「韓国に宇宙政策というものがありますか」。数年前に米国務省を訪問した際に宇宙関連の韓国担当公務員が投げかけた質問だ。韓国には国家宇宙研究開発計画はあるが、国家宇宙政策はないようだということだ。数十年間にわたり宇宙政策業務を担当してきたが、相手にする韓国側の担当公務員が1~2年もたたずに交代するため「宇宙についてまったくわからない人と接触し続けなければならない」という愚痴でもあった。おそらく筆者が公務員ではなかったので、無礼で侮辱的かもしれない質問を投げたのだろうが、とにかく当時非常に衝撃的で当惑した記憶が長く残った。
筆者はその時米ジョージ・ワシントン大学エリオット国際関係大学院宇宙政策研究所に訪問学者の身分で滞在中だった。衝撃的な質問を受けたその公務員と会って数カ月後、偶然に1冊の本に接してもう一度衝撃を受けることになった。米国の国家宇宙政策を集大成したジョージ・ワシントン大学ジョン・ログスドン教授の『NASA誕生と宇宙探査の秘密』だった。「あぁ、これが宇宙政策なのか」。これまで多くの資料と報告書を見たが、この本に盛り込まれた政府公式文書を通じ生きた宇宙政策を見ることになったのはその時が初めてだった。
宇宙開発初期、米国はソ連と人工衛星開発競争を行っていた。1957年のスプートニク打ち上げ後、米国社会にはソ連に先手を奪われたという批判と、ソ連が米国上空から軍事攻撃をするかもしれないという世論が沸き立った。だが米国政府の反応は慎重だった。当時航空機が飛行する空域は地上局の承認がなければならなかったが、未知の空間である宇宙に対しては決められた国際法がなかった。
対空ミサイルの脅威を受ける高高度偵察機U2に代わる方法を探した米国は、ソ連の人工衛星に沈黙することにより宇宙空間を主権が及ばない領域として慣習法化させる政策的決定を下した。目の前の世論より宇宙での長期的活用性に注目した。以降「宇宙の自由航行の原則」はこれまで米国の核心的宇宙政策として持続している。
スプートニクに先手を奪われた米国は、ソ連を追い越すために国家宇宙戦略策定に入る。1958年の国家安全保障会議で「米国の宇宙政策」を発表し、宇宙開発を専従するために航空宇宙局(NASA)を設立する。アイゼンハワー大統領は国家航空宇宙委員会を作り自ら委員長を務めて重要な宇宙政策を決めた。NASA設立後にソ連を追い越すための計画を集中的に検討した。宇宙ステーション、月探査船、無人月着陸など多様なオプションをめぐり検討したが、月に米国人を着陸させ安全に帰還させるプロジェクトが唯一、米国がソ連に勝てると判断した。
1961年に全国にテレビ生中継される中で、米両院合同会議でアポロ計画を発表し、国民と議会の賛同を訴えた。その後10年間、米国はアポロ計画にすべての力を集中した。「マーキュリー」「ジェミニ」計画に続き、ついにアポロ計画を成功裏に実現することによりソ連を追い越して世界最強大国としての位置を占めることになる。アポロ計画は単にひとつのプロジェクトではなかった。最終的なひとつの目標に向け国のすべての宇宙プロジェクトを体系的・順次的な計画により進めた。
◇宇宙軍創設発表したトランプ大統領
ソ連のスプートニク打ち上げにより各国は自国上空に飛行物体が飛行しているという事実に深刻な軍事的危険を感じた。米国をはじめとするさまざまな国が国連傘下に国連宇宙局(OOSA)を設置し、宇宙間平和的利用委員会(COPUOS)で宇宙活動の原則に関する宇宙条約を確立することになる。
それから60年余りが過ぎた。2019年に当時のトランプ米大統領は「宇宙は陸上・海上・空中と同じ戦争の空間」と宣言し、大統領指針を通じて宇宙軍創設を発表した。これは宇宙の平和的利用の原則から大きく抜け出すものだ。米国の軍事的主導権維持の核心である宇宙分野で中国の追撃を阻止するために宇宙軍創設を公式宣言したのだ。宇宙軍創設に対する大統領令は米国の重要な宇宙政策の変化であり、事実上米国は宇宙の軍事化を超え宇宙の兵器化を宇宙政策として採択したものといえる。
これに先立ち1972年にアポロ17号が最後に月を離れて40年余り後、オバマ大統領は「大統領政策指針-4国家宇宙政策(2010年)」を通じ、有人火星探査を宣言する。その後2017年にトランプ大統領は就任後最初の宇宙政策指針としてオバマ大統領の指針を改定し、月に先に人間を送った後に火星に人間を送る長距離宇宙探査のロードマップを発表する。米国の宇宙開発政策にはこのようにすみずみまで大統領の意志が込められている。
【コラム】宇宙を放置するのか、宇宙政策ひとつない韓国(2)
筆者はその時米ジョージ・ワシントン大学エリオット国際関係大学院宇宙政策研究所に訪問学者の身分で滞在中だった。衝撃的な質問を受けたその公務員と会って数カ月後、偶然に1冊の本に接してもう一度衝撃を受けることになった。米国の国家宇宙政策を集大成したジョージ・ワシントン大学ジョン・ログスドン教授の『NASA誕生と宇宙探査の秘密』だった。「あぁ、これが宇宙政策なのか」。これまで多くの資料と報告書を見たが、この本に盛り込まれた政府公式文書を通じ生きた宇宙政策を見ることになったのはその時が初めてだった。
宇宙開発初期、米国はソ連と人工衛星開発競争を行っていた。1957年のスプートニク打ち上げ後、米国社会にはソ連に先手を奪われたという批判と、ソ連が米国上空から軍事攻撃をするかもしれないという世論が沸き立った。だが米国政府の反応は慎重だった。当時航空機が飛行する空域は地上局の承認がなければならなかったが、未知の空間である宇宙に対しては決められた国際法がなかった。
対空ミサイルの脅威を受ける高高度偵察機U2に代わる方法を探した米国は、ソ連の人工衛星に沈黙することにより宇宙空間を主権が及ばない領域として慣習法化させる政策的決定を下した。目の前の世論より宇宙での長期的活用性に注目した。以降「宇宙の自由航行の原則」はこれまで米国の核心的宇宙政策として持続している。
スプートニクに先手を奪われた米国は、ソ連を追い越すために国家宇宙戦略策定に入る。1958年の国家安全保障会議で「米国の宇宙政策」を発表し、宇宙開発を専従するために航空宇宙局(NASA)を設立する。アイゼンハワー大統領は国家航空宇宙委員会を作り自ら委員長を務めて重要な宇宙政策を決めた。NASA設立後にソ連を追い越すための計画を集中的に検討した。宇宙ステーション、月探査船、無人月着陸など多様なオプションをめぐり検討したが、月に米国人を着陸させ安全に帰還させるプロジェクトが唯一、米国がソ連に勝てると判断した。
1961年に全国にテレビ生中継される中で、米両院合同会議でアポロ計画を発表し、国民と議会の賛同を訴えた。その後10年間、米国はアポロ計画にすべての力を集中した。「マーキュリー」「ジェミニ」計画に続き、ついにアポロ計画を成功裏に実現することによりソ連を追い越して世界最強大国としての位置を占めることになる。アポロ計画は単にひとつのプロジェクトではなかった。最終的なひとつの目標に向け国のすべての宇宙プロジェクトを体系的・順次的な計画により進めた。
◇宇宙軍創設発表したトランプ大統領
ソ連のスプートニク打ち上げにより各国は自国上空に飛行物体が飛行しているという事実に深刻な軍事的危険を感じた。米国をはじめとするさまざまな国が国連傘下に国連宇宙局(OOSA)を設置し、宇宙間平和的利用委員会(COPUOS)で宇宙活動の原則に関する宇宙条約を確立することになる。
それから60年余りが過ぎた。2019年に当時のトランプ米大統領は「宇宙は陸上・海上・空中と同じ戦争の空間」と宣言し、大統領指針を通じて宇宙軍創設を発表した。これは宇宙の平和的利用の原則から大きく抜け出すものだ。米国の軍事的主導権維持の核心である宇宙分野で中国の追撃を阻止するために宇宙軍創設を公式宣言したのだ。宇宙軍創設に対する大統領令は米国の重要な宇宙政策の変化であり、事実上米国は宇宙の軍事化を超え宇宙の兵器化を宇宙政策として採択したものといえる。
これに先立ち1972年にアポロ17号が最後に月を離れて40年余り後、オバマ大統領は「大統領政策指針-4国家宇宙政策(2010年)」を通じ、有人火星探査を宣言する。その後2017年にトランプ大統領は就任後最初の宇宙政策指針としてオバマ大統領の指針を改定し、月に先に人間を送った後に火星に人間を送る長距離宇宙探査のロードマップを発表する。米国の宇宙開発政策にはこのようにすみずみまで大統領の意志が込められている。
【コラム】宇宙を放置するのか、宇宙政策ひとつない韓国(2)
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