「あなたが地獄で焼かれることを願う」。

アフガニスタン・カブール国際空港で発生した自爆テロで死亡した米軍将兵１３人の遺体が故国に戻った先月２９日。デラウェア州ドーバー空軍基地に遺体が到着すると、ある将兵の遺族が滑走路から遠く離れたところにいたバイデン大統領に向かってこのように叫んだ。

バイデン大統領がジル夫人とブリンケン国務長官、オースティン国防長官、ミリー統合参謀本部議長ら軍首脳部とともに軍輸送機で到着した１３人の遺体が車両に載せられる場面を４０分間ほど立って見守った後だった。


バイデン大統領は行事の前に各遺族と個別面談をしたが、この時も雰囲気が良くなかったと、ワシントンポスト（ＷＰ）は伝えた。ある遺族は、バイデン大統領の発言は台本を読むようで皮相的だった、と指摘した。

別の遺族は、バイデン大統領が亡くなった長男ボー・バイデン氏の話をあまりにも長くして戸惑ったと伝えた。時計に何度も目を向ける姿に不満を吐露した遺族もいた。

自身の経験から悲嘆に暮れる人を慰めるのに優れたバイデン大統領だ。その共感能力はトランプ前大統領に勝利して当選するのに決定的に寄与した。そのバイデン大統領がアフガニスタンからの退避中に自爆テロで死亡した戦死者の遺族からはなぜ共感を得られなかったのか。ＷＰとニューヨークタイムズ（ＮＹＴ）は、バイデン大統領が戦争中に自爆テロで死亡した米軍将兵を慰めながら、６年前に脳腫瘍で死去した長男ボー氏の話をしたことを敗着に挙げた。バイデン大統領は今回、死亡した将兵の話を聞こうとせず、先に死去した長男の話に重点を置いたというのが遺族の話だ。

死亡した海兵隊員ジェラード・シュミッツ氏の父マーク氏は、バイデン大統領が息子についてばかり話し、戦死した軍人にはそれほど関心を見せなかった、と伝えた。

マーク氏は「私は大統領と大統領の息子に起きたことより、私の息子のことに集中していた」とし「大統領を侮辱するわけではないが、子どもを忘れることができずそのように長い時間を過ごすのは適切でないようだ」と話した。

また、バイデン大統領の長男は戦争中に命を落としたわけでないのに、あたかも息子がイラク戦争で戦死したように話す姿に戸惑ったという反応もあった。

バイデン大統領の長男はデラウェア州防衛軍所属でイラク戦争に参戦し、帰国後に２０１５年に脳腫瘍で死去した。戦死でなく病気で死去したが、バイデン大統領が「果てしない戦争」を終わらせるべきだとしてアフガニスタンからの軍撤収を主張するたびに言及し、この日、遺族にも似た話を繰り返した。

ＮＹＴは、バイデン大統領は６年が経過しても長男に対する記憶を強く抱き続けている、と伝えた。各種演説、ホワイトハウス会議、さらに外国首脳と会談でどんなテーマが出ても長男と結びつけて話すということだ。私的な対話で長男の話をしながら現在の時制で話したり、メキシコ大統領との画像首脳会談で長男のロザリオを取り出して見せたりもした。

バイデン大統領が行政府を構成する際、長男の「影響」が作用したりもした。ランニングメイトとして選択したカマラ・ハリス副大統領は、長男がデラウェア州法務長官だった当時にカリフォルニア州法務長官を務めた縁がある。

バイデン大統領はハリス氏を副大統領候補として発表しながら「ボーがどれほどカマラ氏と彼女の仕事を尊敬していたか知っている。率直にいうと、私がこの決定を出す時、こうした点が私には非常に重要だった」と話した。「ボーの意見以上に価値があると考える意見はない」と語った。

オースティン国防長官はボー氏がイラクで服務した当時に縁を結んだ。カトリック信者のオースティン長官はミサでボー氏の隣に座っていたと、ＮＹＴは伝えた。バイデン大統領はブティジェッジ運輸長官については「ボーとよく似ていた」と話したりした。

バイデン大統領は１月、就任式出席のため自宅があるデラウェア州を離れる前、デラウェア州防衛軍本部で演説した。ボー氏の名前にちなんだ建物だった。

ここでバイデン大統領は目に涙を浮かべながら「私は一つ後悔がある。大統領としてその長男を紹介すべきだが、ここにはもういない」と語ったと、ＮＹＴは伝えた。

バイデン大統領がこれまで他人の痛みに共感できたのは、自身が原因提供と関係がないケースだったため可能だったという分析もある。例えば、トランプ前大統領が新型コロナ対策を徹底しない間に多数の犠牲者が出ると、バイデン氏は家族や友人を亡くした人たちと積極的に痛みを共有した。

しかしアフガニスタンからの軍撤収中にテロで死亡した将兵はバイデン大統領による軍撤収決定と作戦実行過程で命を落としたケースであり、責任を避けがたい。ホワイトハウスは「バイデン大統領と遺族の面談は私的な対話であり追加で確認する事項はない」と話した。