現代自動車の大型フラッグシップ電気自動車「アイオニック9」。[写真 現代自動車]
業界によると、エンジン車の販売中断が現実化する場合、自動車メーカーだけでなく部品業者まで連鎖打撃が避けられない。業界関係者は「新型電気自動車開発、電動化工程導入、電気自動車専用部品供給網などをすべて備えるには物的・時間的余裕がない」と吐露した。10年以内に業界の体質を変えるのは容易でないという説明だ。
環境部は24日に開かれた「2035年国家温室効果ガス輸送部門縮小目標(2035NDC)」討論会で、2035年の輸送部門の温室効果ガス排出量を2018年と比べ最大65%減らす案を提示した。目標達成に向けては2035年の自動車累積登録台数約2800万台のうち、電気自動車や水素燃料車などエコカーの割合を35%(980万台)まで引き上げなければならない。
韓国自動車モビリティ産業協会(KAMA)によると、8月基準で自動車累積登録台数2643万4692台のうちエコカーは86万3474台で割合は3.3%にすぎない。わずか10年ほどの期間で割合を10倍以上増やさなければならない。このため環境部はエンジン車販売制限を検討している。環境部の金星煥(キム・ソンファン)長官は19日の討論会で、「2035年か2040年にエンジン車販売を中断する決定もしなければならないだろう」と話した。
業界は難色を示している。自動車モビリティ産業連合会(KAIA)は26日、「エコカー980万台の目標は100%エコカーだけ販売しなければ達成できない」と指摘した。昨年韓国で販売された新車163万5520台のうちエコカーは15万521台で9.2%だがこれを100%まで引き上げるのは事実上不可能という主張だ。
特に中堅3社は状況がより厳しい。韓国GMは韓国でエンジン車だけ生産・販売しており、ルノーコリアは電気自動車販売モデルが「セニック」1種類だけだ。KGモビリティも「トレスEV」と「ムッソEV」の2種にすぎない。電動化ラインナップが不足しエンジン車規制に衝撃を受ける可能性が高い。
「アイオニックEV」など電気自動車ラインナップを持つ現代自動車・起亜は比較的状況が良いが安心するには早い。これからは韓国市場で電気自動車の強者である中国ブランドの強力な挑戦を受ける可能性が大きいからだ。BYDは1月に新車販売を始め、ジーカーや小鵬は今年韓国法人を設立し韓国進出にスピードを出している。今後リ・オート、リープモーター、シャオミなども韓国に進出する可能性がある。
韓国自動車研究院のイ・ハング諮問委員は「韓国の自動車業界はエンジン車販売禁止時点を2040年と予想して準備してきたがこれより5年前倒しされ混乱が大きくなっている。その隙間に中国ブランドが積極的な販売戦略で割り込んでくる可能性が大きい」と予想する。
雇用問題も避けられない。現代自動車グループは下半期に年産15万台の起亜華城(ファソン)EVOプラント、来年上半期に年産20万台の現代自動車蔚山(ウルサン)新工場を竣工し電気自動車生産を拡大する計画だ。これに対しエンジン車生産は徐々に減る見通しだ。業界では既存のエンジン車ラインの人材が遊休人材に転換されるとみる。電気自動車はエンジン車より20~30%少ない人材で生産が可能で、新規採用規模もやはり縮小される可能性が大きい。
部品業界の危機感も大きい。エンジン、変速機、排気システムなどエンジン車部品メーカーは販路が減るほかない。それでも電気自動車生産体制に転換するには投資余力が不足する。業界によると、部品企業の95.6%は中小・中堅企業で、電気自動車、水素自動車、ハイブリッドカーなどのエコカー部品を生産する企業は15~18%にとどまる。
同様の理由でエンジン車を主に生産する国ではエンジン車販売禁止に対する反発が強い。ドイツのメルツ首相は欧州連合(EU)の2035年エンジン車新規登録禁止規制に対し最近「2035年の期限を断念せよ」と促した。米国はカリフォルニア州が2035年からエンジン車の新車販売を禁止しようと計画したが、トランプ大統領が電気自動車税額控除制度を廃止するなどエンジン車中心に政策を旋回している。
産業研究院のチョ・チョル選任研究委員は「NDC達成を電気自動車普及台数にだけ合わせれば韓国の自動車産業全般に否定的影響を与えかねない。電動化転換に向けた研究開発費支援と国内生産促進に向けた税制優遇を積極的に検討してこそ雇用への衝撃など影響を最小化できる」と提言した。
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