習近平中国主席は、2012年に就任した際、「偉大な中華民族の復興」という「中国夢」を実現させると述べた。習主席は、中国共産党結党100周年のことしは、衣食住の心配なく豊かな生活を享受する「小康社会」を実現するという第一の100年目標を、中華人民共和国建国100周年を迎える2049年には「社会主義近代化強国前面建設」という第ニの100年目標を達成し、中国夢を成し遂げると述べた。
ことし7月1日、習主席は、共産党結党100周年記念辞で第一の100年目標を達成したと宣言した。中国は1949年の建国後の長い期間、社会主義計画経済の失敗により苦難を経験した。しかし、1978年にトウ小平が執権し、資本主義改革を行い、対外開放政策を実施し、目覚ましい経済発展を遂げた。中国政府は、経済活動の自由を拡大して活発な市場競争を促進した。重要な国家インフラを構築し、輸出を支援した。改革・開放以来、30年間GDP(国内総生産)が毎年10%以上増加し、大多数の国民が貧困から脱した。中国は世界第1位の輸出国、世界2位の経済大国となった。シャオミ、アリババ、テンセント、ファーウェイなど世界的な企業が登場した。
民主主義と独裁のうち、どちらの政治制度が経済発展に有利なのかは確実な答えがない。一般的に独裁体制では、少数が権力を独占して自分の利益だけを追求し、大多数の経済主体を搾取するため、生産活動の誘引が阻害され、経済成長が遅い。中国の政治体制は、民主主義とはかけ離れている。1989年の天安門で民主化デモを武力で鎮圧し、多くの死傷者が出た。しかし、中国の権威主義政治体制は、経済発展に貢献した。強力な指導者と党が中央集権的な権力構造を制御しながら経済を効率的に運営し、経済発展に貢献した。シンガポールのリー・クアンユー首相や韓国の朴正熙(パク・ジョンヒ)独裁政権も経済発展に成功した。もちろん、毛沢東の大躍進運動や北朝鮮の経済難から分かるように、独裁政権が誤った政策で経済をだめにする例も多い。
中国共産党が成し遂げた過去100年の成果が未来30年の成功を保証することができるのか。中国の2020年の1人当たりのGDPは1万500ドル(現レートで約116万円)で、韓国の3万1489ドルとは差が大きい。実質価値では韓国の1990年の水準だ。韓国は過去30年間で数回経済危機を経験し、大きな政治変革を経験した。中国も、次世代の間、相当の政治・経済の変化を経るものと予想される。習近平主席は2049年に第2の100年の目標を達成し、中国夢を実現するために解決しなければならない内部・外部の挑戦も侮れない。
何よりも、中国経済が過去のように高度成長をすることは困難だ。少子高齢化で生産可能人口(15~64歳)が、すでに減少し始めており、国連の人口推計によると、今後30年間で1億7000万人が減少する。投資収益率が低下し、生産性の向上も停滞した。金融部門が脆弱で、企業や地方政府の負債が多く、金融危機が到来する可能性もある。2012~20年の経済成長率は年平均6.5%に低下し、今後30年間は3~4%台に下落するものと予想される。
中国の中央集権的発展モデルが今後は効率的に作用することは難しい。民間部門が大きくなり、政府が経済を過去のように主導するのは容易ではない。中国政府は、指示に従わないアリババ創業者のジャック・マー(馬雲)とカーシェアリング業者ディディ・チューシンを処罰したが、国家の民間経済統制力はますます弱まるだろう。
中国が権威主義体制で政治の安定を維持することは容易ではない。高等教育を受けた中産層が増えると政治的自由を求める声が高まる。中国はすでに7億人が中産階級として定着し、2000年には8%だった大学進学率は54%に高まった。いつどんな事件が「転換点(tipping point)」となって抑圧された政治参加欲求が爆発するかわからない。韓国も中産層が増え、権威主義政権が崩壊し、民主化が行われた。中国は地域・階層間の所得と富の格差が甚だしく、いつでも政治不満や社会的葛藤が激化する可能性がある。
対外環境の悪化は、中国夢に暗い影を落としている。中国の輸出規模が大きくなり、原材料と核心部品をグローバルサプライチェーンを介して確保し、世界市場に輸出することが前より難しくなった。米中対立により米国市場へのアプローチや先端技術の確保が困難になった。習近平主席の中国夢は、国力を育て「パクス・シニカ(Pax Sinica、中国が主導する世界秩序)」を建設することだ。しかし、米国は、政治、経済、通貨、金融、エネルギー、科学、教育、文化面における超大国で、中国の力は相当期間、米国に及ばないだろう。
中国が今後、民主的価値や規範を受け入れながら、先進国として平和に浮上するかは予測しがたい。米中対立が東アジアでの軍事衝突に激化したり、中国が権威主義体制を維持することで世界の覇権国になれば、隣接した韓国への影響はあまりに大きい。韓国は今後行われる、中国の変化に備えて友好国との協力を強化し、対応しなければならない。
李鍾和(イ・ジョンファ)/高麗(コリョ)大学経済学科教授
ことし7月1日、習主席は、共産党結党100周年記念辞で第一の100年目標を達成したと宣言した。中国は1949年の建国後の長い期間、社会主義計画経済の失敗により苦難を経験した。しかし、1978年にトウ小平が執権し、資本主義改革を行い、対外開放政策を実施し、目覚ましい経済発展を遂げた。中国政府は、経済活動の自由を拡大して活発な市場競争を促進した。重要な国家インフラを構築し、輸出を支援した。改革・開放以来、30年間GDP(国内総生産)が毎年10%以上増加し、大多数の国民が貧困から脱した。中国は世界第1位の輸出国、世界2位の経済大国となった。シャオミ、アリババ、テンセント、ファーウェイなど世界的な企業が登場した。
民主主義と独裁のうち、どちらの政治制度が経済発展に有利なのかは確実な答えがない。一般的に独裁体制では、少数が権力を独占して自分の利益だけを追求し、大多数の経済主体を搾取するため、生産活動の誘引が阻害され、経済成長が遅い。中国の政治体制は、民主主義とはかけ離れている。1989年の天安門で民主化デモを武力で鎮圧し、多くの死傷者が出た。しかし、中国の権威主義政治体制は、経済発展に貢献した。強力な指導者と党が中央集権的な権力構造を制御しながら経済を効率的に運営し、経済発展に貢献した。シンガポールのリー・クアンユー首相や韓国の朴正熙(パク・ジョンヒ)独裁政権も経済発展に成功した。もちろん、毛沢東の大躍進運動や北朝鮮の経済難から分かるように、独裁政権が誤った政策で経済をだめにする例も多い。
中国共産党が成し遂げた過去100年の成果が未来30年の成功を保証することができるのか。中国の2020年の1人当たりのGDPは1万500ドル(現レートで約116万円)で、韓国の3万1489ドルとは差が大きい。実質価値では韓国の1990年の水準だ。韓国は過去30年間で数回経済危機を経験し、大きな政治変革を経験した。中国も、次世代の間、相当の政治・経済の変化を経るものと予想される。習近平主席は2049年に第2の100年の目標を達成し、中国夢を実現するために解決しなければならない内部・外部の挑戦も侮れない。
何よりも、中国経済が過去のように高度成長をすることは困難だ。少子高齢化で生産可能人口(15~64歳)が、すでに減少し始めており、国連の人口推計によると、今後30年間で1億7000万人が減少する。投資収益率が低下し、生産性の向上も停滞した。金融部門が脆弱で、企業や地方政府の負債が多く、金融危機が到来する可能性もある。2012~20年の経済成長率は年平均6.5%に低下し、今後30年間は3~4%台に下落するものと予想される。
中国の中央集権的発展モデルが今後は効率的に作用することは難しい。民間部門が大きくなり、政府が経済を過去のように主導するのは容易ではない。中国政府は、指示に従わないアリババ創業者のジャック・マー(馬雲)とカーシェアリング業者ディディ・チューシンを処罰したが、国家の民間経済統制力はますます弱まるだろう。
中国が権威主義体制で政治の安定を維持することは容易ではない。高等教育を受けた中産層が増えると政治的自由を求める声が高まる。中国はすでに7億人が中産階級として定着し、2000年には8%だった大学進学率は54%に高まった。いつどんな事件が「転換点(tipping point)」となって抑圧された政治参加欲求が爆発するかわからない。韓国も中産層が増え、権威主義政権が崩壊し、民主化が行われた。中国は地域・階層間の所得と富の格差が甚だしく、いつでも政治不満や社会的葛藤が激化する可能性がある。
対外環境の悪化は、中国夢に暗い影を落としている。中国の輸出規模が大きくなり、原材料と核心部品をグローバルサプライチェーンを介して確保し、世界市場に輸出することが前より難しくなった。米中対立により米国市場へのアプローチや先端技術の確保が困難になった。習近平主席の中国夢は、国力を育て「パクス・シニカ(Pax Sinica、中国が主導する世界秩序)」を建設することだ。しかし、米国は、政治、経済、通貨、金融、エネルギー、科学、教育、文化面における超大国で、中国の力は相当期間、米国に及ばないだろう。
中国が今後、民主的価値や規範を受け入れながら、先進国として平和に浮上するかは予測しがたい。米中対立が東アジアでの軍事衝突に激化したり、中国が権威主義体制を維持することで世界の覇権国になれば、隣接した韓国への影響はあまりに大きい。韓国は今後行われる、中国の変化に備えて友好国との協力を強化し、対応しなければならない。
李鍾和(イ・ジョンファ)/高麗(コリョ)大学経済学科教授
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