物理学にカオス(Chaos)理論がある。混沌現象があっても、その中に存在する規則(秩序)を見つけることができれば、そのシステムを管理することができるという理論だ。混沌の中に存在する規則をアトラクター(attractor)と呼ぶ。
例えば天気を考えてみよう。天気は絶えず変わる。しかし今の現代人は天気変化を予測しながら生きている。天気の変化という混沌(カオス)の規則(アトラクター)は日照時間の変化と気温変化、気圧変化による対流などがある。現代人はこれら規則を利用して天気を予測する。
トランプの再登場は全世界を混沌のるつぼに向かわせる感じだ。関税と中国圧迫はある程度予想されたものだった。しかし隣の友好国に関税爆弾を浴びせ、ウクライナに行く戦争物資輸送船を戻すことまでは想像できなかった。これを仲裁しようとする英国とフランスまでも無視する態度を見せる。
現在、国際社会は混沌状態だ。ここにカオス理論を適用するとどうなるだろうか。規則に該当するアトラクターを探すことができるだろうか。それができるならトランプを予測して対応することができるということだ。
◆トランプを読む2つのキーワード
トランプの行動を分析してみると、2つのキーワードが見える。1つ目は「目の前の利益」であり、2つ目は「中国牽制」だ。短期的な視野で利益を追求する彼の行動は容易に目につく。友好国と連帯して世界経営をする伝統的な戦略も、目の前の利益の前では価値を喪失する。すべての関係を金銭取引の観点で眺める。友好国との連帯のために支出される費用は浪費とみる。
トランプの2つ目のキーワードは中国牽制だ。従来の関税15-30%に20%ポイントを上乗せして、結局35-50%の関税爆弾を浴びせている。米国のカーター大統領時代に国家安全保障担当補佐官を務めたズビグネフ・ブレジンスキーの著書『The Grand Chessboard』を見ると、強大国の世界観がよく表れている。歴史の中で強大国がどのように競争国を牽制したかをみると、現在のトランプの行動が理解できる。
◆世界は巨大なチェスボード
第2次世界大戦後、全世界は理念に分かれて激しく競争した。自由民主陣営は米国を中心に一つになり、共産主義はソ連が中心になった。ソ連の弱化を夢見る米国はソ連と中国の分離を企画した。米国の国務長官ヘンリー・キッシンジャーが1971年に中国を訪問して突破口を開き、翌年にリチャード・ニクソン大統領が中国を訪問して正式に修交の道を開いた。その後、1973年のパリ協定を通じてベトナムからの米軍撤収を約束した。南北に分かれて戦ったベトナムは1975年に完全に共産化された。
1980年代に入ると、共産主義体制の限界点が徐々に表れ始めた。1989年には東欧の数カ国で改革と自由化の波が生じた。西ドイツと東ドイツに分裂していたドイツでも同じだった。東ドイツ市民も立ち上がって改革・開放を叫んだ。統一の機会と考えた西ドイツのヘルムート・コール首相はソ連と米国・東ドイツを奔走し、統一の整地作業をした。
ドイツの統一を支持する国は欧州にはほとんどなかった。しかし米国のジョージ・H・W・ブッシュ大統領(ジョージ・W・ブッシュ大統領の父)の考えは違った。米国も第2次世界大戦当時にドイツと戦ったが、目の前のより大きな敵であるソ連を牽制することがさらに重要だった。米国はミッテラン仏大統領とサッチャー英首相の反対にもかかわらずドイツ統一を支援した。
やはり世界は巨大なチェスボードだ。チェスボードで眺めると、現在のウクライナ状況も見えてくる。米国の最大の課題は中国牽制だ。中国を牽制するためには何でもする。
◆トランプの優先順位は中国牽制
現在、米国の神経に障るのはロシアと中国の密着だ。ロシアを中国から引き離すことができれば米国には非常に良いことだ。ウクライナ戦争を早期に終わらせ、ロシアのプーチン大統領の歓心を買って親しくする。そして利権をつかむ。この利権はウクライナ鉱物資源になるかもしれず、ロシアから欧州へ向かうパイプラインのノードストリーム2になるかもしれない。戦争中に破壊されたパイプラインのノードストリーム2を米国が介入して再開するという噂がある。このチェスボードで英国・フランスなどの友好国は眼中にない。
ロシアは経済的にかなり厳しい。筆者は米国がロシアに利益を提供すれば相当部分は成功するとみる。半面、中国がロシアにできることは特にない。価値外交よりも実利外交が優先だ。
紛らわしいトランプもカオス理論でみると整理される。トランプカオスの規則は目の前の利益と中国牽制だ。ではトランプの2つの規則のうちどれが強力か。筆者の目では中国牽制がさらに強いという気がする。現在トランプが世界の国々に対する態度を見れば読み取ることができる。
【コラム】米国も韓国が必要…「関税爆弾」にも機会はある(2)
例えば天気を考えてみよう。天気は絶えず変わる。しかし今の現代人は天気変化を予測しながら生きている。天気の変化という混沌(カオス)の規則(アトラクター)は日照時間の変化と気温変化、気圧変化による対流などがある。現代人はこれら規則を利用して天気を予測する。
トランプの再登場は全世界を混沌のるつぼに向かわせる感じだ。関税と中国圧迫はある程度予想されたものだった。しかし隣の友好国に関税爆弾を浴びせ、ウクライナに行く戦争物資輸送船を戻すことまでは想像できなかった。これを仲裁しようとする英国とフランスまでも無視する態度を見せる。
現在、国際社会は混沌状態だ。ここにカオス理論を適用するとどうなるだろうか。規則に該当するアトラクターを探すことができるだろうか。それができるならトランプを予測して対応することができるということだ。
◆トランプを読む2つのキーワード
トランプの行動を分析してみると、2つのキーワードが見える。1つ目は「目の前の利益」であり、2つ目は「中国牽制」だ。短期的な視野で利益を追求する彼の行動は容易に目につく。友好国と連帯して世界経営をする伝統的な戦略も、目の前の利益の前では価値を喪失する。すべての関係を金銭取引の観点で眺める。友好国との連帯のために支出される費用は浪費とみる。
トランプの2つ目のキーワードは中国牽制だ。従来の関税15-30%に20%ポイントを上乗せして、結局35-50%の関税爆弾を浴びせている。米国のカーター大統領時代に国家安全保障担当補佐官を務めたズビグネフ・ブレジンスキーの著書『The Grand Chessboard』を見ると、強大国の世界観がよく表れている。歴史の中で強大国がどのように競争国を牽制したかをみると、現在のトランプの行動が理解できる。
◆世界は巨大なチェスボード
第2次世界大戦後、全世界は理念に分かれて激しく競争した。自由民主陣営は米国を中心に一つになり、共産主義はソ連が中心になった。ソ連の弱化を夢見る米国はソ連と中国の分離を企画した。米国の国務長官ヘンリー・キッシンジャーが1971年に中国を訪問して突破口を開き、翌年にリチャード・ニクソン大統領が中国を訪問して正式に修交の道を開いた。その後、1973年のパリ協定を通じてベトナムからの米軍撤収を約束した。南北に分かれて戦ったベトナムは1975年に完全に共産化された。
1980年代に入ると、共産主義体制の限界点が徐々に表れ始めた。1989年には東欧の数カ国で改革と自由化の波が生じた。西ドイツと東ドイツに分裂していたドイツでも同じだった。東ドイツ市民も立ち上がって改革・開放を叫んだ。統一の機会と考えた西ドイツのヘルムート・コール首相はソ連と米国・東ドイツを奔走し、統一の整地作業をした。
ドイツの統一を支持する国は欧州にはほとんどなかった。しかし米国のジョージ・H・W・ブッシュ大統領(ジョージ・W・ブッシュ大統領の父)の考えは違った。米国も第2次世界大戦当時にドイツと戦ったが、目の前のより大きな敵であるソ連を牽制することがさらに重要だった。米国はミッテラン仏大統領とサッチャー英首相の反対にもかかわらずドイツ統一を支援した。
やはり世界は巨大なチェスボードだ。チェスボードで眺めると、現在のウクライナ状況も見えてくる。米国の最大の課題は中国牽制だ。中国を牽制するためには何でもする。
◆トランプの優先順位は中国牽制
現在、米国の神経に障るのはロシアと中国の密着だ。ロシアを中国から引き離すことができれば米国には非常に良いことだ。ウクライナ戦争を早期に終わらせ、ロシアのプーチン大統領の歓心を買って親しくする。そして利権をつかむ。この利権はウクライナ鉱物資源になるかもしれず、ロシアから欧州へ向かうパイプラインのノードストリーム2になるかもしれない。戦争中に破壊されたパイプラインのノードストリーム2を米国が介入して再開するという噂がある。このチェスボードで英国・フランスなどの友好国は眼中にない。
ロシアは経済的にかなり厳しい。筆者は米国がロシアに利益を提供すれば相当部分は成功するとみる。半面、中国がロシアにできることは特にない。価値外交よりも実利外交が優先だ。
紛らわしいトランプもカオス理論でみると整理される。トランプカオスの規則は目の前の利益と中国牽制だ。ではトランプの2つの規則のうちどれが強力か。筆者の目では中国牽制がさらに強いという気がする。現在トランプが世界の国々に対する態度を見れば読み取ることができる。
【コラム】米国も韓国が必要…「関税爆弾」にも機会はある(2)
この記事を読んで…