先週末、暖かい春を楽しむ人たちをあちこちで見ることができた。昨年12月3日の非常戒厳宣言以降の落ち着かない雰囲気の中で発生した務安(ムアン)空港衝突事故など相次ぐ大事故、過去最悪の山火事、そしてトランプ米大統領の関税戦争などで国民は不便な時間を過ごさなければならなかった。金曜日の憲法裁判所の弾劾決定で政治的危機を一つ乗り越えたことで、国民は春の訪れを今になって感じているようだった。
4カ月間にわたり韓国社会を分裂させた事件に対し、合理的で常識的な、そしてバランスが取れた判断を下した憲法裁に敬意を表する。さらにその決定がもう一つの混乱につながらないよう全員一致で判決が出たことにも安堵する。多くの心配があったが、弾劾賛否集会に参加した人たちの大半がその決定に承服し、物理的衝突も起きなかった。今回の政治危機が大規模な暴動や暴力事態につながらず憲政秩序を通じて解消されたという点で、韓国の民主主義の回復力も見せた。とにかく憲法裁の最終判決と同時に、これまで社会を押さえつけていた不確実性の影からひとまず抜け出すことができた。
しかし憲法裁の判決にもかかわらず、これがこれまでの混乱と対立を終えて新しい政治に進む契機になるという希望は与えていない。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が消えたからといって今回の政治的危機をもたらした原因が同時にすべて消えたとは見なせないからだ。もしかすると我々の社会は弾劾判決と同時に本来の位置に戻ったのかもしれない。政治が当然やるべきことができず大統領は超法規的・違憲的決定を下し、その事態を収拾するのに4カ月間、憲法の時間を過ごさなければならなかった。
憲法裁が判決文で指摘したように大統領と野党、国会と行政府の間の葛藤は力でなく政治で解決するべきだったが、そのようにできないため葛藤がここまで深まった。憲法裁の判決後もこの問題は依然として解決されずに残っている。激烈な政争と極端な分裂をもとらした与党と野党の政治はそのままであり、独善的な大統領が消えたからといって彼らが見せる政治が以前と大きく変わるわけでもない。
憲法裁の弾劾決定で6月初めにまた大統領選挙が行われる。大統領選挙を通じて新しい大統領が選出されても、それが和合と統合の政治に進む契機になるとも考えにくい。この数年間の政治を振り返ると、選挙過程での競争と争いは選挙後にむしろ激しくなる政争の出発点になり得るからだ。今回もわずかな得票率の差で勝敗が分かれる可能性があるが、勝者がすべてを握る現制度の下で妥協と協力を可能にする連合の政治は期待しにくい。一方はすべてを掌握しようとするはずであり、別の一方それを奪おうとする深刻な葛藤が大統領選挙後に繰り返される可能性が高い。過去2、3年間に見せた激しい対立の政治が再現されれば、今回経験した政治危機が再発しないという保証はない。その場合、今回の非常戒厳および弾劾の危機を経験しても実情は何も変わっていないということだ。
今回の危機克服過程を通じて、我々の社会は民主主義に対する国民の強い念願、多くの軍人の勇気ある自制、そして我々の民主主義の復原力を見せた。しかし政治制度のレベルで見ると、弾劾は当初から推進されてはならない残念な事件でもある。それで今回の弾劾決定は我々の政治システムがこれ以上まともに作動しないという故障信号と見ることができる。230年間ほど大統領弾劾がなかった米国とは違い、我々は過去10年間に2人の大統領を弾劾した。極めて例外的な場合を想定して作られた弾劾制度が我々にはもう特別なものではなくなり、今後も大統領弾劾はいつでも起こり得るものになった。
それだけ我々の大統領制の安定性は弱まり、政治リーダーシップの基盤も弱まった。またこのようなことを経験する場合、その時は今回とは比較にならないほど大きな混乱と社会的費用を支払うことになるかもしれない。
今は改憲で大統領1人支配体制を変え、選挙制度の改正で多党的政治構造を作り出さなくてはならない状況になった。今回、禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長が改憲を提案した。禹議長が提案したように憲法改正特別委員会を構成し、国会が改憲作業を主導していくのがよい。今回の憲法裁の判決で我々の社会が危機局面からひとまず抜け出したが、それが危機を招いた根本的な原因の解消や分裂・対立の終息を意味するわけではない。憲法裁の判決はむしろ政治革新で政治を根本的に変えるべきという政界に対する峻厳な叱責だった。今はまた政治が答える番だ。
康元沢(カン・ウォンテク)/ソウル大国家未来戦略院長/政治外交学部教授
4カ月間にわたり韓国社会を分裂させた事件に対し、合理的で常識的な、そしてバランスが取れた判断を下した憲法裁に敬意を表する。さらにその決定がもう一つの混乱につながらないよう全員一致で判決が出たことにも安堵する。多くの心配があったが、弾劾賛否集会に参加した人たちの大半がその決定に承服し、物理的衝突も起きなかった。今回の政治危機が大規模な暴動や暴力事態につながらず憲政秩序を通じて解消されたという点で、韓国の民主主義の回復力も見せた。とにかく憲法裁の最終判決と同時に、これまで社会を押さえつけていた不確実性の影からひとまず抜け出すことができた。
しかし憲法裁の判決にもかかわらず、これがこれまでの混乱と対立を終えて新しい政治に進む契機になるという希望は与えていない。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が消えたからといって今回の政治的危機をもたらした原因が同時にすべて消えたとは見なせないからだ。もしかすると我々の社会は弾劾判決と同時に本来の位置に戻ったのかもしれない。政治が当然やるべきことができず大統領は超法規的・違憲的決定を下し、その事態を収拾するのに4カ月間、憲法の時間を過ごさなければならなかった。
憲法裁が判決文で指摘したように大統領と野党、国会と行政府の間の葛藤は力でなく政治で解決するべきだったが、そのようにできないため葛藤がここまで深まった。憲法裁の判決後もこの問題は依然として解決されずに残っている。激烈な政争と極端な分裂をもとらした与党と野党の政治はそのままであり、独善的な大統領が消えたからといって彼らが見せる政治が以前と大きく変わるわけでもない。
憲法裁の弾劾決定で6月初めにまた大統領選挙が行われる。大統領選挙を通じて新しい大統領が選出されても、それが和合と統合の政治に進む契機になるとも考えにくい。この数年間の政治を振り返ると、選挙過程での競争と争いは選挙後にむしろ激しくなる政争の出発点になり得るからだ。今回もわずかな得票率の差で勝敗が分かれる可能性があるが、勝者がすべてを握る現制度の下で妥協と協力を可能にする連合の政治は期待しにくい。一方はすべてを掌握しようとするはずであり、別の一方それを奪おうとする深刻な葛藤が大統領選挙後に繰り返される可能性が高い。過去2、3年間に見せた激しい対立の政治が再現されれば、今回経験した政治危機が再発しないという保証はない。その場合、今回の非常戒厳および弾劾の危機を経験しても実情は何も変わっていないということだ。
今回の危機克服過程を通じて、我々の社会は民主主義に対する国民の強い念願、多くの軍人の勇気ある自制、そして我々の民主主義の復原力を見せた。しかし政治制度のレベルで見ると、弾劾は当初から推進されてはならない残念な事件でもある。それで今回の弾劾決定は我々の政治システムがこれ以上まともに作動しないという故障信号と見ることができる。230年間ほど大統領弾劾がなかった米国とは違い、我々は過去10年間に2人の大統領を弾劾した。極めて例外的な場合を想定して作られた弾劾制度が我々にはもう特別なものではなくなり、今後も大統領弾劾はいつでも起こり得るものになった。
それだけ我々の大統領制の安定性は弱まり、政治リーダーシップの基盤も弱まった。またこのようなことを経験する場合、その時は今回とは比較にならないほど大きな混乱と社会的費用を支払うことになるかもしれない。
今は改憲で大統領1人支配体制を変え、選挙制度の改正で多党的政治構造を作り出さなくてはならない状況になった。今回、禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長が改憲を提案した。禹議長が提案したように憲法改正特別委員会を構成し、国会が改憲作業を主導していくのがよい。今回の憲法裁の判決で我々の社会が危機局面からひとまず抜け出したが、それが危機を招いた根本的な原因の解消や分裂・対立の終息を意味するわけではない。憲法裁の判決はむしろ政治革新で政治を根本的に変えるべきという政界に対する峻厳な叱責だった。今はまた政治が答える番だ。
康元沢(カン・ウォンテク)/ソウル大国家未来戦略院長/政治外交学部教授
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