自身が製作した製品に愛情を感じて、さらに高い価値を付与する心理的現象をイケア効果（ＩＫＥＡ　ｅｆｆｅｃｔ）という。自分で作った本箱、クマのぬいぐるみ、ミールキット（料理セット）などが、熟練者が作った製品よりも優れた品質を持つと感じる。イケア効果を最初に紹介したハーバードビジネススクールのマイケル・ノートン教授は自身の苦労が加わった製品は客観的な評価が難しい愛着の対象となり、より大きない満足感と所有感を与えると説明する。

最近ノースウェスタン大学のジェイコブ・テニー教授チームが発表した「生産の楽しみ（Ｐｒｏｄｕｃｔｉｏｎ　Ｅｎｊｏｙｍｅｎｔ）」に関する研究も興味深い。製品またはサービス生産の楽しみが消費者の反応と価格の受け入れに及ぼす影響を多角的に分析した研究だ。検索エンジン管理専門家がフェイスブック広告で「私は経験が豊か」より「私はこの仕事が本当に楽しい」と表現する時、広告クリック率が４０％以上高かった。別の実験では配管工が「パイプの修理が誰よりも好き」と話す時、「誰よりも熱心に働く」という広告より信頼が高く、料金を多く受ける人と評価された。このほか、バーテンダー、トリマーなど多様な職群で生産の楽しみを表現すれば、消費者が期待する品質と支払う価格が高まった。


楽しみは購買者だけでなく生産者本人の価格設定にも影響を及ぼした。フリーランサープラットホームのアップワークはサービス提供者に難易度が似た作業のうち楽しい仕事とそうでない仕事を選択させた後、該当作業に対する最低受け入れ価格を提示させた。その結果、楽しさを感じる作業は平均時給より低い価格でも受諾する意向があり、楽しくない業務は平均より高い金額を要求することが明らかになった。例えばロゴデザインが好きな場合、平均３０ドルや２５ドルでも仕事をすると答え、報告書の要約を楽しまないフリーランサーは平均時給の３０ドルより高い３３ドルを要求した。


すなわち、生産の楽しみが消費者と提供者に発揮する効果は非対称的だ。生産者が仕事が好きで楽しむという情報は、消費者により良い品質の製品とサービスを期待させ、さらに高い価格を快く負担させる。これは興味を感じて集中する作業であるほど結果の完成度が向上するという没入（ｆｌｏｗ）理論とも通じる。一方、生産者は作業の過程で経験した楽しみ自体が内在的補償となり、金銭的補償に対する期待水準を低める。

ティニー教授は生産の楽しみ効果が現実で十分に活用されていないと指摘する。製品またはサービス提供者がどれほど仕事を楽しむかに言及する比率がアップワークでは４％、手芸品販売サイト「Ｅｔｓｙ」では０．１％にすぎなかった。韓国国内のフリーランサープラットホームも作業の速度や便利性中心の広告が大部分だ。仕事に対する愛情と作業の楽しみを伝えれば、購買者は結果の価値をさらに高く評価し、販売者はより高い価格設定が可能になる。生産の楽しみ効果は個人事業者や中小企業はもちろん、大企業もブランドの信頼とイメージの向上に活用することができる。


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