穴のあいたサンダル、古いトラック、さびついたロシア製小銃。２０年前のタリバンの格好だ。タリバン第２期は変わった。敗走する政府軍から得た戦闘靴にアイロンをかけた軍服、ヘルメットでめかし込んだ。何より米軍が撤退を急ぎ置いて行った相当量の武器を手にした。

英ＢＢＣは２８日、タリバンがアフガニスタンを掌握する過程で相当量の近代式武器を戦利品として確保したと報道した。

これによると、タリバンの最大の収穫は空軍兵器の確保だ。クンドゥーズ、ヘラートなどにあるアフガン空軍基地９カ所を占領した結果だ。


米アフガン復興担当特別監査官（ＳＩＧＡＲ）によると、６月３０日基準でアフガン空軍が運営する軍用機は１６７機だった。ブラックホークと呼ばれるＵＨ－６０軍用ヘリ３３機をはじめ、Ｍｉ－１７ヘリが３２機、Ａ－２９軽攻撃機が２３機などだ。

このうちタリバンがどれだけの空軍機を確保したのかは不明だ。ただＢＢＣはタリバン占領前後にアフガン南部カンダハル空港の衛星写真を比較した結果、タリバンが少なくとも数百機の軍用機を手に入れたようだと伝えた。英デイリーメールもその規模をブラックホーク４５機を含め２００機以上と推定した。これでタリバンがイスラム原理主義武装勢力としては初めて空軍力を持つ組織になったというのが専門家らの説明だ。

◇「西欧の納税者を犠牲にしてタリバンに武器を与えた格好」

米軍と英軍がアフガンに残していった地上兵器規模も相当だ。米政府報告書によると、米軍は２００３年から２０１６年まで高機動多用途装輪車両（ハンビー）２万２１７４台、小銃３５万８５３０丁、機関銃６万４０００丁、流弾発射機２万５３２７丁をアフガン軍に提供した。トランプ前大統領が新たなアフガン戦略を発表した２０１７年だけでＭ１６小銃２万丁を支援し、２０１８年にはＭ４小銃３５９８丁が追加された。昨年には機動打撃車両（ＭＳＦＶ）３１台も提供した。

英軍関係者はこのうちタリバンの手に渡った武器はハンビーが最小２万台など戦術車両７万５０００台、銃器類は６０万丁と推定されると伝えた。実際にタリバンは１５日の首都カブール陥落後、米国製武器を持ってハンビーに乗った写真をＳＮＳに上げ勝利を誇示した。もはや古びたトラックでさびついた小銃を振り回す旧式軍人ではないというメッセージだ。

注目すべき点は、先端技術が装備された武器だ。デイリーメールによると、タリバンは虹彩と指紋認識が可能な生体認識収集・識別装置まで確保した。専門家らは、この装置を利用して連合軍を支援したアフガン人を見つけ出し人質にすることもできると懸念する。このほかにも暗視スコープ、ヘルメット、通信装備、防弾チョッキなど、数百万ウォン相当の高価な軍事装備数万個を手に入れたとデイリーメールは伝えた。

アフガンで武器供給責任者を務めた米共和党のジム・バンクス下院議員は米軍が去ったアフガンでタリバンが確保した武器は６２０億ポンド（約９兆３７０６億円）に達するだろうと指摘した。彼は「タリバンを防ぐという名目の下、米国の納税者を犠牲にして用意した武器がそっくりタリバンの手に渡った」と嘆いた。

◇航空機運航能力なく…小型武器の闇取引懸念

ただタリバンがこれらの武器をまともに活用できるかは不明だ。専門家らは軍用機を扱い管理する専門人材がいないという点を限界に挙げる。こうした理由から、タリバンがこの軍用機を利用しすぐに脅威になる可能性も低いという見方が多い。

アフガン駐留米軍の顧問だったジョナサン・シロデン博士は「タリバンが航空機を得るのは容易だったかもしれないが、これを運用するのは難しいだろう」と話した。

アフガン軍と米軍が武器をすでに不能化した可能性も大きい。米国防総省は２４日の会見で、米軍撤退時に輸送機に載せられない装備と武器は破壊したり廃棄するなど適切に措置をすると言及した。ニューヨーク・タイムズなどによると、在カブール米大使館はタリバン占領後にＣＨ－４６Ｅヘリ７機を不能化し、大使館の敷地に配備した対ロケット弾・野戦砲弾・迫撃砲弾防衛（Ｃ－ＲＡＭ）システムも破壊した。

専門家らが最も懸念するのは、タリバンがこの武器を輸出するケースだ。闇市場で取引される武器が世界の反乱軍をあおりかねないためだ。一部では北朝鮮がこれらの武器を購入した後に再販売したり、分解して他の武器に作り替える可能性も提起される。

これに対し最近米共和党下院議員は「タリバンが米国や同盟国に米国製武器を使ったり、中国、ロシア、イラン、あるいは北朝鮮のような敵国に米国製武器を販売する可能性がある」としてバイデン政権に対策を促した。

アフガン空軍で服務したジョディ・ビトリー教授も「すぐではないが数カ月中に武器供給網が形成されるかもしれない。これを防ぐためにパキスタン、中国、ロシアなどアフガン周辺国の役割が重要だ」と話した。