李禹煥の1978年作『点からNo.780217』
李禹煥
李禹煥(80)は韓国現代美術の道しるべとも言える作家だ。1970年代、日本の現代美術運動である物派や韓国の単色化運動を主導した。2011年に米ニューヨークのグッゲンハイム美術館、2014年に仏パリのベルサイユ宮殿で個展を開いて巨匠級の活動をしている。彼の作品は韓国美術市場も牽引している。韓国美術市価鑑定協会によると、2005~2014年の国内の主要オークションで李禹煥の作品は合計712億ウォン(567点)が取り引きされた。韓国近現代作家で1位だ。
ウワサは3年余り前からあった。生存している代表作家作品から贋作スキャンダルが広がった場合の市場に及ぼす影響に対するおそれや作家の強い否定などにより先送りにされてきた問題だ。
彼の初期抽象画として希少価値が高いため高値で取り引きされた「点から」「線から」(70年代後半)シリーズが2012~13年に数多く登場して疑惑が提起された。
作家はこれに対し言論インタビューを通じて「70年代、東京画廊で保管した作品が盗まれた。私の物で間違いない」「市中に贋作として出回ったものなどを回収して検討してみたが一点も贋作はなかった。私の作品は固有の呼吸で描かれているため模倣が難しい」と強く否定してきた。
韓国美術品鑑定協会で偽物と鑑定された作品に対して作家が本物だと対抗して紛争が起きたため、鑑定協会は2013年以降、彼の作品の鑑定を中止した。このため、2010年以前の展示・オークション記録あるいは鑑定書なしでは取り引きが難しい状況になった。今回の鑑定書が2001年に画廊協会のものに基づいて偽造された背景だ。オークションを控えた事前展示でも保存状態が良くないとささやかれていたが、贋作の代表的技法である「エイジング(作品を古くみせかけること)」のためだと推定される。
贋作の歴史は東西古今、事欠かない。「沈周が朝に一枚の図を描けば、夕方に100枚になって現れた」。明の画家・沈周に対して彼の弟子である文徴明が残した言葉だ。韓国でも贋作は忘れたころになるとは登場した。2007年に、国内美術品オークション史上、最も高額で取り引きされた朴壽根(パク・スグン)の『洗濯場』が贋作であるとの疑惑が提起されて2年にわたって裁判が行われたこともあった。ことし8月、画家・千鏡子(チョン・ギョンジャ)の他界後、生前問題になった『美人図』の真偽問題が再び大きくなった。韓国美術品鑑定評価院が2003~2013年に鑑定した2144点のうち本物は70.7%だった。依頼品の3点に1点ほどが贋作だったということになる。贋作に対する体系的な防止策が必要な理由だ。
韓国美術情報開発院のユン・チョルギュ代表は「一般的に人気作家の数億ウォン台の作品から贋作が出てくるものだが、最近では100万ウォン前後の作品でも『生計型偽造』が見つかっている。アレクサンダー・カルダー財団など海外には作家や遺族、専門家中心の財団があって鑑定の権威を確保している。見識鑑定だけでなく、作家別の専門研究成果と所蔵履歴などが体系的に整理されるべき」と述べた。
この記事を読んで…