◆米国版「イデナム」がトランプ友軍勢力？

アイオワ州立大のステファン・シュミット教授（政治学）は「この１カ月間に民主党は楽観主義と肯定性を取り戻した」とし「ブラック・ジョイは、黒人の米国人が抑圧と差別の歴史にとどまらず、さらにより良い未来のために楽観的に仕事をするベきという考えの一部として、黒人の投票率を引き上げる主な要因になるだろう」と述べた。

ハリス氏が「ブラック・ジョイ」、すなわち喜びという感情を選挙戦略として活用しているなら、トランプ氏は怒りの感情を通じて反転の機会を摸索中だ。トランプ氏は特に１８－２９歳の男性、いわゆる「米国版イデナム（フェミニズムに否定的な傾向を持つ２０代男性）の集団的な怒りにコードを合わせることで支持率の反騰を狙っている。


実際、１８－２９歳の男女の支持性向は分かれる。ニューヨークタイムズ－シエナ大の８月の世論調査で６つの激戦州を対象に分析した結果、この年齢帯の男性は女性に比べてトランプ氏を１３％ポイント多く支持した半面、女性はハリス氏を３８％ポイント多く支持していることが分かった。

女性の地位上昇などで社会的、経済的に劣勢になり、怒りの感情が強まった若い男性が、相対的に強靭なイメージのトランプ氏に引かれているという分析だ。トランプ氏はこうした「イデナムの怒り」を活用する選挙戦略を展開している。ゲームユーチューバーのアディン・ロスさん（２３）など、いわゆる男性向けユーチューブチャンネルに相次いで出演するのもイデナムの怒りを狙ったものと解釈される。

◆「イデナム支持勢力、白人に限られる」

ただ、トランプ氏のこうした戦略は人種的な限界にぶつかるという指摘もある。シュミット教授は「女性の地位上昇などによる相対的な剥奪感や怒りの感情は若い白人男性をトランプ氏側に誘引する要因になる可能性はある」としながらも「ただ、性別より人種的要因が強い黒人やラテン系、アジア系の若い男性まで引き込むことができるかは疑問」と指摘した。

米政界では１１月５日に行われる米大統領選挙は結局、接戦の中、激戦州の特定集団が結果を左右する可能性が高いという分析が多い。大統領選挙まで残り６４日、「ブラック・ジョイ」を選挙戦略にしたハリス氏が激戦州の黒人の大々的な参加を終盤まで維持できるのか、「イデナムの怒り」を狙うトランプ氏が相対的に傍観傾向の若い男性有権者層を引き込めるのかに関心が集まっている。

チョン・カンヒョン／ワシントン特派員


［グローバルリポート］ハリス旋風を呼んだ「ブラック・ジョイ」…トランプ氏「イデナムの怒り」に期待（１）