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【社説】「金メダルのような4位」一層成熟した五輪文化=韓国

ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版
小説家の朴婉緒(パク・ワンソ)が1977年に書いたエッセー『びりに送る喝采』がある。ある日偶然にマラソン競技を見物した話者は、最下位走者の「正直に苦痛な」「正直に孤独な」顔に胸を打たれる。結果と関係なく最善を尽くす選手を応援する。1位だけ羨望する、勝者が全てのものを占める成績至上主義に対する隠喩であり無限競争時代に対する風刺だ。

それから40年余りが流れたいま、韓国社会は最下位を新たに見ている。あす17日間の長征に終止符を打つ東京五輪でこれまで落伍者の境遇だった最下位にも満場の拍手が起こった。初めて出場した五輪で参加12カ国中12位で競技を終えた男子ラグビー代表チームが代表的なケースだ。「五輪精神そのもの」のような激励がオンラインを染めた。世界の強豪を相手に不屈の闘志を燃やした選手たちに「美しいびり」という称賛が相次いだ。国威宣揚のような名分の代わりにスポーツそのものを楽しむ文化が定着しつつある。

特に今回は「4位の躍進」が目立っていた。「ノーメダル」にとどまったが自分の限界に果てしなく挑戦する選手たちが輝いた。以前の五輪ではほとんど見られなかった風景だ。男子走り高跳びで235センチメートルの韓国新記録を立て4位に上がったウ・サンヒョクは競技後「幸せな夜だ。残念だが後悔はない」と話した。ファンらも「私の心の中の金メダル」 「陸上の面白さを知った」という応援を惜しまなかった。男子飛び込み3メートルで歴代韓国ダイビング最高成績を記録したウ・ハラムはどうか。「五輪4位そのものが栄光」と話した。表彰台に立つことができなかった失望と憤怒はなかった。1位コンプレックス、メダル万能主義を一気にひっくり返したKO勝ち、一本勝ちのようだった。


「きらびやかな4位」の行進は続いた。体操男子床運動のリュ・ソンヒョン、女子ウエイトリフティング87キログラム級のイ・ソンミも結果に満足し次の大会を期した。男子自由型200メートルで5位を記録したファン・ソンウが最も多く言及した単語のひとつも「満足」だった。4位は意味がないとして子どもをいじめる母親と体罰を日常的に行うコーチを批判した映画『4等』(2016)の残酷童話とは距離がある。

新型コロナウイルスのパンデミックにより1年遅れで開かれた東京五輪はある面みすぼらしかった。何より観客席ががらんと空いていた。選手とファンが一緒に作っていく祭典が失われた。国際オリンピック委員会(IOC)と放映権を持ったNBCの計算のため大会を強行したという批判も激しかった。それでもメダルの色より競技そのものを満喫し、結果より過程に注目し、勝敗よりドラマに熱狂する雰囲気は私たちが今回の五輪で収めた貴重な収穫と評価される。例えば排他的国家主義・民族主義に頼り、勝利に対する希望拷問を混ぜ込んだテレビ中継はこれ以上通じなかった。客観的実力とファクトが尊重された。

スポーツは社会を動かす動力のひとつだ。今回の五輪は韓国社会の序列化と階級構造を一定部分押し崩した。画一性から多様性に、強要・命令から自律・選択に進む民主主義の原理と合致する。ひたすら「実力」だけで国家代表を選抜するアーチェリーチームの公正・透明なシステムは国・社会運営の基準になるのに十分だ。

東京五輪は韓国のスポーツ界に制度改善という宿題も残した。順位・メダルの強迫観念から抜け出しただけに、金・銀・銅メダルを取った種目と選手に偏重された年金・兵役特例などの補完が必要だ。権威主義時代に国威をとどろかせた選手を励ます目的で導入された規定を新しい時代に合うよう調整する作業に着手する時期だ。五輪やアジア大会など大会の難易度、団体種目と個人種目、メダルの色の代わりに1~6位の順位などに基づいたポイント差等支給・累積制などを考慮できる。あと6カ月残った北京冬季五輪でもこうした議論が続くことを望む。



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