【グローバルフォーカス】イラン戦争が拡大させた地政学の変動性
では、現在中東で続いている軍事作戦とエネルギー危機の長期的余波をどのように眺めるべきなのか。予断するのは難しいが、今後、数世代にわたり影響を与える可能性も排除できない。明らかな点は経済、政治、地政学的な余波が数年間持続するという点だ。
まず、今回の戦争がもたらしたエネルギー危機は戦争の展開方向と関係なく当分は続くだろう。今回攻撃を受けたカタール、サウジアラビア、イランのエネルギーインフラ施設は復旧に数年かかる。ペルシア湾を通過する石油とガスに対するリスクプレミアムが付き、供給多角化の需要が高まり、市場の心理的余波はこれよりはるかに長く続くとみられる。戦争前に1バレルあたり72ドルだった原油価格が今年または来年中にその水準に下がるのは難しそうだ。
多くの民主主義国家の選挙で物価高が主な議題に浮上している時点にこれは国内政治にも大きな影響を及ぼす。オーストラリアではかつて嘲笑されていた少数極右政党ワン・ネイション(One Nation)党が28%の支持を受け、連立野党の支持率を越えた。英国でもナイジェル・ファラージ・リフォームUK党首の人気が高まり、支持率が野党第一党の保守党を上回っている。
米国では保守陣営に打撃を与えている。トランプ大統領の支持率は米国の歴代現大統領が戦争初期に受けた支持率のうち最低値の40%水準だ。インフレと経済に対する否定的な世論が41%にのぼる。共和党は11月の中間選挙で下院の敗北が予想されたが、今では上院までが厳しい状況だ。民主党が議会多数党になれば関税から移民にいたるまでトランプ大統領のすべての政策は打撃を受ける。オーストラリアと欧州で極右が力を得ているが、米国の極右は内部分裂と支持基盤の弱化に直面している。
今回の戦争による地政学的な影響はまだ明らかでない。戦争以前から中国、ロシア、イラン、北朝鮮(CRINKs)間の同盟強化と影響力拡大のための巨大な流れがあり、これに対抗してアジアをはじめとする米国の同盟国は抑止力確保のためにより一層強く結束した。ところが今回の戦争で中・ロ・朝・イラン間の協力が弱まり、集団安保レベルではない点が表れた。標的情報をイランに提供したロシアはエネルギー価格上昇と供給安定化のための制裁緩和で利益を得た。短期的にこれはウクライナと欧州の安保に危機となり得る。中国は慎重に接近中だが、おそらく自国のタンカーがホルムズ海峡を通過しているうえ、戦争が終わればペルシア湾国家が再建と市場接近のために中国の門を叩くことを知っているからだろう。
イラン軍の力量と戦略的影響力が深刻な打撃を受けた点は中・ロにも悪材料だ。特に戦争後も米軍資産がまたアジアに集中すればなおさらだ。一部でいわれる、イラン戦争で米国の「アジア回帰」政策は終わったという主張には同意できない。イラン戦争は何よりも米国-欧州関係に大きな打撃を与えた。NATO同盟国はトランプ大統領のグリーンランド併合の動きと欧州嫌悪政策ですでに憤慨した状態だった。トランプ大統領は開戦前にNATOと協議せず、イラン戦争は欧州の経済・安保に持続的な悪材料として作用するだろう。
アジア同盟国は米国の関心と軍資産が中東に集中することを懸念している。3月19日に開催された米日首脳会談でトランプ政権は依然としてアジア同盟国との強固な関係に優先順位を置いているという点を確認した。高市早苗首相はトランプ大統領に紛争の早期終結とエネルギー危機の収拾を要請した。中国や北朝鮮が同盟間の「破裂音」を期待していたとすれば失望したはずだ。
マイケル・グリーン/豪シドニー大米国研究センター長/CSIS副理事長
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