尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾審判4次弁論期日が23日午後、ソウル鍾路区(チョンノグ)憲法裁判所大審判廷で行われた。 [写真 共同取材団]
◇尹大統領、改めて裁判官忌避申立…野党「新種の法不服戦略」
弾劾審判を受ける尹錫悦大統領側は先月31日、憲法裁判所に「文炯培(ムン・ヒョンベ)憲法裁判所長権限代行、鄭桂先(チョン・ゲソン)・李美善(イ・ミソン)裁判官の公正性が憂慮される」とし、回避要求意見書を出した。先立って鄭桂先裁判官の忌避申立を出して棄却されると、再度「文炯培代行はSNSに『私たちの法研究会』で一番左にいるという事実を誇らしげに記載した」などの理由で「私たちの法研究会」出身の3人の裁判官全員に公正性の是非を提起したのだ。文代行がX(旧ツイッター)で李在明(イ・ジェミョン)民主党代表、金 於俊(キム・オジュン)氏など進歩陣営の人物をフォローしている点も申立の理由として提示した。李裁判官については「実弟が『民主社会のための弁護士会(民弁)尹錫悦退陣特別委員会副委員長』と問題視した。
法曹界では「回避の可能性が高いにも関わらず申請したのは、意図された戦略なのだろう」との見方が出た。支持層が裁判官の性向を問題視する状況で裁判官が「私は問題ない」と申請を拒否すれば「セルフ棄却」や「答えが決まっている審判」という批判が広がりかねないためだ。匿名希望の弁護士は「尹大統領の立場では拒否されても良い構図だろう」とし「裁判官はいずれにせよ公正性の是非にかけられるだろう」と述べた。
尹大統領の支持層は、内乱事件の配当を受けたソウル中央地裁刑事合議25部の裁判長である池貴然(チ・グィヨン)部長判事に対して根拠のない陰謀論攻撃も行っている。保守ユーチューブチャンネルのソ・ジョンウクTV(チャンネル登録者57万人)は先月30日、「名前からして怪しい池貴然判事とは誰か」という動画を掲載した。その前後に各種コミュニティ掲示板にも「名前が華僑のようだ」など地方判事関連の各種虚偽文が広まった。池部長判事はソウル出身で開院(ケウォン)中学校・開浦(ケポ)高校・ソウル大学法学部を卒業し、1999年の司法試験第41回で合格後、空軍法務官としても服務した。
これに対し、共に民主党は「罷免を前提に裁判不服の手順を踏む新種の法不服戦略だ。司法府の揺さぶりを止めろ」〔李建台(イ・ゴンテ)法律報道官〕と尹大統領側を批判した。しかし、昨年12月6日、尹大統領が朴宣映(パク・ソンヨン)真実和解委員長を任命すると、朴賛大(パク・チャンデ)院内代表は、「朴委員長は鄭亨植(チョン・ヒョンシク)裁判官の妻の姉だ」とし、「賄賂だと考える方も多い」とし、姻戚だということを理由に批判した前歴がある。
◇李在明裁判では正反対…与党「野党、判事の悪魔化で国を滅ぼす」
李在明代表の裁判に関しては、攻守がより克明に変わる。李代表も昨年12月、不法対北朝鮮送金疑惑の1審裁判所の水原(スウォン)地裁刑事11部〔申晋于(シン・ジヌ)部長判事〕に対する忌避申請を出し、裁判が完全に止まっている状態だ。同じ事件で起訴された李華泳(イ・ファヨン)元京畿道(キョンギド)平和副知事の1審で懲役9年6カ月の重刑を宣告したため有罪の予断が形成された可能性があるという理由からだった。
民主党は忌避申請前の国政監査(昨年10月)から「李代表に有罪の心証を表わした裁判部が引き続き担当するのが妥当なのか分からない」〔朴均沢(パク・ギュンテク)議員〕と水原地裁所長に裁判部交替を要求した。
支持層も申部長判事弾劾署名運動を展開した。写真と身元を公開し「判事に向けた犯罪が多くなることを願う」という脅迫文も躊躇なく載せた。さらに、公職選挙法違反の1審有罪を宣告したソウル中央地裁刑事34部〔韓聖振(ハン・ソンジン)部長判事〕には、「我々の力を示そう」と大量の嘆願書を送るなど、持続的に力を誇示している。
この時は国民の力が「司法府への脅迫を止めろ」と主張した。昨年11月、当時の国民の力の韓東勲(ハン・ドンフン)代表は「民主党は防弾のために大韓民国の司法システムを2度も壊したが、一度目が検察の捜査権完全はく奪、二度目は判事の脅迫」とし「判事の悪魔化で国を滅ぼしている」と批判した。
◇憲法学者「裁判官への攻撃は民主憲政の信頼を傷つける」
法曹界では裁判官の攻撃で司法不信を助長する行動に憂慮が少なくない。キム・ソンテク〔高麗(コリョ)大学〕、イ・ホンファン〔亜洲(アジュ)大学〕、チョン・グァンソク〔延世(ヨンセ)大学〕ロースクール教授が共同代表を務める「憲政回復に向けた憲法学者会議」は2日、「正当に任命された裁判官を不当な理由で根拠なく攻撃することは、憲法裁判の権威と独立性を揺るがすこと」と述べた。「馬恩赫(マ・ウンヒョク)裁判官候補者任命不作為事件を先に審理することが正しい」という趣旨のコメントを出した。
キム・ソンテク教授は「今回の事件だけに限定される話ではない」とし、「持続的な攻撃で司法部が裁判ができなくなれば、紛争が発生しても平和的解決が難しい国になりかねない」と述べた。
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