「われわれは100年間使える天然ガスを確保しました」。
オバマ元大統領が2012年の年頭教書演説でした話だ。2007年から本格化した「シェール革命」は、オバマ政権の2009~2016年に米国を世界一のエネルギー大国にした。「100年間分の天然ガス」宣言が出てから9年後、米国は「底が抜けた壺」のアフガニスタンを損切りした。アフガニスタン安定が中東安全の変数だが、これまで投じた金額と今後投じる金額を計算した上で結局米軍を撤退させた。
(1)オバマ氏「100年天然ガス」宣言
梨花(イファ)女子大学のパク・ウォンゴン北朝鮮学教授は「1970年代のオイルショックで中東は米国に『死活的利害』がある地域になった。ところがシェール革命が起き米国の核心利益から遠ざかった」と説明した。
アフガニスタン撤退の直接的理由は▽オサマ・ビンラディンに象徴されるイスラム原理主義勢力のテロ脅威が一段と弱まり、▽アフガニスタンの米軍駐留がかけた費用ほどの効果を出せないためだった。だが米軍撤退の遠因は「中東の石油」の地政学的重要性がさらに薄まり、これをより明確に見せたのがシェール革命だった。
石油に代わるシェール革命がアフガニスタン撤退につながるバタフライ効果のひとつとして作用したのだ。
アフガニスタンは世界最大の石油埋蔵量を誇る中央アジアと中東地域の要所にある。アフガニスタンの戦略的重要性は「石油の要所」を占めているという点でもあるのだ。2001年の米国のアフガニスタン侵攻を「テロとの戦争」であると同時に「石油戦争」とする分析はそのために出ている。ロシアとイラン、中国を避け中東と中央アジアの石油を西側市場に連結するにはアフガニスタンを通じなければならないためだ。パク教授は「(アフガニスタンの地政学的立地のため)米国においてアフガニスタンの重要度は当然中東の重要度と比例する」と話した。
ところがシェール革命が始まり米国の中東産原油への依存度が低下し戦略地形図が変わった。聖公会(ソンゴンフェ)大学イスラム文化研究所のイ・ヒス所長は「米国はもう原油を中東から輸入しない。シェール革命後から徐々に脱中東政策が固まり、イラクやシリアからも手を引いており、最後にアフガニスタンから手を引いた」と指摘した。
(2)トランプ氏とバイデン氏もアフガニスタン脱出
オバマ氏が始動した脱アフガニスタンの基調はトランプ前大統領とバイデン大統領につながった。トランプ氏とバイデン氏は前任者がした政策を相次いでひっくり返したが、アフガニスタンからの軍撤退という大きなビジョンだけは受け継いだ。トランプ氏は米国が20年近く力を入れてきたアフガニスタンからの退路を設けるためタリバン指導者を直接相手にすることもした。このため「米国の敵」だったタリバンのナンバー2であり実質的な指導者であるバラダル師を交渉対象に選定して2018年にパキスタンの監獄から彼を解放させた。
バイデン師は「喜んで非難を受ける」として軍撤退を押し切った。孤立主義を追求したトランプ氏との差別性を強調してきた彼だったが、国内外の双方でリーダーシップを傷つけかねない米軍撤退を固守したのだ。パク教授は「バイデン氏は20年戦争に注ぎ込んだ資金で米国の国力が衰退した中で国内中産層を先に取りまとめるという経済政策の基調を持っており、外交的には米国の『死活的利害』が残ったアジア(中国牽制)に力を集中するという戦略」と説明した。
米国の著名な地政学安保専門家ピーター・ゼイハン氏は2017年に著書『シェール革命と米国のない世界』で、「米国はシェール革命とともに国際舞台から手を引いても構わない条件が形成された」と説明する。エネルギー安全保障を確保した上に米国人の1人当たりエネルギー消費量が減っており、「エネルギー自給自足」に近付いているとしながらだ。
ゼイハン氏は「米国が北米大陸以外の地域からエネルギーを輸入しなくなれば米国の運命と世界の運命をつなぐ最も重要な連結が切れる。米国は70年間面倒なことを引き受けてきたし、世界はそうした社会にますます慣れていった。米国はこうした社会から手を切ろうとする動きを見せている」と書いた。
(3)バイデン氏が隠したビジョン「アフガニスタン押し付け」
中国は米国と反対の状況だ。経済が成長し1人当たりエネルギー消費量が増加しており、資源を輸入して商品を輸出することが主要な経済体制の国だ。中国が「一帯一路」という拡張政策を展開する理由だ。アフガニスタンが中国に重要な理由でもある。アフガニスタンが一帯一路に参加すれば中東であるイランまで内陸路が通じる。すべての内陸輸送路がアフガニスタンと接する新疆ウイグル地区を通じて入ってくるという点でもアフガニスタンは中国のエネルギー安全保障に重要な地政学的要衝地だ。
シェール革命のバタフライ効果…バイデン氏、習近平氏にタリバン押し付けた(2)
オバマ元大統領が2012年の年頭教書演説でした話だ。2007年から本格化した「シェール革命」は、オバマ政権の2009~2016年に米国を世界一のエネルギー大国にした。「100年間分の天然ガス」宣言が出てから9年後、米国は「底が抜けた壺」のアフガニスタンを損切りした。アフガニスタン安定が中東安全の変数だが、これまで投じた金額と今後投じる金額を計算した上で結局米軍を撤退させた。
(1)オバマ氏「100年天然ガス」宣言
梨花(イファ)女子大学のパク・ウォンゴン北朝鮮学教授は「1970年代のオイルショックで中東は米国に『死活的利害』がある地域になった。ところがシェール革命が起き米国の核心利益から遠ざかった」と説明した。
アフガニスタン撤退の直接的理由は▽オサマ・ビンラディンに象徴されるイスラム原理主義勢力のテロ脅威が一段と弱まり、▽アフガニスタンの米軍駐留がかけた費用ほどの効果を出せないためだった。だが米軍撤退の遠因は「中東の石油」の地政学的重要性がさらに薄まり、これをより明確に見せたのがシェール革命だった。
石油に代わるシェール革命がアフガニスタン撤退につながるバタフライ効果のひとつとして作用したのだ。
アフガニスタンは世界最大の石油埋蔵量を誇る中央アジアと中東地域の要所にある。アフガニスタンの戦略的重要性は「石油の要所」を占めているという点でもあるのだ。2001年の米国のアフガニスタン侵攻を「テロとの戦争」であると同時に「石油戦争」とする分析はそのために出ている。ロシアとイラン、中国を避け中東と中央アジアの石油を西側市場に連結するにはアフガニスタンを通じなければならないためだ。パク教授は「(アフガニスタンの地政学的立地のため)米国においてアフガニスタンの重要度は当然中東の重要度と比例する」と話した。
ところがシェール革命が始まり米国の中東産原油への依存度が低下し戦略地形図が変わった。聖公会(ソンゴンフェ)大学イスラム文化研究所のイ・ヒス所長は「米国はもう原油を中東から輸入しない。シェール革命後から徐々に脱中東政策が固まり、イラクやシリアからも手を引いており、最後にアフガニスタンから手を引いた」と指摘した。
(2)トランプ氏とバイデン氏もアフガニスタン脱出
オバマ氏が始動した脱アフガニスタンの基調はトランプ前大統領とバイデン大統領につながった。トランプ氏とバイデン氏は前任者がした政策を相次いでひっくり返したが、アフガニスタンからの軍撤退という大きなビジョンだけは受け継いだ。トランプ氏は米国が20年近く力を入れてきたアフガニスタンからの退路を設けるためタリバン指導者を直接相手にすることもした。このため「米国の敵」だったタリバンのナンバー2であり実質的な指導者であるバラダル師を交渉対象に選定して2018年にパキスタンの監獄から彼を解放させた。
バイデン師は「喜んで非難を受ける」として軍撤退を押し切った。孤立主義を追求したトランプ氏との差別性を強調してきた彼だったが、国内外の双方でリーダーシップを傷つけかねない米軍撤退を固守したのだ。パク教授は「バイデン氏は20年戦争に注ぎ込んだ資金で米国の国力が衰退した中で国内中産層を先に取りまとめるという経済政策の基調を持っており、外交的には米国の『死活的利害』が残ったアジア(中国牽制)に力を集中するという戦略」と説明した。
米国の著名な地政学安保専門家ピーター・ゼイハン氏は2017年に著書『シェール革命と米国のない世界』で、「米国はシェール革命とともに国際舞台から手を引いても構わない条件が形成された」と説明する。エネルギー安全保障を確保した上に米国人の1人当たりエネルギー消費量が減っており、「エネルギー自給自足」に近付いているとしながらだ。
ゼイハン氏は「米国が北米大陸以外の地域からエネルギーを輸入しなくなれば米国の運命と世界の運命をつなぐ最も重要な連結が切れる。米国は70年間面倒なことを引き受けてきたし、世界はそうした社会にますます慣れていった。米国はこうした社会から手を切ろうとする動きを見せている」と書いた。
(3)バイデン氏が隠したビジョン「アフガニスタン押し付け」
中国は米国と反対の状況だ。経済が成長し1人当たりエネルギー消費量が増加しており、資源を輸入して商品を輸出することが主要な経済体制の国だ。中国が「一帯一路」という拡張政策を展開する理由だ。アフガニスタンが中国に重要な理由でもある。アフガニスタンが一帯一路に参加すれば中東であるイランまで内陸路が通じる。すべての内陸輸送路がアフガニスタンと接する新疆ウイグル地区を通じて入ってくるという点でもアフガニスタンは中国のエネルギー安全保障に重要な地政学的要衝地だ。
シェール革命のバタフライ効果…バイデン氏、習近平氏にタリバン押し付けた(2)
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