韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が22日、ソウル漢南洞(ハンナムドン)官邸で開かれた与野党指導部との昼食会合で発言している。[写真 大統領室写真記者団]
姜由楨(カン・ユジョン)報道官は22日午後、書面ブリーフィングを通じて「大統領は就任以降の山積した国政懸案にもかかわらず、今回のNATO首脳会議出席を最大限積極的に検討してきた」とし「これまでさまざまな国内の懸案や中東事態による不確実性などを総合的に考慮して、直接出席することは到底できない状況だと判断した」と明らかにした。「その他政府要人の代理出席問題はNATO側と協議する予定」としながらだ。
前日でさえ、李氏のNATO首脳会議出席はほぼ確定的な雰囲気だった。水面下では最近主要7カ国首脳会議(G7サミット)で、米国のドナルド・トランプ大統領の早期帰国により取りやめとなった韓米首脳会談を再び準備する流れも感知された。
◇中東事態で韓米会談調整が困難か…NATO不参加へ急旋回
だが、苦心の末に結局不参加に旋回したのは、トランプ氏がイラン核施設3カ所に空爆を行ってイスラエル-イラン紛争に事実上参戦することになったことが大きな影響を及ぼしたとみられる。戦争を自ら指揮することになったトランプ氏の出席が不透明になったうえ、出席しても中東関連の懸案が急激に変化している状況で、別途の韓米首脳会談が思うように運ばない可能性もある。
与党高位関係者は「首脳会議期間中の韓米首脳会談実現を保証できないという状況判断が李大統領の不参加決定の背景になったと理解する」とし「韓米首脳会談開催困難のリスクを甘受してまで出席するには国内の懸案あまりにも多いと判断した」と説明した。中東事態で国際原油価格の上昇を含めて経済不安が高まっており、国内的余波を考慮する場合、長官人選などを早く済ませたほうがよいという判断もはたらいたということだ。
また、NATO首脳会議に出席する以上は該当の事案に立場を明らかにすることが避けられないことも政府の立場としては少なくない負担だ。このためNATO舞台が李氏の「中東発外交」の試金石になるだろうとの見方があった。
韓国政府の悩みは、これに先立って発表した立場にもにじみ出ている。韓国外交部は22日、米国のイラン核施設空襲に対して「(韓国)政府は核不拡散の観点でイラン核問題の解決を重視しており、イラン内の核施設攻撃関連の事態についての動向を鋭意注視している」とし「政府は地域内の緊張が早期緩和されることを願い、このために国際的な取り組みに引き続き参加していくだろう」と明らかにした。
空爆についての直接的な評価は避けながらも、空爆の「名分」そのものには共感を表わしたとみることができる。特に韓国政府が「核不拡散の観点」を強調した背景は、韓国も北朝鮮の核の直接的な脅威を受けている当事者という点が作用したとみられる。
ただし、米国がイラン内の核施設を爆撃したのは「武力」を動員したイラン核問題の解決を試みたということだ。米国が直接的な脅威を受けていない状況で、これを自衛権発動次元と認定することができるのかどうかを巡り、国際法的論争の余地が大きい。ところが北朝鮮に対する軍事オプションまで仮定しなければならない韓国が、これに対して何の立場も明らかにしていないことになる。
これに先立ち、13日イスラエルのイラン空爆直後、韓国外交部は「政府はイスラエルのイランに対する攻撃などで中東地域の緊張が急激に高まっていることに対して深刻な懸念を表明し、状況を悪化させるすべての行動を糾弾する」とし、原因提供者をイスラエルとする雰囲気だったが、ここでも変化した立場が見て取れる。
新政権発足直後の外交的リスクを最小化しようという趣旨と考えることができるが、李氏のNATO首脳会議不参加はまだ方向性が明確化されていない「李在明式実用外交」に国際社会のクエスチョンマークがつきかねないという懸念も出ている。これは目前の難しい外交的課題を一時的に脇に置いたにすぎないうえに、出席を通じて得る外交的実益も小さくないためだ。
まず不拡散問題が国際的な議題に浮上したことは、NATOの優先順位の外にあった北朝鮮の核問題も重く扱われる可能性があるという点で非核化外交の動力を確保することができる良い機会だった。同時にロシアと密着して3回目の派兵まで約束した北朝鮮の歩みなどに対して、国際社会に直接的な懸念を表明して共感を得ることもできた。李氏の不参加を米国がどのような意味に解釈するかも未知数だ。
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