トランプ米大統領が「世の中で最も美しい単語」と称した関税を武器にして貿易戦争の火ぶたを切った。１日にメキシコとカナダから輸入される製品に２５％、中国製品に１０％の関税を課す内容の大統領令に署名してだ。近く半導体に対する関税賦課まで予告し韓国の産業界で緊張感が高まっている。

外信などによると、トランプ大統領は前日自身の執務室で開かれた記者会見で、半導体などに対する関税賦課の方針を明らかにした。半導体対策を議論するためにエヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者（ＣＥＯ）と面談した内容を説明しながらだ。トランプ大統領は「どのような話があったのか話せないが良いミーティングだった。私たちは終局的に半導体に関税を課すだろう。石油とガスにも関税を課すだろう」と明らかにした。続けて「それは近く起きることであり、多分２月１８日ごろになるだろう」と付け加えた。

半導体は１９９７年に世界貿易機関（ＷＴＯ）の情報技術協定（ＩＴＡ）により加盟国間では無関税を適用している。ＷＴＯ加盟国間にはどの国に輸出しても関税を賦課しない品目だが、トランプ大統領は協定に反して米国に輸入される半導体には税金を課すと宣言したのだ。現在価格形成で考慮されない税金が適用されればそれだけチップ価格の上昇は避けられない。ある半導体業界関係者は「税金ができたからと突然半導体価格をそれだけ下げることはできないので結果的に供給価格が上昇し、これは短期的に需要萎縮を起こす恐れがある」と話した。


主要チップ供給国の台湾でも半導体関税に対する懸念が大きくなっている。台湾経済紙の科学技術新報によると、中華経済研究院の連賢明院長は「２月中旬に半導体産業に税金が課されるだろう。ハイエンド工程に及ぼす影響は比較的少ないが、価格決定力が低いレガシー半導体に大きな影響を与えるだろう。関税戦争を通じて半導体供給網再編を招くことになるならば台湾に重要な問題になる」としながら懸念を示した。

貿易協会の統計によると、昨年韓国が米国に直接輸出した半導体は１０６億ドル相当だ。順位では中国、香港、台湾、ベトナムに次いで５位であり、昨年の全半導体輸出額１４１９億ドルのうち７．５％を占める。全半導体輸出を左右するほど大きな割合とはいえない。ただ米国に直接行かず再加工などを理由に他国を経由するケースがあり、米国がどの範疇まで税金を課すかにより影響は変わってくる。例えばＳＫハイニックスの広帯域メモリー（ＨＢＭ）は最終的にエヌビディアに販売するものだが、組み立てのためＴＳＭＣがある台湾に先に輸出する。サムスン電子とＳＫハイニックスは「まだ確定していないため状況を鋭意注視している」という立場だ。

トランプ大統領の関税賦課は「税金を多く出したくなければ米国に工場を建設しなさい」という意味と解釈できる。世界的半導体企業はバイデン政権の時に約束したＣＨＩＰＳ法の補助金すらも不確実になった状況で、米国内工場建設の圧力まで受けている局面だ。台湾ＴＳＭＣが最近米国内での先端半導体生産を増やしている点を根拠に一部米国のアナリストは結局メーカーが譲歩する可能性もあると分析する。ムーア・インサイツ・アンド・ストラテジーのパトリック・ムーアヘッド首席アナリストは、ＣＩＯドットコムを通じ「高い関税が課さればＴＳＭＣはひとまず反発するだろうが、結局やわらぐだろう」と予想する。現在米国工場建設が遅々として進まない韓国企業もやはり米国での生産を増やさなければならない状況に置かれるかもしれない。

だがこうした関税政策にもアジアに製造が傾いている現在の半導体供給網を再編するのは難しく、結局被害は米国ビッグテックと消費者に行くだろうという分析も出ている。産業研究院のキム・ヤンペン研究員は「半導体ファブひとつ作るのに時間が非常に必要とされ、その工場から半導体が出てくるには少なくとも２～３年はかかるが、トランプ大統領が考えるだけのリショアリングが成り立つのは難しいだろう。市場に代替品が十分でないメモリー半導体の場合、供給網再編が早く成り立つよりは継続的な購入が続き、これは結局米国ビッグテックと消費者の費用負担につながるだろう」と話した。ある業界関係者は「ビッグテックの収益が減れば投資活動が減って究極的に韓国半導体の需要低下まで続きかねない。多角的に半導体市場が冷え込む影響が生じる恐れもある」と話した。