他の国なら６０％の報復関税予告に株価が大暴落し、全国が対策の準備で大騒ぎになるだろう。ところが少なくとも表面上、中国は沈黙している。中国がトランプ政権２期目の関税爆弾予告にも泰然自若とする理由は２つある。
一つは、経験が最高の師だ。トランプ１期目に２５％の報復関税を適用し、ファーウェイ（華為）をはじめとする通信企業とＳＭＩＣなど半導体企業が制裁を受けた。しかし４年が経過した今、中国の対米貿易黒字はむしろ増え、制裁を受けたファーウェイとＳＭＩＣは座礁するどころか問題なく生きている。
もう一つは、米国の敵は米国と見ているからだ。「ウォルマート効果」と「アップル効果」を見れば分かる。米スーパーマーケットのウォルマートで販売する工業製品の原産地を見ると６０％が中国産だ。報復関税６０％なら中国の対米輸出は不可能だが、米国の人口３億２０００万人が毎日使用する日常用品を最低価格で供給する代わりの供給先が見えない。高率関税で中国を抑えることはできても、これがブーメランとなって米国の消費者物価も上がる。
◆関税引き上げで物価上がれば自滅
米国で１位のアップルのスマートフォンは９５％以上が依然として中国で生産されている。中国が米国の高率関税に対抗してアップルの中国工場を制裁すれば、アップルの製品供給に支障が生じる。そしてナスダック時価総額１位企業の株価が打撃を受ければ、米国株式市場への波紋は大きい。
米国の「関税の槍」に対抗する中国は８種類の防牌（防御カード）を準備している。＜１＞関税引き上げ対抗作戦を実行する＜２＞通貨切り下げで関税を相殺し、輸出還付金拡大で関税効果を緩和する。＜３＞１２月に中国が半導体産業に使用するガリウム・ゲルマニウムの輸出を統制したようにレアアース（希土類）など核心鉱物の輸出を統制し、米国の先端産業に衝撃を与える。＜４＞輸出不振をカバーする内需拡大にオールインする。政府補助金、税金減免、現金クーポン、国産製品優先購買などのパッケージ政策を実施する。＜５＞中国に進出した米国企業を制裁する。中国に進出したアップル、テスラ、クアルコム、スターバックス、ウォルマート、マクドナルドを制裁する。中国は米国の時価総額１位企業アップル、電気自動車１位企業テスラを制裁する瞬間、米国株式市場を暴落させることができるとみる。＜６＞欧州・韓国・日本など米国でない国の企業を優待する。＜７＞迂回輸出基地を開拓する。従来はメキシコを通して迂回輸出したとすれば、今後は中南米・ＡＳＥＡＮ・欧州を通じて新しい迂回路を開く。＜８＞中国の一帯一路参加国、グローバルサウス国家、地域的な包括的経済連携（ＲＣＥＰ）国家に輸出を拡大し、対米輸出の減少を埋める。
◆中国の対米貿易比率が急減
２０００年の中国の対米輸出比率は２１％だったが、２０２４年１０月の累計では１５％に減少した。２０２４年基準で中国の輸出が国内総生産（ＧＤＰ）に占める比率は１９．６％だ。米国の６０％報復関税で中国の対米輸出がゼロになる場合、中国のＧＤＰ（２０２３年５．２％）は２．９％ポイント下落する可能性がある。
中国は対米輸出減少による衝撃を内需活性化と米国以外の地域への輸出多角化で解決することができる。２０２３年の中国ＧＤＰで消費の比率は５６％だったため、消費を５％ポイント増やせばＧＤＰが２．８％ポイント増加する。したがって米国の対中輸出報復関税による輸出減少が中国経済に致命的な影響を与えるのは難しいだろう。昨年１２月１２日の中央経済工作会議で、今年の中国は歴代最大規模の財政金融政策で内需拡大にオールインすると発表した。
中国の習近平国家主席の立場では、米国の貿易攻撃よりも１４億人の人民の視線をさらに恐れるようだ。米国の圧力に屈服するという印象を与えてはいけないからだ。トランプ氏も中国叩きに関税を武器として使うが、中国が対抗すれば米中ともに影響が大きい。
韓国は中国から資源と部品を輸入して加工した後、米国に売る構造だ。米国が対中輸出を統制して中国が資源を統制すれば、韓国は双方から打撃を受ける状況を迎えかねない。外国人が売り越しとなるのは、米中貿易戦争の代表的な犠牲が韓国と見ているからだ。
「鶏を殺して猿を脅す（殺鶏嚇猴）」という故事成語がある。「変則ボクサー」のトランプ氏は中国をすぐに叩く正攻法でなく、中国を抑えるためにカナダとメキシコを「鶏」として利用している。トランプ氏は就任する前から米国の隣国のカナダとメキシコに中国と同じ２５％の報復関税をかけると脅迫した。
◆韓国はサプライチェーン死守に命かけるべき
アジアでは中国が米国に対応するため韓国を「鶏」として利用する可能性があるだ。半導体とバッテリーを米国に輸出して貿易黒字を出す韓国は、半導体素材の４０％、バッテリー素材の８０％以上を中国から輸入する。米国の圧力に対応するために中国は韓国に対する半導体素材とバッテリー素材の輸出を減らし、米国の情報技術（ＩＴ）企業と電気自動車に致命的な影響を及ぼして米国を締めつける可能性がある。
韓国は突然の大統領の１２・３非常戒厳宣言で政界が大混乱しているが、変則ボクサーのトランプ氏とコードを合わせるタイミングを逃せば「トランプストーム」を避けるのが難しくなる。
取引に優れているトランプ氏の対中関税爆弾カードの額面だけを見ていれば、韓国は失敗するかもしれない。歴代最大の韓国の対米黒字は、米国産の石油や武器を迅速に大量購入して貿易黒字を減らさなければいけない。韓国にとって中国は原材料サプライチェーンの生命線であり、中東のように管理する必要がある。トランプ２期目の米中貿易戦争で韓国がトランプ氏と習近平主席の「鶏」に転落する危機は必ず避けなければいけない。技術は米国に依存して素材と市場は中国に依存する韓国の立場で二股をかけることは選択でなく必須だ。
チョン・ビョンソ／中国経済金融研究所長
一つは、経験が最高の師だ。トランプ１期目に２５％の報復関税を適用し、ファーウェイ（華為）をはじめとする通信企業とＳＭＩＣなど半導体企業が制裁を受けた。しかし４年が経過した今、中国の対米貿易黒字はむしろ増え、制裁を受けたファーウェイとＳＭＩＣは座礁するどころか問題なく生きている。
もう一つは、米国の敵は米国と見ているからだ。「ウォルマート効果」と「アップル効果」を見れば分かる。米スーパーマーケットのウォルマートで販売する工業製品の原産地を見ると６０％が中国産だ。報復関税６０％なら中国の対米輸出は不可能だが、米国の人口３億２０００万人が毎日使用する日常用品を最低価格で供給する代わりの供給先が見えない。高率関税で中国を抑えることはできても、これがブーメランとなって米国の消費者物価も上がる。
◆関税引き上げで物価上がれば自滅
米国で１位のアップルのスマートフォンは９５％以上が依然として中国で生産されている。中国が米国の高率関税に対抗してアップルの中国工場を制裁すれば、アップルの製品供給に支障が生じる。そしてナスダック時価総額１位企業の株価が打撃を受ければ、米国株式市場への波紋は大きい。
米国の「関税の槍」に対抗する中国は８種類の防牌（防御カード）を準備している。＜１＞関税引き上げ対抗作戦を実行する＜２＞通貨切り下げで関税を相殺し、輸出還付金拡大で関税効果を緩和する。＜３＞１２月に中国が半導体産業に使用するガリウム・ゲルマニウムの輸出を統制したようにレアアース（希土類）など核心鉱物の輸出を統制し、米国の先端産業に衝撃を与える。＜４＞輸出不振をカバーする内需拡大にオールインする。政府補助金、税金減免、現金クーポン、国産製品優先購買などのパッケージ政策を実施する。＜５＞中国に進出した米国企業を制裁する。中国に進出したアップル、テスラ、クアルコム、スターバックス、ウォルマート、マクドナルドを制裁する。中国は米国の時価総額１位企業アップル、電気自動車１位企業テスラを制裁する瞬間、米国株式市場を暴落させることができるとみる。＜６＞欧州・韓国・日本など米国でない国の企業を優待する。＜７＞迂回輸出基地を開拓する。従来はメキシコを通して迂回輸出したとすれば、今後は中南米・ＡＳＥＡＮ・欧州を通じて新しい迂回路を開く。＜８＞中国の一帯一路参加国、グローバルサウス国家、地域的な包括的経済連携（ＲＣＥＰ）国家に輸出を拡大し、対米輸出の減少を埋める。
◆中国の対米貿易比率が急減
２０００年の中国の対米輸出比率は２１％だったが、２０２４年１０月の累計では１５％に減少した。２０２４年基準で中国の輸出が国内総生産（ＧＤＰ）に占める比率は１９．６％だ。米国の６０％報復関税で中国の対米輸出がゼロになる場合、中国のＧＤＰ（２０２３年５．２％）は２．９％ポイント下落する可能性がある。
中国は対米輸出減少による衝撃を内需活性化と米国以外の地域への輸出多角化で解決することができる。２０２３年の中国ＧＤＰで消費の比率は５６％だったため、消費を５％ポイント増やせばＧＤＰが２．８％ポイント増加する。したがって米国の対中輸出報復関税による輸出減少が中国経済に致命的な影響を与えるのは難しいだろう。昨年１２月１２日の中央経済工作会議で、今年の中国は歴代最大規模の財政金融政策で内需拡大にオールインすると発表した。
中国の習近平国家主席の立場では、米国の貿易攻撃よりも１４億人の人民の視線をさらに恐れるようだ。米国の圧力に屈服するという印象を与えてはいけないからだ。トランプ氏も中国叩きに関税を武器として使うが、中国が対抗すれば米中ともに影響が大きい。
韓国は中国から資源と部品を輸入して加工した後、米国に売る構造だ。米国が対中輸出を統制して中国が資源を統制すれば、韓国は双方から打撃を受ける状況を迎えかねない。外国人が売り越しとなるのは、米中貿易戦争の代表的な犠牲が韓国と見ているからだ。
「鶏を殺して猿を脅す（殺鶏嚇猴）」という故事成語がある。「変則ボクサー」のトランプ氏は中国をすぐに叩く正攻法でなく、中国を抑えるためにカナダとメキシコを「鶏」として利用している。トランプ氏は就任する前から米国の隣国のカナダとメキシコに中国と同じ２５％の報復関税をかけると脅迫した。
◆韓国はサプライチェーン死守に命かけるべき
アジアでは中国が米国に対応するため韓国を「鶏」として利用する可能性があるだ。半導体とバッテリーを米国に輸出して貿易黒字を出す韓国は、半導体素材の４０％、バッテリー素材の８０％以上を中国から輸入する。米国の圧力に対応するために中国は韓国に対する半導体素材とバッテリー素材の輸出を減らし、米国の情報技術（ＩＴ）企業と電気自動車に致命的な影響を及ぼして米国を締めつける可能性がある。
韓国は突然の大統領の１２・３非常戒厳宣言で政界が大混乱しているが、変則ボクサーのトランプ氏とコードを合わせるタイミングを逃せば「トランプストーム」を避けるのが難しくなる。
取引に優れているトランプ氏の対中関税爆弾カードの額面だけを見ていれば、韓国は失敗するかもしれない。歴代最大の韓国の対米黒字は、米国産の石油や武器を迅速に大量購入して貿易黒字を減らさなければいけない。韓国にとって中国は原材料サプライチェーンの生命線であり、中東のように管理する必要がある。トランプ２期目の米中貿易戦争で韓国がトランプ氏と習近平主席の「鶏」に転落する危機は必ず避けなければいけない。技術は米国に依存して素材と市場は中国に依存する韓国の立場で二股をかけることは選択でなく必須だ。
チョン・ビョンソ／中国経済金融研究所長
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