2月24日、ロシアがウクライナを侵攻すると、米国と欧州各国は欧州と連結するガスパイプライン「ノースストリーム2」の閉鎖と、外貨決済に欠かせない国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除を含む強力な制裁を加えた。ロシアは強く反発したが、これに対応できずにいる。
3月2日、米国はこれに加えてロシアと侵攻を支援するベラルーシに対する追加制裁を発表した。追加制裁はロシアとベラルーシが軍支援に必要な物資を確保する能力を大きく制限することを目標にしている。今回の制裁は、ロシアで軍用戦闘機、歩兵戦闘車、電子戦システム、ミサイル、無人偵察機などを製造する22の機関を対象にしている。
◆世界2番目の武器輸出国に大きな打撃
ロシアは米国に次いで世界2番目の武器輸出国だ。米国議会調査局(CRS)によると、ロシアの武器輸出は年平均130億ドル。主な販売国は中国、アルジェリア、エジプト、インド、ベトナムなどだ。このうちインドは2016年からロシアの武器の最大輸入国となっている。
中国はSu-35戦闘機、S-400地対空ミサイル、エジプトはKa-52攻撃ヘリコプター、T-90S戦車、ベトナムはT-90S戦車、軍艦、潜水艦などを最近購入している。北アフリカのアルジェリアはイスカンデル-E弾道ミサイルとキロ型潜水艦などを購入した。インドはロシア製Su-30MKI戦闘機をライセンス生産し、S-400地対空ミサイル、T-90S戦車、MiG-29K戦闘機など多くの装備を輸入している。ロシアと共同開発したブラモス超音速ミサイルはフィリピンに輸出した。
◆侵攻前から制裁した米国
米国のロシア製武器輸出阻止の動きは侵攻前からあった。代表的なのが米国の敵対国対応法CAATSAだ。CAATSAはイラン、北朝鮮、そしてロシアに制裁を加える連邦法で、2017年7月に米議会を通過し、8月2日にトランプ大統領が署名した。
この法が初めて適用されたのは、米国など他のNATO(北大西洋条約機構)加盟国の反対にもかかわらず、ロシアからS-400地対空ミサイル導入を強行したトルコだった。このためトルコはF-35共同開発プログラムから排除され、核心戦力のF-16戦闘機も改良できずにいる。
トルコの事例を目にした複数の国がロシア製先端武器の導入計画をあきらめている。インドネシアはSu-35戦闘機11機を導入しようとしたが、フランスとラファール戦闘機導入契約を結んで旋回した。エジプトとアルジェリアもSu-35戦闘機導入計画をあきらめるなど、米国の圧力が効果を出している。
しかし米国はこの法をすべての国に公平に適用していない。米国のインド太平洋戦略で重要なインドもS-400ミサイルを導入したが、制裁はない。米議会は中国への圧力においてインドは重要な位置にあるとし、制裁猶予を要請している。にもかかわらず国連安保理のロシアのウクライナ侵攻糾弾決議案にインドが棄権票を投じたため、米国から批判が出ている。
◆反射利益は誰に生じるのか
ロシアに加えられた制裁は、ロシア製武器を購入してきた国に導入先の変化を強要している。しかし導入先の変更による恩恵は米国がすべて受けるわけではない。米国は武器輸出価格が高く、規定も非常に厳しい。販売を要請した国に要求する点も多く、さらに能力を制限したりもする。
アラブ首長国連邦(UAE)は、米国が中国ファーウェイ(華為)の5G通信網導入に懸念を表し、独自の運用を制限すると明らかにしたことで、F35導入交渉を中断した。このためフランスとラファール戦闘機80機導入という大規模な契約を締結した。
米国から大規模な軍事援助を受けたエジプトとイラクも米国製武器から遠ざかっている。エジプトとイラクの空軍のF-16戦闘機は、中距離空対空ミサイルと精密誘導武器運用能力がない。エジプトはラファール戦闘機を、イラクはパキスタンと中国が共同開発したJF-17戦闘機の導入を決定した。
イスラエルも一部の利益を得ている。イスラエルはインドと無人機やミサイルなどの分野で協力している。2020年に国交正常化したUAE、モロッコと地対空ミサイルなど多様な武器販売交渉を行っている。
中国にも恩恵がある。中国はサウジアラビア、UAE、エジプトなどに無人機を販売した。最近、サウジアラビアが中国の支援を受けて独自の弾道ミサイル生産を準備しているという分析があり、UAEは自国に武器禁輸措置を取ったイタリアの代わりに中国からL-15軽戦闘/訓練機を導入することにした。モロッコも中国版S-300と呼ばれるFD-2000B地対空ミサイルを導入することにした。
韓国はUAEと天弓II地対空ミサイル契約を締結し、エジプトとはK9自走砲販売契約に成功した。しかしロシア製武器が抜けた空白を占めるには緻密な販売戦略と市場で売れる武器を開発する必要がある。武器輸出は性能だけで成立するわけではないため、積極的な外交・軍事戦略も求められる。
3月2日、米国はこれに加えてロシアと侵攻を支援するベラルーシに対する追加制裁を発表した。追加制裁はロシアとベラルーシが軍支援に必要な物資を確保する能力を大きく制限することを目標にしている。今回の制裁は、ロシアで軍用戦闘機、歩兵戦闘車、電子戦システム、ミサイル、無人偵察機などを製造する22の機関を対象にしている。
◆世界2番目の武器輸出国に大きな打撃
ロシアは米国に次いで世界2番目の武器輸出国だ。米国議会調査局(CRS)によると、ロシアの武器輸出は年平均130億ドル。主な販売国は中国、アルジェリア、エジプト、インド、ベトナムなどだ。このうちインドは2016年からロシアの武器の最大輸入国となっている。
中国はSu-35戦闘機、S-400地対空ミサイル、エジプトはKa-52攻撃ヘリコプター、T-90S戦車、ベトナムはT-90S戦車、軍艦、潜水艦などを最近購入している。北アフリカのアルジェリアはイスカンデル-E弾道ミサイルとキロ型潜水艦などを購入した。インドはロシア製Su-30MKI戦闘機をライセンス生産し、S-400地対空ミサイル、T-90S戦車、MiG-29K戦闘機など多くの装備を輸入している。ロシアと共同開発したブラモス超音速ミサイルはフィリピンに輸出した。
◆侵攻前から制裁した米国
米国のロシア製武器輸出阻止の動きは侵攻前からあった。代表的なのが米国の敵対国対応法CAATSAだ。CAATSAはイラン、北朝鮮、そしてロシアに制裁を加える連邦法で、2017年7月に米議会を通過し、8月2日にトランプ大統領が署名した。
この法が初めて適用されたのは、米国など他のNATO(北大西洋条約機構)加盟国の反対にもかかわらず、ロシアからS-400地対空ミサイル導入を強行したトルコだった。このためトルコはF-35共同開発プログラムから排除され、核心戦力のF-16戦闘機も改良できずにいる。
トルコの事例を目にした複数の国がロシア製先端武器の導入計画をあきらめている。インドネシアはSu-35戦闘機11機を導入しようとしたが、フランスとラファール戦闘機導入契約を結んで旋回した。エジプトとアルジェリアもSu-35戦闘機導入計画をあきらめるなど、米国の圧力が効果を出している。
しかし米国はこの法をすべての国に公平に適用していない。米国のインド太平洋戦略で重要なインドもS-400ミサイルを導入したが、制裁はない。米議会は中国への圧力においてインドは重要な位置にあるとし、制裁猶予を要請している。にもかかわらず国連安保理のロシアのウクライナ侵攻糾弾決議案にインドが棄権票を投じたため、米国から批判が出ている。
◆反射利益は誰に生じるのか
ロシアに加えられた制裁は、ロシア製武器を購入してきた国に導入先の変化を強要している。しかし導入先の変更による恩恵は米国がすべて受けるわけではない。米国は武器輸出価格が高く、規定も非常に厳しい。販売を要請した国に要求する点も多く、さらに能力を制限したりもする。
アラブ首長国連邦(UAE)は、米国が中国ファーウェイ(華為)の5G通信網導入に懸念を表し、独自の運用を制限すると明らかにしたことで、F35導入交渉を中断した。このためフランスとラファール戦闘機80機導入という大規模な契約を締結した。
米国から大規模な軍事援助を受けたエジプトとイラクも米国製武器から遠ざかっている。エジプトとイラクの空軍のF-16戦闘機は、中距離空対空ミサイルと精密誘導武器運用能力がない。エジプトはラファール戦闘機を、イラクはパキスタンと中国が共同開発したJF-17戦闘機の導入を決定した。
イスラエルも一部の利益を得ている。イスラエルはインドと無人機やミサイルなどの分野で協力している。2020年に国交正常化したUAE、モロッコと地対空ミサイルなど多様な武器販売交渉を行っている。
中国にも恩恵がある。中国はサウジアラビア、UAE、エジプトなどに無人機を販売した。最近、サウジアラビアが中国の支援を受けて独自の弾道ミサイル生産を準備しているという分析があり、UAEは自国に武器禁輸措置を取ったイタリアの代わりに中国からL-15軽戦闘/訓練機を導入することにした。モロッコも中国版S-300と呼ばれるFD-2000B地対空ミサイルを導入することにした。
韓国はUAEと天弓II地対空ミサイル契約を締結し、エジプトとはK9自走砲販売契約に成功した。しかしロシア製武器が抜けた空白を占めるには緻密な販売戦略と市場で売れる武器を開発する必要がある。武器輸出は性能だけで成立するわけではないため、積極的な外交・軍事戦略も求められる。
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