北朝鮮両江道恵山市の市場のタバコ露店の様子。今年7月に中朝国境地域に行ってきたカン・ドンワン東亜大学教授が望遠レンズを用いて捉えた。[写真 書籍出版ノナドゥリ]
タバコを介して金正恩体制を覗き見た著書『北朝鮮のタバコ-プロパガンダとブランドの変奏曲』
なぜ北朝鮮は世界トップ圏の喫煙国家なのだろうか。タバコは2500万人の北朝鮮住民にとってどのような意味を持つのか。北朝鮮の文化と住民の日常生活を追跡・研究してきた東亜(トンア)大学のカン・ドンワン教授と共に「喫煙天国」の極秘実像を見てみよう。
「電子タバコは未成年者をはじめ、タバコを吸っていなかった人も喫煙者にする案内人の役割をする非常に危険な媒介物だ」
北朝鮮の労働新聞は先月27日付の記事で電子タバコの弊害に初めて言及した。北朝鮮が最近、世界的に議論が起きている電子タバコの有害性に注目し始めたのだ。世界保健機関(WHO)によると、北朝鮮は電子タバコを禁止している。しかし、中朝国境地域を中心に流入が急激に増えており、若年層を中心に広がっているという。海外勤務し帰国する外交官や代表部職員の間では職場の上司や親戚へのお土産として西側諸国で作られた電子タバコの人気が急激に高まっているという。
北朝鮮のタバコの消費や流通市場を見てみると、かなり奇形的な様相を見せている。独自に生産するタバコブランドは把握されているだけで数百種類を超える。国民総所得(GNI)基準で47倍の経済力を持つ韓国が50種のタバコを生産していることと比較すると非常に多い水準だ。厳格な統制社会の北朝鮮でタバコが比較的簡単に流通している点も目を引く。専売制度を運営したり、指定された販売所でのみ購入できるようにしそうだが、我が故郷タバコ工場、平壌龍峯(ピョンヤンリョンボン)タバコ工場、羅先(ラソン)新興タバコ会社など40余りの生産機関が先を争ってタバコを販売している。カン・ドンワン教授は「北朝鮮が発売した新商品の購入のために中国の国境地域を頻繁に訪問するが、1~2カ月で5種類前後の新しいタバコが出る時もある」と述べた。北朝鮮の市場や路上のあちこちでタバコ露天商を容易に見ることができ、多くのタバコを積んで行き交う問屋も目につくという。
タバコは北朝鮮の日常でもある。住民の生活の中に最も密着しているという話だ。カン教授は4日に出版される著書『北朝鮮のタバコ-プロパガンダとブランドの変奏曲(原題)』で「北朝鮮のタバコは嗜好品というより生活必需品」と指摘した。病院で治療を早く受けなければいけない場合や甚だしくは脱北のために川を渡る時も賄賂を渡さなければならないが、代表的な品目がタバコだというのだ。「タバコ2カートンを賄賂に送り鴨緑江(アムノッカン)を越えた」という脱北者の証言からもこのような様子は見て取れる。
状況がこうだから成人男性の喫煙率が一時54.7%に及んだこともあった。世界平均の48%をはるかに上回っているのはもちろん、キューバ・中国・ラオスなどと共にトップ圏とされる。一部では、北朝鮮が女性喫煙者がいないと国際機関に報告した部分は現実味がないという点から実際の喫煙率ははるかに高いという見方もしている。禁煙キャンペーンの効果が一部出ていると北朝鮮当局は主張している。2012年末に52.4%だった北朝鮮男性の喫煙率が2014年末には43.9%に8.4%ポイント減少したという。
テレビによる禁煙キャンペーンは過去には社会主義の教養の意味合いで起こったが、最近は感性に訴える方向に変わった。最近、北朝鮮当局が制作した映像には1人の女性が登場し「女性がタバコを止めろと言えば『分かった』と言って止めるべきなのに、女性の言葉を、流れるせせらぎのように聞き流している」と喫煙男性を批判する。「生命を脅かす特等嗜好品」というタイトルのキャンペーン・プログラムは「夫への愛、家庭を守ろうとする自覚で私たち女性を残念な気持ちで身震いさせた」と切なる心情を訴えている。
「独自の生産タバコのブランドだけで数百種類」…北朝鮮は喫煙天国(2)
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