日本製鉄強制徴用被害者のイ・チュンシクさん
2018年10月、大法院(最高裁判所)全員合議体は被告の日本製鉄がイさんをはじめ原告に各1億ウォン(現レートで890万円、遅延利子別途)の精神的損害賠償金を支払うよう命じる判決を下した。それから1年8カ月が流れたが、イさんは再び長い時間を待たなければならなかった。
イさんは日本企業の国内資産差し押さえ命令関連の内容を伝え聞いたとし、「政府が生存者が生きているうちに賠償金を最大限はやく受け取れるようにしてほしい」と何度も強調した。「韓国で裁判の結果が出たのでそのまま処理してほしい」としつつも、賠償金の支給方式に関連し、政府・民間で提起されたさまざまな解決法については明確に賛成・反対を明らかにしなかった。
今月5日と6日、光州(クァンジュ)市内と自宅で会ったイさんへのインタビューを整理した。
--損害賠償金支給が遅れている。
「(大法院で)判決を出してくれたので希望を持っているが、今は何年経っても答えが出てこないのでもどかしく思っている。そろそろ私も100歳になろうとしているが、死ぬ前に解決してほしい。(韓国)政府が生存者に対して早く処理してほしい」(※一緒に訴訟を起こした故ヨ・ウンテクさんをはじめとする原告4人のうち3人が亡くなっている)
--生活はどのようにしておられるのか。
「私の今(の経済状況は)良くない。一人で暮らしているが、国家報勲庁(報勲処)から30万ウォンほどをくれるのでそれで。区庁から別に30万ウォンほどを月々通帳に入れてくれるから、毎月それを使って生活している」
--政府が昨年、韓日企業が自発的に基金を作るという方案(1+1)を出した。
「日本と(韓国)政府と合意してそういうふうに保証してくれればありがたい。ああ、その金を、解決して判決文どおり判決(の結論)が出るんだな、そういう考えだ」
--この法案に対して誰かから意見を求められたことはあるか。
「私のところに誰かきて何か聞いた事実はない。補償を受けるとテレビ放送で出ていたので、『もらったのか、もらったのか』と聞かれたが、『まだ来てない』と言った。私の話だけ聞いて座っていた」
--法院の賠償金の代わりに日本企業の謝罪を前提とした慰労金支給の方式は。
「裁判所の判決どおり清算してくれれば、それが私にとっての終わりだ。日本が『すみません』…? 彼らが何の謝罪をするだろうか。裁いて差し押さえたその価値のままして処理してくれれば、それで終わりだ」
--両国国民の基金募金方式に対しては。
「そうしてくれるならありがたい。以前も学生たちが集めて送ってくれた」
--韓日弁護士・学界・市民団体が集まって方策をさぐってみようという声(官民合同協議体)もあるが。
「私は何の団体か、こういう人たちのことはよく分からない。弁護士だけに聞くのだろう。日本では反対しているそうだが。私はもう年寄りだから期待も…。私が生きているうちにお金は出ないようだ」
--どうして韓国政府が出なければなければならないと考えるのか。
「昔、金鍾泌(キム・ジョンピル)首相の時、朴正熙(パク・チョンヒ)大統領の時、1次・2次で(有・無償借款で)すべて持っていったという。(強制徴用被害者と)全部あわせて政府が持っていったと。それで今の(問題になっている)根本が『支給する人がいない』と日本人が言っていることだ。私の考えは、大韓民国にお金を持ってきたことは明らかなのだから、大韓民国が生存者している人々にお金をやらなくてはいけない。大韓民国で裁判の結果があるのだから(政府が)清算してしまうべきだ」
--日本政府の役割は。
「両政府が清算をしなければならない。(強制徴用当時)製鉄所では私が軍隊に行ってからは毎月政府にお金を支給したと、日本製鉄ではそのようにして清算したということだ。その時は(政府が)朝鮮総督府、日本ではない。そのように受け取って、ある政府で使ったのだ、私たちのお金を。ところで今は裁判訴訟で勝ったから、きれいに清算しなければならない。(※大法院判決の要旨は原告の「未払い賃金」ではなく精神的損害賠償の性格だ。また、1965年韓日協定は政府次元の外交的保護権を消滅させただけで、不法行為に対する個人の請求権利は消滅させることができないという趣旨だ)
--最後に言いたいことは。
「生前に、生きているうちに(お金を)くれるべきだ。死んでからもらっても意味がない。(同じように訴訟を起こしたおじいさんたちと)私は一緒にいたから、この良いことを、清算を受けなければならない。『先に行ってしまったか』それが少し残念でならない。私の心は寂しい。私一人…」
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