21日、福島県あづま球場では東京オリンピック(五輪)の開始を知らせる最初の競技が行われた。ソフトボールのリーグ初戦、日本-オーストラリア戦。日本代表が8-1で5回コールド勝ちした。
日本が待ち望んだ東京五輪の初勝利だったが、周囲は静かだった。「無観客競技」方針のため観客席が空っぽの球場では、選手の声とカメラのシャッターの音だけが響いた。奇妙な雰囲気だった。
人類が「一度も経験したことがない五輪」が23日、その幕を上げた。新型コロナウイルスの世界的大流行の中で開催される不安な祭りだ。昨年7月に予定されていた東京五輪は新型コロナ感染拡大のため1年延期され、「一年遅く開催される五輪」という最初の記録を作った。その後、初の無観客五輪、歓声と握手と抱擁がない五輪、世界の首脳が背を向けた五輪など新しい歴史を次々と刻んでいる。
◆復興を叫んだ五輪が「不安な祭り」に
東京は2013年9月8日(日本時間)に開催された第125回国際オリンピック委員会(IOC)総会で第32回夏季五輪の開催地に決定した。最初の投票で42票を受け、トルコ・イスタンブール(26票)、スペイン、マドリード(26票)を大きく上回った。日本は決選再投票でマドリードを抑えたイスタンブールに60票対36票で圧勝した。1964年の第18回大会以来56年ぶりに夏季五輪の主人公に決まったのだ。アジアで夏季五輪を2回以上開催する国は日本が初めてだった。
当時の安倍晋三首相は五輪開催が確定した瞬間、万歳を叫び、「東日本大震災を乗り越えて(日本が)復興する姿を見せる」と述べた。日本では2011年3月の東日本大震災で福島第1原発から放射能が漏れるという惨事を迎えた。安倍首相は東京五輪をきっかけに福島原発事故の痛みを克服し、自国の経済を回復させるターニングポイントにしようとした。
その日本の夢を新型コロナがのみ込んでしまった。東京五輪がウイルスの直撃弾を受けたのだ。昨年7月24日の開幕予定だった大会が全世界に広がった新型コロナの影響で1年延期された。カナダとオーストラリアをはじめとする国が次々と不参加を宣言すると、安倍首相が悩んだ末に決断した。
これによる損失は雪だるま式に増えた。昨年11月に東京オリンピック組織委員会が分析した五輪1年延期による追加費用は約2000億円。ロイター通信は6月、損失額が30億ドルまで増えたと伝えた。さらに大きな問題は開幕直前まで収まらない日本の新型コロナ感染拡大だ。2013年9月の歓呼はもう影も形もみられない。
2021年に開催される2020東京五輪はさまざまな面で特別だ。今大会では選手が観客の応援を受けることができない。今月8日、日本政府と東京オリンピック組織委員会、東京都、IOC、国際パラリンピック委員会(IPC)が会談し、東京五輪を無観客で進行することに合意した。
東京五輪は東京など首都圏4都県を含む9都道県の42カ所の競技場で行われる。全体競技の80%が行われる首都圏1都3県(東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県)はもちろん、北海道、福島なども無観客を宣言した。これを受け、全体入場券の96%が無効になった。一部の地域では少数の観客が入る計画だが、消えた入場収入は全く埋まらない。朝日新聞は無観客による収入減を約900億円と伝えた。1年延期に無観客による損害まで加えると、その金額だけで4兆ウォン(約3830億円)を超える。金を食う大会をなぜ開催するのかという日本国内の反対世論は続いている。
新型コロナは大会の全般的な運営にも影響を及ぼした。五輪参加選手が交わる開会・閉会式の風景も大きく変わる。開会式に参加する選手団の規模が予定(1万1000人)より半分ほど縮小した。開会・閉会式が開かれる東京新宿国立競技場(五輪メインスタジアム)は6万8000人が入場できる大型スタジアムだ。大規模な競技場に観客は入らず、選手も最少人員だけが集まった。
人との接触が徹底的に禁止され、表彰式も簡素化される。組織委は「表彰式はトレーにあるメダルを選手が自分で首にかける」とし、いわゆる「セルフ表彰式」を予告した。トレーを持つ人は消毒された手袋を着用し、受賞発表者と選手はマスクをする。表彰式では選手間の握手や抱擁も禁止される。競技場では没入度が高い音響システムで観客の歓呼を演出する計画だが、効果は未知数だ。
五輪のニュースでよく登場するメダルをくわえる姿も原則的に禁止される。2016年リオデジャネイロ五輪では身長137センチの米体操選手レーガン・スミスと身長211センチの米バスケット選手デアンドレ・ジョーダンが共に撮った写真が話題になったが、今大会では「社会的距離」を理由にこのような場面を見ることができない。
◆コロナ感染前までの選手の成績は認定
メダルを獲得しても注意が必要だ。感激のあまり歓呼するのは危険行動だ。いくらうれしくても選手は拍手をするか、飛沫が飛ばない方法で表現する必要がある。それだけでなく日程をすべて終えた選手は48時間以内に選手村を離れなければいけない。すべて新型コロナ感染拡大を防ぐための措置だ。
一部の種目ではAD(Accreditation)カード不足のため関係者が出国できない事態も生じた。組織委が防疫を理由にADカードの発行を大幅に減らしたからだ。ADカードは国際大会で身分を証明する「フリーパス」。これがなければ競技場の出入りなど活動がかなり制約される。韓国ボクシング代表チームはADカードが2枚しかなく、コーチ2人がこれを使用する。ADカードがなければ日本への入国も難しい。円滑な大会運営のためにナ・ドンギル監督が韓国に残り、2人のコーチを日本に派遣した。
新型コロナのため種目別規定も細部化された。6月に開催されたIOC執行委員会で▼新型コロナで五輪の競技に出場できない選手またはチームは失格(Disqualified)でなく欠場(DNS=Did Not Start)と規定する▼新型コロナで欠場する前までの選手またはチームの成績は認める▼新型コロナで選手またはチームが出場できない場合、該当の選手またはチームの次に良い成績を出したチームが次のラウンドに進出する--ことを決定した。
種目別に特別規定は少しずつ異なる。マラソン、射撃、ウエイトリフティングのように一日にすべての日程が終わる種目は該当選手が午前に新型コロナ陰性判定を受けてこそ出場できる。陽性判定なら欠場処理される。
個人種目では新型コロナ感染者として処理されれば、その空席を次の順位の選手が埋める。例えば100メートル決勝短距離で競技当日に新型コロナ陽性となれば、準決勝では9位の選手が決勝に進出する。
<東京五輪>無観客、メダル獲得も歓呼禁止、感染すれば欠場処理…「コロナ予防大会か」(2)
日本が待ち望んだ東京五輪の初勝利だったが、周囲は静かだった。「無観客競技」方針のため観客席が空っぽの球場では、選手の声とカメラのシャッターの音だけが響いた。奇妙な雰囲気だった。
人類が「一度も経験したことがない五輪」が23日、その幕を上げた。新型コロナウイルスの世界的大流行の中で開催される不安な祭りだ。昨年7月に予定されていた東京五輪は新型コロナ感染拡大のため1年延期され、「一年遅く開催される五輪」という最初の記録を作った。その後、初の無観客五輪、歓声と握手と抱擁がない五輪、世界の首脳が背を向けた五輪など新しい歴史を次々と刻んでいる。
◆復興を叫んだ五輪が「不安な祭り」に
東京は2013年9月8日(日本時間)に開催された第125回国際オリンピック委員会(IOC)総会で第32回夏季五輪の開催地に決定した。最初の投票で42票を受け、トルコ・イスタンブール(26票)、スペイン、マドリード(26票)を大きく上回った。日本は決選再投票でマドリードを抑えたイスタンブールに60票対36票で圧勝した。1964年の第18回大会以来56年ぶりに夏季五輪の主人公に決まったのだ。アジアで夏季五輪を2回以上開催する国は日本が初めてだった。
当時の安倍晋三首相は五輪開催が確定した瞬間、万歳を叫び、「東日本大震災を乗り越えて(日本が)復興する姿を見せる」と述べた。日本では2011年3月の東日本大震災で福島第1原発から放射能が漏れるという惨事を迎えた。安倍首相は東京五輪をきっかけに福島原発事故の痛みを克服し、自国の経済を回復させるターニングポイントにしようとした。
その日本の夢を新型コロナがのみ込んでしまった。東京五輪がウイルスの直撃弾を受けたのだ。昨年7月24日の開幕予定だった大会が全世界に広がった新型コロナの影響で1年延期された。カナダとオーストラリアをはじめとする国が次々と不参加を宣言すると、安倍首相が悩んだ末に決断した。
これによる損失は雪だるま式に増えた。昨年11月に東京オリンピック組織委員会が分析した五輪1年延期による追加費用は約2000億円。ロイター通信は6月、損失額が30億ドルまで増えたと伝えた。さらに大きな問題は開幕直前まで収まらない日本の新型コロナ感染拡大だ。2013年9月の歓呼はもう影も形もみられない。
2021年に開催される2020東京五輪はさまざまな面で特別だ。今大会では選手が観客の応援を受けることができない。今月8日、日本政府と東京オリンピック組織委員会、東京都、IOC、国際パラリンピック委員会(IPC)が会談し、東京五輪を無観客で進行することに合意した。
東京五輪は東京など首都圏4都県を含む9都道県の42カ所の競技場で行われる。全体競技の80%が行われる首都圏1都3県(東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県)はもちろん、北海道、福島なども無観客を宣言した。これを受け、全体入場券の96%が無効になった。一部の地域では少数の観客が入る計画だが、消えた入場収入は全く埋まらない。朝日新聞は無観客による収入減を約900億円と伝えた。1年延期に無観客による損害まで加えると、その金額だけで4兆ウォン(約3830億円)を超える。金を食う大会をなぜ開催するのかという日本国内の反対世論は続いている。
新型コロナは大会の全般的な運営にも影響を及ぼした。五輪参加選手が交わる開会・閉会式の風景も大きく変わる。開会式に参加する選手団の規模が予定(1万1000人)より半分ほど縮小した。開会・閉会式が開かれる東京新宿国立競技場(五輪メインスタジアム)は6万8000人が入場できる大型スタジアムだ。大規模な競技場に観客は入らず、選手も最少人員だけが集まった。
人との接触が徹底的に禁止され、表彰式も簡素化される。組織委は「表彰式はトレーにあるメダルを選手が自分で首にかける」とし、いわゆる「セルフ表彰式」を予告した。トレーを持つ人は消毒された手袋を着用し、受賞発表者と選手はマスクをする。表彰式では選手間の握手や抱擁も禁止される。競技場では没入度が高い音響システムで観客の歓呼を演出する計画だが、効果は未知数だ。
五輪のニュースでよく登場するメダルをくわえる姿も原則的に禁止される。2016年リオデジャネイロ五輪では身長137センチの米体操選手レーガン・スミスと身長211センチの米バスケット選手デアンドレ・ジョーダンが共に撮った写真が話題になったが、今大会では「社会的距離」を理由にこのような場面を見ることができない。
◆コロナ感染前までの選手の成績は認定
メダルを獲得しても注意が必要だ。感激のあまり歓呼するのは危険行動だ。いくらうれしくても選手は拍手をするか、飛沫が飛ばない方法で表現する必要がある。それだけでなく日程をすべて終えた選手は48時間以内に選手村を離れなければいけない。すべて新型コロナ感染拡大を防ぐための措置だ。
一部の種目ではAD(Accreditation)カード不足のため関係者が出国できない事態も生じた。組織委が防疫を理由にADカードの発行を大幅に減らしたからだ。ADカードは国際大会で身分を証明する「フリーパス」。これがなければ競技場の出入りなど活動がかなり制約される。韓国ボクシング代表チームはADカードが2枚しかなく、コーチ2人がこれを使用する。ADカードがなければ日本への入国も難しい。円滑な大会運営のためにナ・ドンギル監督が韓国に残り、2人のコーチを日本に派遣した。
新型コロナのため種目別規定も細部化された。6月に開催されたIOC執行委員会で▼新型コロナで五輪の競技に出場できない選手またはチームは失格(Disqualified)でなく欠場(DNS=Did Not Start)と規定する▼新型コロナで欠場する前までの選手またはチームの成績は認める▼新型コロナで選手またはチームが出場できない場合、該当の選手またはチームの次に良い成績を出したチームが次のラウンドに進出する--ことを決定した。
種目別に特別規定は少しずつ異なる。マラソン、射撃、ウエイトリフティングのように一日にすべての日程が終わる種目は該当選手が午前に新型コロナ陰性判定を受けてこそ出場できる。陽性判定なら欠場処理される。
個人種目では新型コロナ感染者として処理されれば、その空席を次の順位の選手が埋める。例えば100メートル決勝短距離で競技当日に新型コロナ陽性となれば、準決勝では9位の選手が決勝に進出する。
<東京五輪>無観客、メダル獲得も歓呼禁止、感染すれば欠場処理…「コロナ予防大会か」(2)
この記事を読んで…