米国のドナルド・トランプ大統領。[写真 AP=聯合ニュース]
最も明確な事例はトランプ大統領が4月2日に「解放の日」関税と命名した、世界のほぼすべての国を対象にした相互関税発表だった。ダウ平均は1日で5%以上下がり、4営業日で12.4%急落した。結局トランプ大統領は関税施行の90日猶予を宣言し、市場はすぐに反騰した。90日の猶予期間が満了する7月9日を控え関税施行は再び8月1日に延期された。
当初TACO理論はトランプ大統領の関税発表で株価が下がれば買い、猶予発表で売る取引現象を説明する用語としてウォール街の投資家の間に広がった。そのうち大衆的に知られトランプ大統領に臆病者または予測不能のイメージが重ねた。「尻ごみする(chicken out)」という表現が強烈だからだろう。
だがこうしたトランプ大統領の姿勢は状況認識に対する敏感性と理解することもできる。市場の反応に耳を傾け過度な水準のようなら衝撃を緩和するために行動するのは、むしろ気まぐれに政策を進めているわけではないということの傍証だ。トランプ大統領は長期にわたり米国から利益を得た国に高率の関税を課して経済的に補償を受け、海外に出て行った製造業も帰ってくることを望む。しかしこの過程でインフレ、雇用減少、株価下落などの副作用は避けられない。TACOはこの中でバランスを取るためのそれなりの方便として作用する。高率関税の公約を守りながらも景気下降を防ぎ、事業者が備えられる時間も稼げるので関税猶予は戦略にできる。度重なる猶予はこれから訪れるクリスマス特需に対する関税負担を大きく和らげるだろうという分析も出ている。
TACOは相手国を圧迫する効果もある。新たな期限設定は貿易合意に対する圧力として作用する。ルールを変えられるのはトランプ大統領1人ということを強調する装置だ。米国に最大限のレバレッジを与える。高い関税をちらつかせた後に延期を発表するのは米国に有利な交渉にする戦術という分析が出ている理由だ。
一方ではトランプ大統領のコミュニケーション方式をうかがうことができる。8月1日に関税を延期する発表を控え各国と交渉中の商務省や米通商代表部(USTR)など関連省庁で交渉時間が足りないという報告をホワイトハウスに上げたという。これを受け入れたのはトランプ大統領が参謀と内閣の意見を傾聴するという意味と理解できる。一匹狼の将軍イメージとは違い、少なくとも偏向した主張を展開するユーチューブやソーシャルメディアだけ見て国政を率いるのではないようにみえる。
TACOが繰り返される現実的な理由もある。トランプ大統領は4月に関税施行を90日猶予し「90日以内に90件のディール」という野心に満ちた目標を立てた。高率の関税を突きつけられた貿易国が米国との交渉を切実に望んで列を作れば速戦即決で交渉し米国に有利な取引ができるだろうという趣旨だった。現実は違った。現在までホワイトハウスが「ディールが成立した」と明らかにした国は英国とベトナム程度だ。それすらも伝統的な意味の貿易合意とみられるディールではないというのが専門家らの見方だ。
5月に最初に発表した英国との貿易合意は英国製自動車の関税を27.5%から10%に引き下げ、米国産牛肉に対する英国の市場開放拡大などを盛り込んだ。だが両国の公式発表でもわかるように今後交渉を通じて合意すべきことがもっと多い。今月初めにはベトナムと2番目の合意を発表した。ホワイトハウスはベトナム産商品の関税を46%から20%に下げる暫定貿易合意に達したと明らかにしたが、文書化された細部事項は公開されなかった。発表するほどの水準に達するディールの姿はその時ごとに違うようだ。20日ほど残った韓国の交渉期間中にトランプ大統領が望むレベルをパスできるほどのディールは、実質よりも戦略に重きを置かなければならないかもしれない。
パク・ハニョン/経済選任記者
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