国防部は4日、「わが軍はこの日から対北拡声器の撤去を始めた」と公示した。この日、軍関係者が対北朝鮮拡声器の撤去作業をしている。 [写真 国防部]
国防部は4日、「わが軍は今日から対北拡声器の撤去を始めた」とし「これは軍の対応態勢に影響がない範囲内で南北間の緊張緩和に役立つ実質的な措置を施行するものだ」と明らかにした。
軍事筋によると、今回の撤去は最前方軍事境界線(MDL)近くに設置した24個の固定型対北朝鮮拡声器が対象だ。16個の移動型拡声器は昨年末から事実上運営していない。この日から数日間かけてすべての固定型拡声器を撤去するというのが国防部の説明だ。
国防部の関係者は「北との事前協議はなかった」と説明した。対北朝鮮拡声器放送の中断と同じく先制的に撤去を決めたという説明だ。これに先立って李在明(イ・ジェミョン)政権は発足から1週間後の6月11日午後2時に拡声器放送を中断した。軍当局はこの時から撤去も検討していたという。
ただ、北朝鮮の行動の変化なく先制措置を続ける場合、むしろ北朝鮮の手法に巻き込まれるという懸念も少なくない。特に対北朝鮮拡声器放送は北朝鮮の「最高尊厳」を直接批判する内容であり、北朝鮮当局が特に敏感に反応する代表的な非軍事的措置に挙げられる。政府が保有する数少ない実効的な対北朝鮮カードということだ。
北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)労働党副部長は先月28日の談話で「李在明政権がいくら同族のようなふりをしながら正しいことをするように騒いでも、韓国に対するわが国の対敵認識は変わらない」と主張した。このため政府が「南北信頼措置」を前面に出して拡声器カードを先になくしてしまえば、今後、北朝鮮がまた汚物風船などで挑発してもこれを再び取り出す名分が弱まるという懸念もある。これに対し国防部の関係者は「状況を予断しない」とだけ述べた。
政府が速戦即決で拡声器放送中断→撤去を決めたのは、李大統領の公約事項である9・19南北軍事合意の効力復元に向けた事前整地作業とみる余地もある。これに先立ち尹錫悦政権は昨年6月4日、9・19軍事合意全体の効力停止を国務会議で議決した後、国家安全保障会議(NSC)を開いて拡声器設置・放送再開を決定したが、李在明政権は復元のための手続きを踏んでいる可能性がある。
政府は今月に予定された韓米乙支フリーダムシールド(UFS)連合演習の実動訓練(FTX)の一部を9月に延期することも検討している。これに対し、李大統領が8・15演説などで前向きな対北朝鮮構想を出すための雰囲気形成レベルという見方もある。
金与正副部長の談話に呼応するように「韓米連合演習調整」カードを出した鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官はこの日、ソウル鍾路区曹渓寺(チョゲサ)で大韓仏教曹渓宗総務院長のジンウ僧侶と会い、軍当局の拡声器撤去措置について「崩れた信頼を立て直す措置の一つ」と述べた。「金正恩(キム・ジョンウン)委員長も強対強、善対善を強調してきたため、我々が先にすれば北側も応じると考えられる」と話しながらだ。
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