2020年2月3日午前、横浜港へ向かっていた12万トン級豪華クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号に船内放送が流れた。
「この船は予定より早い3日午後8時半に横浜沖に到着し、検疫を実施します」
この時間、クルーズ船には8日前の1月25日に香港で下船した男性乗客が新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)に感染したことが秘密裏に伝えられていた。3日夜、検疫官を載せた小さなボートがクルーズ船へ向かった。4日夜に発熱症状を示した乗客31人のうち10人が新型コロナ陽性判定を受けたが、船内では何の措置も取られなかった。乗客2000人余りは食堂や演奏会場、プールなどでクルーズ旅行最後の日の夜を楽しんだ。
船内の雰囲気が急変したのは翌日の5日朝だった。「日本検疫当局から各客室に留まってほしいという指示があった」「下船は早くとも14日後になる」という便りが次々と伝えられた。前代未聞の14日間にわたる船体隔離、「悪夢のクルーズ」の始まりだった。
昨年2月に発生したダイヤモンド・プリンセス号の新型コロナ集団感染事件は世界を衝撃に陥れた。世界が新型コロナパンデミックを経験する直前で、当時日本全体の累積感染者数は24人(2月4日現在)だった。
日本政府の公式統計によると、クルーズ船の乗客と乗務員合計3713人のうち712人が新型コロナに感染し、14人が死亡した。だが、実際に感染していた人はこれよりもはるかに多かったものと推算される。外国人乗客の相当数は検査を待っている間に自国に戻り、オーストラリアや米国からの乗客のうち23人は自国に到着した後、検査を通じて陽性が確認された。
神戸大学病院の岩田健太郎教授(感染症内科)は中央日報の取材に対して「712人という数字は日本政府が数えたものだけがそうだったということで、実際の感染者は1000人程度になる」と推算した。実際、3713人全員が検査を受けたわけではない。
5日からすべての乗客を部屋から出さないようにする「隔離」が始まったが、感染者数は減らなかった。隔離13日目の17日には一日に99人という多数の感染者が出た。船内で調査作業にあたっていた検疫官や厚生省職員ら外部要員9人も次々と感染が確認された。
18日、厚生労働省の要請で船内に入った岩田氏は今でも船内の状況を鮮明に記憶している。岩田氏は「隔離の基本であるゾーニング(zoning:ウイルスから安全なところをグリーンゾーン、汚染されたところをレッドゾーンで区分する作業)が行われていなかった」としながら「船内にいた厚労省の役人もウイルスから自身を守る措置を全く取れずにいたのでウイルスが伝播するのはあまりにも当然だった」と指摘した。
現場で問題点を指摘すると、逆に船から追い出された岩田氏は、その後YouTubeを通じて船内の状況を世界に知らせた。岩田氏は「20年以上にわたって感染症を扱ってきたが、防疫状態が非常に粗末で恐怖を感じた」と暴露した。
当初、3700人余りに対して検査をしようという考えも、彼ら全員を受け入れる病床を準備しようという考えも毛頭なかった日本防疫当局は、乗客全員を船から下ろさせないという格別の措置を取った。だが、結果的にはこの措置が感染を広めた原因として指摘されている。特に、乗客に食事などを配った乗務員は防疫措置もろくに講じてもらえないまま、船のいたるところにウイルスを運ぶ役割をした。
NPO法人「医療ガバナンス研究所」の上昌広理事長は、中央日報のインタビューに対して「当時、日本政府の最優先順位は乗客の健康ではなかった。東京オリンピック(五輪)と、感染者が陸地に足を入れてはいけないという考えだけだった」と話した。特に、持病がある高齢者と20代の乗務員を同じように扱ったことは敗着だったと指摘する。
原則もビジョンもなかった日本…「クルーズ船の防疫失敗、今も繰り返している」(2)
「この船は予定より早い3日午後8時半に横浜沖に到着し、検疫を実施します」
この時間、クルーズ船には8日前の1月25日に香港で下船した男性乗客が新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)に感染したことが秘密裏に伝えられていた。3日夜、検疫官を載せた小さなボートがクルーズ船へ向かった。4日夜に発熱症状を示した乗客31人のうち10人が新型コロナ陽性判定を受けたが、船内では何の措置も取られなかった。乗客2000人余りは食堂や演奏会場、プールなどでクルーズ旅行最後の日の夜を楽しんだ。
船内の雰囲気が急変したのは翌日の5日朝だった。「日本検疫当局から各客室に留まってほしいという指示があった」「下船は早くとも14日後になる」という便りが次々と伝えられた。前代未聞の14日間にわたる船体隔離、「悪夢のクルーズ」の始まりだった。
昨年2月に発生したダイヤモンド・プリンセス号の新型コロナ集団感染事件は世界を衝撃に陥れた。世界が新型コロナパンデミックを経験する直前で、当時日本全体の累積感染者数は24人(2月4日現在)だった。
日本政府の公式統計によると、クルーズ船の乗客と乗務員合計3713人のうち712人が新型コロナに感染し、14人が死亡した。だが、実際に感染していた人はこれよりもはるかに多かったものと推算される。外国人乗客の相当数は検査を待っている間に自国に戻り、オーストラリアや米国からの乗客のうち23人は自国に到着した後、検査を通じて陽性が確認された。
神戸大学病院の岩田健太郎教授(感染症内科)は中央日報の取材に対して「712人という数字は日本政府が数えたものだけがそうだったということで、実際の感染者は1000人程度になる」と推算した。実際、3713人全員が検査を受けたわけではない。
5日からすべての乗客を部屋から出さないようにする「隔離」が始まったが、感染者数は減らなかった。隔離13日目の17日には一日に99人という多数の感染者が出た。船内で調査作業にあたっていた検疫官や厚生省職員ら外部要員9人も次々と感染が確認された。
18日、厚生労働省の要請で船内に入った岩田氏は今でも船内の状況を鮮明に記憶している。岩田氏は「隔離の基本であるゾーニング(zoning:ウイルスから安全なところをグリーンゾーン、汚染されたところをレッドゾーンで区分する作業)が行われていなかった」としながら「船内にいた厚労省の役人もウイルスから自身を守る措置を全く取れずにいたのでウイルスが伝播するのはあまりにも当然だった」と指摘した。
現場で問題点を指摘すると、逆に船から追い出された岩田氏は、その後YouTubeを通じて船内の状況を世界に知らせた。岩田氏は「20年以上にわたって感染症を扱ってきたが、防疫状態が非常に粗末で恐怖を感じた」と暴露した。
当初、3700人余りに対して検査をしようという考えも、彼ら全員を受け入れる病床を準備しようという考えも毛頭なかった日本防疫当局は、乗客全員を船から下ろさせないという格別の措置を取った。だが、結果的にはこの措置が感染を広めた原因として指摘されている。特に、乗客に食事などを配った乗務員は防疫措置もろくに講じてもらえないまま、船のいたるところにウイルスを運ぶ役割をした。
NPO法人「医療ガバナンス研究所」の上昌広理事長は、中央日報のインタビューに対して「当時、日本政府の最優先順位は乗客の健康ではなかった。東京オリンピック(五輪)と、感染者が陸地に足を入れてはいけないという考えだけだった」と話した。特に、持病がある高齢者と20代の乗務員を同じように扱ったことは敗着だったと指摘する。
原則もビジョンもなかった日本…「クルーズ船の防疫失敗、今も繰り返している」(2)
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