金泳三(キム・ヨンサム)大統領夫妻が1996年9月、アルゼンチンのメネム大統領との首脳会談後に贈り物として受けたエルメスのハンドバッグ [大統領記録館]
◆大統領の贈り物になるには「職務遂行・保存価値」が条件
大統領室は1月、「大統領夫妻への贈り物は大統領個人が受け取るのではなく関連規定に基づき国家に帰属し、管理、保管される」という理由でブランドバッグを大統領記録物として扱って保管中だ。2022年9月にチェ・ジェヨン牧師がソウル瑞草区(ソチョグ)アクロビスタ地下で金氏に渡した300万ウォン(約34万円)相当のディオールバッグや香水などを請託の媒介や賄賂とは関係がない贈り物と規定したということだ。
大統領記録物に指定できる対象は大統領記録物法に条件が明示されている。この法によると、大統領記録物となる大統領贈り物とは「大統領の職務遂行に関連して国民(国内団体を含む)から受けた贈り物で国家的保存価値がある贈り物および公職者倫理法第15条に基づく贈り物」でなければいけない。また公職者倫理法15条は「公職関連団体の役職員またはその家族が外国団体を含む外国から受けた贈り物で、現金を除いて代価なく提供される物品およびこれに準ずるもの」を大統領記録物に指定できる贈り物と規定している。
大統領室の説明と違い、政界はブランドバッグが大統領の職務遂行と関係があるのか、国家的保存価値があるのかという疑問を表した。国民の力の金雄(キム・ウン)議員は1月、「ディオールのバッグが大統領記録物に該当するのならギャラリア百貨店名品館は博物館」と話した。MBCは1月末、ブランドバッグを国庫に帰属させることになった理由などに関する情報公開を請求したが、2月初めに大統領室が非公開決定通知書を送ったと報じた。
◆首脳会談・国賓晩餐会後に受けたエルメス大統領記録物
チェ牧師が米国市民権者という点を考慮しても、金氏が受けたブランドバッグを国家首脳級が交わした大統領記録物法上の贈り物と見ることができるのかという疑問も出てくる。文化観光部で管理してきた大統領贈り物を初めて大統領記録物に編入した2010年2月の大統領記録物法制定・改定の趣旨からみて釈然としないということだ。当時、法の制定・改定理由には「大統領記録物に大統領が外国政府の首脳などから受けた贈り物も含め、展示など活用の根拠を用意」するためとなっている。
現在大統領記録館が保管中の計1万6000点余りの贈り物には金泳三(キム・ヨンサム)大統領夫妻が1996年9月にアルゼンチンのメネム大統領との首脳会談後に贈り物として受けたエルメスのハンドバッグ、金大中(キム・デジュン)大統領夫妻が2000年3月にシラク仏大統領夫妻が準備した国賓晩餐会に出席して受けたエルメスの木製トレイなどがある。
◆請託禁止法・大統領記録物法ともに処罰規定なし
法的には金氏が処罰される余地はほとんどないというのが法曹界の見方だ。請託禁止法第22条(罰則)によると「授受禁止金品などを公職者またはその配偶者に提供したり、提供の約束または意思表示をした者」は3年以下の懲役または3000万ウォン以下の罰金となる。授受と授受約束に対する処罰はなく、受けた物品を申告しない場合に限り処罰される。大統領記録物法第30条(罰則)にも大統領記録物を審議なく廃棄したり国外搬出、損傷・隠匿・滅失したりすることに対する処罰規定だけがある。元検事の弁護士は「法で解決するのが難しい事案という点を考慮すると、検察の悩みも大きいはず」とし「検察がどういう結論を出そうと、結局は政治的論争のきっかけを提供するとみられる」と話した。
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