。特にこの過程で素材・部品の需給がこじれて世界的にインフレ（物価上昇）を誘発している。新型コロナウイルスによる供給網の危機が物価上昇につながったのだ。ロシアとウクライナの戦争が長期化して状況は極に達した。天然ガスと小麦などの世界的生産国の両国が各種生産・輸出に支障をきたすとインフレは加速化した。原材料価格急騰につながり、これが再び世界の供給網を脅かす悪循環が続いている。

◇沈滞の中で物価高騰するスタグフレーションの懸念

特に最近の世界的供給網は新たな危機に直面している。各国が自国を保護するため持っている資源を武器化する「資源民族主義」の歩みを広げてだ。リチウム開発の国有化を宣言したメキシコ、米国との覇権戦争長期化に備えレアアース輸出制限の根拠を設けた中国が代表的だ。これは過去に各国が経済安保で自国の技術保護と外部流出遮断に重点を置いたとすれば、いまは供給網リスク最小化を経済安保の中心課題に置いていることを見せる事例だ。

専門家はこのように複雑に進化し解決も難しくなった供給網不安が長引き韓国経済に大きな打撃を与える可能性を懸念している。ソウル大学経営学部のシン・ジェヨン教授は「地政学的リスクとインフレというマクロ経済状況が供給網不安に対する楽観的見通しを出しにくくさせている。供給網問題解決遅延にともなうスタグフレーション（経済不況の中の物価上昇）が懸念される状況」と話した。