南北関係の改善のメッセージには「注目」したが、韓国を脅かす新型兵器に対する「批判」はなかった。１０日に開かれた北朝鮮の労働党創建７５周年軍事パレードと金正恩（キム・ジョンウン）北朝鮮国務委員長の演説に対する青瓦台（チョンワデ、大統領府）の立場だ。

青瓦台は１１日午前、ソ・フン（徐薫）国家安保室長の主宰で国家安全保障会議（ＮＳＣ）の緊急常任委員会会議を開いた後「環境が作られ次第に南北関係を復元しようという北朝鮮の立場に注目する」と明らかにした。金委員長が「愛する韓国の同胞にも温かい心を送りながら一日も早く（新型肺炎）保健危機が克服されて北と南が再び手を取り合うことを祈る」と述べたことに対する反応だ。

統一部は一歩踏み込んだ。「金委員長がわが国民に見舞いのメッセージを出し、南北関係の改善の可能性を示唆したことに注目し、演説が韓半島（朝鮮半島）平和と南北関係の発展につながることを期待する」と明らかにした。▼人道・保健医療分野協力の再開▼海洋水産部公務員襲撃事件に関連した軍通信線の復旧－－など具体的な希望事項も表明した。


韓国政府は金委員長の演説を文在寅（ムン・ジェイン）大統領が先月国連総会演説で「条件なき終戦宣言」を提案したことに関連付けて鼓舞された雰囲気だ。外交部は「終戦宣言の構想に対する（北朝鮮の）呼応を期待する」と公式立場を出した。

政府は特に金委員長が「われわれの戦争抑制力が決して乱用されたり絶対に先制的に使われたりしないだろう」と述べたことを肯定的に解釈している。このような発言は文大統領が終戦宣言と韓半島平和プロセスの復元を提案したことと大きな枠組みで似たような流れにみられるということだ。その間、政府の南北関係改善の努力を拒否してきた北朝鮮が今度は肯定的信号を送ったとみる雰囲気だ。

だが、金委員長が先制的に武力を使わないと明らかにしたのは初めてでない。彼は２０１９年新年の辞で「核兵器を作ることも試験することもせず、使うことも伝播することもしない」と明らかにし、２０１８年板門店（パンムンジョム）南北首脳会談では「決して武力使用はないだろうし、米国もわれわれと対話してみると核を撃つような人ではないことが分かるだろう」と話した。

今回の演説を見ても金委員長は条件を付けた。「もしいかなる勢力であれ、国家安全を脅かしようとすればわれわれの攻撃的な力を先制的に総動員するだろう」と述べた。前職高位外交官は「この発言が危険の兆しが感知されれば先に殴る先制攻撃をするという意味」と指摘した。

また、北朝鮮は今回の軍事パレードで韓国に直接的な脅威になり得る新しい潜水艦発射弾道ミサイル（ＳＬＢＭ）を公開し、現代化した機甲師団の戦力も誇示した。

だが、政府の立場にはこれに対する批判さえなかった。青瓦台は「新しい兵器体系の戦略的な意味などを引き続き分析し、われわれの防御能力も点検する」に留めた。国防部が「北朝鮮が新しい長距離弾道ミサイルと推定される兵器などを公開したことに対して懸念を表明する」としたのが全部。

これを受け、韓国国家戦略研究院のシン・ボムチョル外交安保センター長は「金委員長は先に核を使わないとしながらも新型戦略兵器の公開などを通してむしろ行動ではさらに増強された核戦争力を誇示する言動不一致を見せた」として「これを通じて終戦宣言を望む韓国に揺さぶりをかけて望むところを成し遂げようとする狙いがあるように見えるが、このような時こそ政府はわが国民の襲撃事件の真相究明など原則を揺さぶってはならない」と指摘した。

野党は否定的な反応を見せた。国民の力のキム・ウネ報道官は論評で「文在寅政府の終戦宣言に金正恩委員長が『核戦略兵器』で答えた。北朝鮮にわが政府は再び不意打ちを食らった」と述べた。北朝鮮外交官出身である国民の力の太永浩（テ・ヨンホ）議員は「今回のパレードは北朝鮮の『わが民族同士』と『韓米同盟』の間でどちら側を選択するのかわが政府をさらに悩ませている」と評価した。