サムスン電子の李在鎔（イ・ジェヨン）副会長が拘束されて２０７日ぶりとなる１３日出所し、サムスン電子は「トップの不在」という不確実性をある程度解消できるようになった。９日、サムスン電子と経済界によると、まずサムスンの「経営・投資の時計」が速まるものとみられる。

まず当面の懸案である米国投資が速度を上げるものとみられる。サムスン電子は５月１７０億ドル（約１兆８７５５億円）を投じて米国にファウンドリ（半導体委託生産）工場を建てると発表した。テキサス州（オースティン・テイラー）、ニューヨーク州（ジェネシー）、アリゾナ州（グッドイヤー・クイーンクリーク）が「求愛」しているが、サムスン電子は４カ月間最終決定を下すことができずにいる。財界関係者は「李副会長の仮釈放の根拠の一つが大規模の投資に対する迅速な意志決定であるため、サムスンが早いうちに米国投資を結論を出すものとみられる」と見通した。

中長期的には過去数年間停滞した成長を高め、き損された市場・技術のリーダーシップを回復すべきという課題を抱えている。一部で論議があったが、多くの専門家は「サムスン電子は実際の危機状況」と分析する。李副会長が初めて拘束された２０１７年以降サムスン電子の実績は停滞している。昨年の売り上げは２３６兆８０００億ウォンで、２０１７年（２３９兆６０００億ウォン）に比べ１．２％減り、営業利益は３２％も縮小した。好況と不況を繰り返すサイクルがあるが、半導体（ＤＳ）部門の売り上げと営業利益は同期間にそれぞれ４．７％、４７％減少した。スマートフォンを担当するＩＴ・モバイル（ＩＭ）部門も４年間売り上げと営業利益がそれぞれ６．６％、３％減った。


何よりサムスン電子はメモリー半導体で「世界最初」のタイトルを相次いで競争会社に奪われた。米国マイクロンはサムスンに先立ち、４世代ＤＲＡＭの量産を始め、昨年１１月には業界で初めて１７６層ＮＡＮＤフラッシュを公開した。ファウンドリでは世界１位である台湾ＴＳＭＣとの格差がさらに広がっている。韓国半導体ディスプレイ技術学会のパク・ジェグン会長は「ＴＳＭＣは２０２４年２ナノ量産のために今数十兆ウォンをつぎ込んでいる」として「サムスンがさらに遅く始めれば、最初から全くついていけないかもしれない」と警告した。

スマートフォン市場では中国企業が追い上げている。今年４－６月期におけるサムスン電子の世界スマートフォン市場シェアは１８～１９％だった。アップルを抜いて２位にのぼったシャオミとの格差は２％ポイントに過ぎない。

ソウル大学経営学科のイ・ギョンムク教授は「李副会長が新事業の開発や大規模の合併・買収（Ｍ＆Ａ）など成長に貢献する大きな意思決定をしなければならない」と話した。高麗（コリョ）大学経営学科のチョ・ミョンヒョン教授も「失われた超格差を回復するのが（李副会長の）最も重要な任務」と強調した。

一方、李副会長は１３日釈放されても登記役員を務めることができず海外出張も制限される。３年前とは状況が違う。李副会長は２０１８年２月執行猶予を言い渡され、釈放されて２日ぶりに経営委員会を招集して山積した懸案を解決した。その後、３カ月間人工知能と電気装置部品事業などのために世界各地に出張を行ってきた。ある財界関係者は「法務部が明らかにした通り、（仮釈放には）新型コロナの長期化にともなう経済危機の克服が考慮されたため、李副会長が働くことができるように就職制限を緩和した方が良い」と話した。