宣言から６時間後の解除まで、尹錫悦（ユン・ソクヨル）大統領の３日深夜の非常戒厳発令はいくつかの疑問点がある。尹大統領がなぜ戒厳令カードを取り出したのか、誰がこれを知っていたのか、数時間後に解除したのは何のためかなどだ。

＜１＞「沖岩派」金竜顕国防長官が注入？　尹大統領特有の即興的性格？

多くの国民にとって戒厳令は教科書に登場する歴史的遺物のような言葉だった。９月１日、最大野党・共に民主党の李在明（イ・ジェミョン）代表が与野党代表会談の途中、戒厳令準備疑惑に言及すると、大統領室は直ちに「ねつ造された情報」「洗脳させる扇動」と強く否認した。しかしわずか３カ月後、合理的な疑心だったことが確認された。


与党では尹大統領を戒厳に導いた核心人物として沖岩（チュンアム）高１年先輩の金竜顕（キム・ヨンヒョン）国防部長官を挙げる。複数の出席者によると、金長官は尹大統領に戒厳宣言を建議し、戒厳宣言の前に開かれた国務会議で尹大統領と共に戒厳の必要性を強調した。

８月の電撃的な外交安保ライン人事に対しても「戒厳状況まで念頭に置いた布石」という分析が出ている。就任直後から警護処長だった金竜顕長官が国防部に移り、国防部長官だった申源湜（シン・ウォンシク）国家安保室長は大統領室に席を移した。与党関係者は「金竜顕を国防部長官に移したのも戒厳令のためだったようだ」と話した。

戒厳法上、国防部長官とともに大統領に戒厳を建議できる李祥敏（イ・サンミン）行政安全部長官も沖岩高出身だ。この２人は特に尹大統領との関係が格別であり、大統領室でも「尹大統領と政権が終わるまで一緒に歩む人」と見なされていた。

尹大統領特有の即興的な性格がこうした事態を招いたのではという分析もある。最近「二極化打開」を集中的に強調してきた尹大統領は、戒厳令宣言の前日、参謀らに内需・消費活性化のための特段の対策を注文した。そして突然、戒厳令を取り出したのだ。尹大統領は２０２１年７月３０日、当時の李俊錫（イ・ジュンソク）国民の力代表がソウル不在の時に「李俊錫スルー」という声を招く電撃入党をし、それ以降「重要な決定を即興的にする」という批判を受けてきた。与党関係者らによると、尹大統領は普段からも「戒厳をやってしまおうか」という話を時々していたという。

＜２＞「金建希夫人も知らなかった」…極秘裏に進行

複数の関係者によると、尹大統領が３日午後１０時２３分に緊急談話を始める直前まで、大統領室の参謀陣の大半は戒厳宣言状況を知らなかった。鄭鎮碩（チョン・ジンソク）秘書室長さえも戒厳令発令が迫ってから関連情報を共有したという。国務会議出席者の大半も会議が始まってからこれを知った。

尹大統領と親しい与党関係者は「金建希（キム・ゴンヒ）夫人も戒厳宣言を知らなかった」と伝えた。与党の幹部にも計画を隠した状態で金竜顕長官などごく少数だけが極秘裏に戒厳を準備したのだ。別の与党関係者は「金夫人があらかじめ知っていれば問題はここまで大きくなっていなかっただろう」と話した。

戒厳が解除された後にも意思疎通がないのは同じだった。これまで尹大統領を擁護してきた親尹派議員も「尹大統領と連絡が取れず、理由を分からない」「竜山の参謀も知らなかったのに、我々がどうやって知るのか」という反応を見せた。

＜３＞戒厳軍を過信？　意図的な「オーバーアクション」？

最大の疑問は尹大統領がわずか６時間後に水の泡となることを実行した理由だ。与党からは戒厳令の性格上保安に没頭して実行力が落ちた可能性が提起されている。戒厳軍の核心の役割をする軍指揮官も談話の前まで全く知らなかったという証言がある。首都圏の主要司令官は「布告文が出たのを見て知った」とし「私も当惑している」と話した。

尹大統領が戒厳軍の実行力を誤認した可能性もある。３日の深夜の状況でも軍兵力より野党議員が先に国会に集結した。

一部の人たちは「尹大統領は最初から警告に傍点を打って行った」と主張する。与党関係者は「尹大統領が国会と武力衝突が生じないよう戒厳宣言の１時間後に軍隊を出動させ、投入された軍兵力に空砲弾を支給したり、弾倉を除去するよう指示したと聞いている」とし「立法暴走をする野党に警告しようとしたのであり、実際に国会を掌握しようとしていればこのようにしただろうか」と主張した。