10日(現地時間)、趙兌烈(チョ・テヨル)外交部長官がシリアの首都ダマスカスでアフメド・アル・シャラア大統領と握手している。 [写真 外交部]
2011年の「アラブの春」を契機にアサド政権に反旗を翻したHTSは昨年12月に首都ダマスカスを掌握した。政府軍がまともに抵抗もできず慌てた「ダマスカスの屠殺者」アサドは後援国のロシアに逃走した。1970年のクーデターで執権した父ハーフィズ・アル=アサド以来54年続いた父子世襲独裁政権が幕を下ろした。
韓国は北朝鮮と修交してきたキューバと昨年2月に外交関係を結び、今回シリアとの修交に成功したことで、北朝鮮を除いたすべての国連加盟国と修交する大記録を築いた。趙兌烈長官はその瞬間を「マムリ(仕上げ)ホームラン」と表現した。北中米と中東の海外工作核心拠点を失った北朝鮮は外交的孤立に向かうだろう。実際、血盟のアサド政権の崩壊当時、現地の北朝鮮大使館はあたふたと撤収した。
北朝鮮と似た点が特に多いシリア独裁政権の没落は北朝鮮に実存的不安感を与えるようだ。アサド政権と北朝鮮は金日成(キム・イルソン)主席時代から親密な関係を続けてきた。1970年代からシリア軍は北朝鮮製武器で武装し、1990年代には大量破壊兵器(WMD)を共に開発した。2010年代に入って両国は戦時でなく平時に反人道的犯罪を繰り返し、国連人権調査委員会が構成されるほど悪名高かった。
アサド政権の最大後援国がロシアだったように北朝鮮政権も昨年6月に朝ロ同盟条約(包括的戦略パートナーシップ)を締結し、有事自動軍事介入条項まで盛り込んでロシアに命運をかけた。アサドと金正恩は海外留学をしたという共通点もある。
シリア内戦中に自国民を化学兵器で虐殺したアサド政権は崩壊直前までロシア・中国・イランの保護を受けた。例えば2011年から18年まで国連安保理がシリア政府の化学兵器使用疑惑に対する真相調査をしようと12回も提出した決議案に対し、ロシアは毎回、中国は6回、拒否権を行使した。イランは親イラン路線のレバノン武装組織ヒズボラまでシリア内戦に投入し、アサド政府軍を支援した。ロシアは民間人を区別しない無差別空襲でシリア政府軍に火力を支援した。アラブ連盟はアサド政府軍が内戦で勝機をつかむと、2023年にシリアを連盟会員として12年ぶりに受け入れた。
そのアサド政権があっという間に崩壊したのは予想できなかった中東情勢の急変だった。2023年10月、親イラン性向のパレスチナ武装組織ハマスがイスラエルを奇襲攻撃したイスラエル・ハマス戦争がそれだ。当時、アラブとイスラエルのデタントの動きで窮地に追い込まれたハマスが流れを変えようとした。しかし「第2の独立戦争」を宣言したイスラエルはガザ地区でハマスを制圧したのに続き、レバノンのヒズボラ勢力までも除去した。
その過程でハマスとヒズボラの後ろ盾となってきたイラン革命防衛隊も深刻な打撃を受けた。HTSがダマスカスに向かって進撃する時、イランはアサド政権を助ける余力がなかった。ウクライナ戦争中のロシアも無気力だった。親イランのハマスによる奇襲挑発が親イランのアサド政権の没落につながっただけに、「中東のバタフライ効果」ということだ。
外部勢力の駆け引きで点火したシリア独裁政権の急激な没落を見ながら、トランプ米大統領の親ロの動きと強力な対中圧力が北朝鮮にどんな影響を及ぼすかが気になる。朝ロ軍事同盟を生存戦略の核心とする北朝鮮は米国とロシアの蜜月関係がどこまで進展するのか注視するはずだ。トランプ大統領の親ロ・反中大戦略が北朝鮮と韓半島(朝鮮半島)に超大型台風をもたらす可能性がある。韓国とシリアの修交は明らかに祝うべき外交的事件だが、国際情勢はますます予測不可能になっている。外交・安保当局が警戒して多角的に備えなければいけない理由だ。
チャン・ジヒャン/峨山政策研究院地域研究センター長
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