ニューヨーク市長のゾーラン・マムダニ氏。ロイター=聯合ニュース
マムダニ氏は1991年、アフリカ・ウガンダの首都カンパラで生まれた。インド系ムスリムの家庭で育ち、7歳の時に米ニューヨークへ移住した。ブロンクス科学高校を卒業後、名門ボウディン大学(メーン州)でアフリカ研究を専攻した。ニューヨークでは常に「境界人」だった。白人社会ではムスリム移民、黒人社会ではインド系という立場で、いずれも主流からは距離があった。
ヒップホップ好きだった彼は20代の頃、「ミスター・カルダモン(Mr. Cardamom)」の名でラッパーとして活動した。カルダモンはインドや中東、アフリカで使われる香辛料だ。ニューヨークの移民社会や若者の暮らしを歌詞に込めて歌った。ラッパーとしての経験は、後にマムダニ氏の魅力を高める要素となった。
「政治家」としての本格的な歩みは、大学卒業後にニューヨークへ戻ってから始まった。借家人の権利運動団体で住宅相談員として活動したことがきっかけだった。若手活動家時代に積んだ現場経験は、既成政治家には容易にまねのできない財産だった。2020年のニューヨーク州下院議員選挙に立候補し、初当選を果たした。
全国的な知名度を得るきっかけとなったのは、2025年の民主党ニューヨーク市長選だった。マムダニ氏は大型体育館で演説する代わりに、地下鉄駅や公園、地域の商店街を回って有権者と直接対話した。数千人のボランティアが各家庭のドアベルを鳴らし、有権者を説得した。テレビCMの代わりにTikTokやInstagram、YouTubeショートを積極的に活用した。米政治専門メディア「ポリティコ(Politico)」は「マムダニ氏はテレビ時代の政治家ではなく、スマートフォン時代の政治家だ」と評価した。
さらに際立っていたのは、そのメッセージだった。「ニューヨークは物価が高すぎる」という言葉は、選挙期間を通じて一貫したスローガンだった。イデオロギーではなく、市民の日常生活を語った。
「借家人は一生懸命働いても家賃を払えない。バス料金すら負担になる。親は子どもを保育施設に預けることもできない。市長がこうした問題を解決できないのであれば、公的部門が乗り出すべきだ」
彼が掲げる民主社会主義は、国家が経済を統制する体制ではない。市民が最低限の生活を維持できるよう、政府がセーフティーネットを整えるという考え方だ。住宅家賃の凍結、バス料金の無料化、公営食料品店の導入といった公約も、その延長線上にある。
ニューヨーク市長への当選は終わりではなく始まりだ。予算や議会、利害関係者という現実に向き合わなければならない。マムダニ氏は代表公約である「住宅家賃の凍結」に早速着手した。トランプ氏と共和党はその機会を逃さず、ニューヨークをマムダニ流の進歩主義政治の「実験室」と位置付けた。記録的な猛暑が続いていた今月初め、ニューヨーク市は市民に対し、エアコンの設定温度を華氏78度(摂氏25.6度)にするよう呼びかけた。保守陣営は「社会主義はエアコンの温度まで決める」と批判した。
民主党の胸中は複雑だ。一方では、マムダニ氏をバーニー・サンダース氏以来最も影響力のある民主社会主義政治家と評価し、次世代の指導者として育てようとしている。しかし、民主党がホワイトハウスを奪還するには、進歩派だけでなく中道層の支持も必要だ。マムダニ氏はバーニー・サンダース氏のように時代を揺さぶった政治家として残るのか、それともバラク・オバマ氏のように時代を変えた政治家として記録されるのか。
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