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【コラム】崖っぷちの韓国自営業、応急的な現金支援ではいけない

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
最近訪問したソウル黄鶴洞(ファンハクトン)「厨房機器通り」は、客よりも商人の数が多かった。ここは廃業店舗の物品を買い取り、新しく開業する自営業者に売る市場だ。路地は業者用ガスレンジ・シンク台、各種食器・什器、テーブル・椅子などが積まれているだけで、これを見に来る人はほとんどいなかった。20年以上も前からここで商売をしているというA社長は「新品の価格の半分以下にしても売れない。深刻な沈滞期にしかなかったことだ」とし「廃業をする人がいれば創業をする人がいてこそここも成り立つが、創業する人が減れば中古取引が成り立たない」と話した。

自営業者の体感景気をのぞくことができる厨房機器通りさえも不況に陥ったというのは、韓国の自営業者がどれほど厳しい時期を送っているかを端的に見せる。実際、直撃弾を受けた自営業の実態は数値で確認できる。昨年廃業申告をした事業者(個人・法人)は98万6487人と、2006年の関連統計集計以降で最も多い。前年比の増加幅(11万9195人)も最大だ。廃業の理由別にみると「事業不振」(48万2183人)が最も多かったが、これは金融危機当時の2007(48万8792人)以降で歴代2番目だ。今年上半期の失業者のうち過去1年間自営業者だった「自営業者出身失業者」は月平均2万6000人と、1年間に23.1%も増えた。前年度の増加率(5.9%)の約4倍だ。事業不振で商売をあきらめて失業者になった自営業者がそれだけ多いということだ。

現在は就業者のうち自営業者が占める比率が20%を下回るのが「ニューノーマル」になるほど自営業の生態系も縮小している。4-6月期基準で自営業者は566万8000人と、全体就業者数(2883万9000人)の19.65%だった。昨年10-12月期の19.89%、今年1-3月期の19.74%に続いて過去最低記録を四半期ごとに更新している。自営業者の比率が20年前には27%を超えていたことを勘案すると隔世の感を禁じ得ない。


実際、自営業者の比率は経済が高度化するほど減少する傾向がある。韓国の自営業者の比率が米国(6.6%)、ドイツ(8.7%)、日本(9.6%)など主要先進国の2、3倍水準であることを考慮すると、今後、比率はさらに下がるだろう。問題は良質の職場が増えたことによる自営業減少傾向ではないという点だ。

最低賃金引き上げによる人件費負担、不動産価格上昇による賃貸料負担で収益性が悪化して久しい。さらに新型コロナ事態による営業制限や消費沈滞の影響が大きかった。その後、各種材料費の上昇が商売をさらに難しくし、物価を抑えようとして引き上げた金利は融資で持ちこたえていた人たちを崖っぷちに追い込んだ。自営業者の立場では売上と費用が同時に厳しい状況を迎えることになったのだ。

自営業の危機は自営業者だけの問題にとどまらない。勤労人口のうち自営業者の比率が高い韓国経済の特性上、自営業の危機は景気沈滞の結果であると同時に原因にもなる。「内需不振→自営業者減少→消費・雇用打撃→内需不振」と続く悪循環だ。現在は元利金償還猶予や満期延長などで「人工呼吸器」を付けているが、延滞が深刻になれば金融圏の健全性も脅かされる。

もちろん政府も放置しているのではない。その間、どの政府も多様な自営業支援政策を出してきた。現政権も中小企業の融資負担を減らし、電気料金・配達費など固定費を支援する25兆ウォン(約2兆7500億円)規模の支援策を出した。しかしこれは当面の危機を免れる「時間稼ぎ」に終わるしかない。

実際、自営業危機の根底には構造的な問題がある。韓国は準備なく創業を始める生計型の自営業者が多い。技術基盤の創業よりも飲食・宿泊業の比率が高く、景気の影響を受けやすい。フルーツ飴「タンフル」の人気が高まると、1年間に1000店舗以上のタンフル店がオープンし、人気が低下すると次々と廃業危機を迎える現実はどう見ても自然でない。

構造的な危機は構造的な処方で対応しなければいけない。自営業の減少が自然な産業構造調整の結果につながるようにする必要がある。今は危機でも今後は事業をうまく進めていくところなら、単純な支援よりも競争力の向上に焦点を合わせなければいけない。より多くの雇用を創出するよう経営効率化を助ける形だ。生計型自営業者には安全網を提供するべきだが、無分別な支援などモラルハザードを呼ぶ措置は警戒すべきだろう。出口戦略も必要だ。競争力が落ちた事業者は店舗整理と債務再調整を支援し、新しい職場に移れるよう再教育・求職プログラムを稼働することが求められる。根本的に「むやみな創業」を防ぐためには、企業がより多くの良質の雇用を創出できるよう政治・社会的環境をつくる必要がある。

ソン・ヘヨン/経済部長



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