◆テスラも参入した「１４億人の実験室」

自動運転システムを開発中の企業にとって人口１４億人の中国は巨大な実験室と変わらない。国営新華社通信によると、２０２０年に湖南省に車と車、車と道路の通信を円滑につなぐ「第５世代（５Ｇ）自動運転スマート高速道路」の開通を始め、昨年９月基準で試験道路が全国的に１万５０００キロを超えた。

米テスラも参入した。国営英字紙チャイナデイリーは８日、テスラが中国で自社のロボタクシーをテストすることを提案したと報じた。先月末に中国を予告なく訪問したイーロン・マスク最高経営責任者（ＣＥＯ）が自社の完全自動運転（ＦＳＤ＝Ｆｕｌｌ　Ｓｅｌｆ　Ｄｒｉｖｉｎｇ）技術を中国国内のタクシーに搭載する案について意見を求めたということだ。ロイター通信の報道によると、テスラはギガファクトリーが位置する上海でのテストの申請を考慮している。


これに先立ち今年初め、マスク氏は８月８日にロボタクシーを出す計画だと明らかにしていた。マスク氏の訪中期間に合わせて、テスラのモデル３とモデルＹは中国当局のデータ安全検査で「適合」判定を受けた。外資企業では初めてだ。ＦＳＤを中国市場で出すうえで最も大きな障害を乗り越えたということだ。テスラは２０２０年にＦＳＤベータバージョン１を出した後、現在レベル３段階のバージョン１２．３まで発展させてきた。

◆越えるべき限界、少なくない

中国は米国と共に完全自動運転の商用化に最も近い国に挙げられる。昨年９月、安全要員がいない「完全無人」テストサービスが導入された。米国は２０２２年、すでに道路交通安全局が完全自動運転車の手動制御装置装着義務化規定を削除した。

運転席もなく運転者もいない自動車に乗る世の中に一歩ずつ近づいているが、依然として越えるべき課題が山積している。その一つが自動運転中に発生した事故に対する法的責任問題だ。米国では昨年から自動運転車が事故を何度か起こしている。市民がロボタクシーを燃やすなど反感が強まっている。

人工知能にすべてを任せるシステムでサイバー攻撃やハッキングから安全に車を守れるかも疑問だ。心理学者のゲリー・マーカス米ニューヨーク大教授はブルームバーグのインタビューで「自動運転ＡＩにディープラーニングをさせるのは一種の暗記」とし「変数が無限大に近い道路上の状況にすべて対処するのは理論的に実現不可能だ」とし、完全な自動運転に懐疑的な見方を示した。


運転席・運転者が消える…中国「１４億人実験室」の自動運転競争（１）