このところ米ウォール街では電気自動車メーカーのテスラが袋だたきの状況だ。今年初めに248ドルに達した株価が最近は172ドル水準まで大きく落ち込んだ。今年に入り30%ほど下落した。米投資銀行のウェルズ・ファーゴはテスラに対し「成長のない成長株」と酷評した。その上で投資判断を従来の「ニュートラル」から「アンダーウエート」に調整した。目標株価も200ドルから125ドルに37.5%も下げた。UBSも目標株価を225ドルから165ドルに下げた。もちろんテスラが過度に低く評価されているとして「いまはタオルを投げる時ではない」という専門家もいるが、昨年とは雰囲気が全く異なる。テスラに対して投資判断を提示したウォール街のアナリスト50人のうち36%の18人だけ株式を買うべきとする意見を出した。米投資メディアのバランスは「CEOリスク」が大きくなっているとし、テスラが今後30%さらに落ち込みかねないと警告したりもした。
昨年までもテスラは海外株式投資家の希望だった。年初108ドルにすぎなかった株価は1年間で248ドルと1.3倍の上昇となった。当時販売不振の恐れがあったテスラは積極的な割引で世界の電気自動車市場に価格競争の燃料を投じて火を付けた。在庫を処理するための苦肉の策だが効果は良い方だった。営業利益率は以前より低くなったが自動車業界と比較すると上位に属した。昨年の電気自動車引き渡し量は前年より38%増えた181万台を記録した。実績は薄氷を歩く雰囲気で株価はジェットコースターのように変動性が激しかったが、積極的な個人投資家のおかげで株価は概ね高止まりした。これに対し、「FOMO(Fear of Missing Out)」に陥った投資家のためという分析が出てきた。取り残される不安のために個人投資家の追撃買いが続いたという診断だ。
だが今年に入って雰囲気が変わった。世界の電気自動車市場の見通しが尋常でない。2021年だけでも100%以上成長した市場が昨年は33%成長するのにとどまり、今年は19%にすぎないという見通しだ。米国では電気自動車転換の速度調節が進んでおりドイツとフランスなど主要国が相次いで電気自動車補助金を中断したり大幅縮小している。米国は昨年4月に二酸化炭素(CO2)排出量を減らすために2032年に米国で販売される新車のうち電気自動車の割合を67%まで増やすことにした。だが最近発表した最終案ではこの割合が56%に低くなった。電気自動車に関心が多い購入者の需要が限界に達して待機需要が減っており、高い電気自動車価格、不完全な充電インフラ、高物価・高金利による消費心理悪化などが重なり需要は冷え込んでいる。こうした現象をめぐりキャズム理論で説明したりもする。新たに開発された製品が一般大衆に受け入れられるまで需要が減ったり停滞したりする現象だ。
こうした雰囲気のためテスラを見るウォール街のまなざしは冷たい。時価総額も米国企業10位圏外に押し出されて12位圏をぐるぐる回っている。個人投資家の損切りも続いている。今年初めだけでもテスラは個人投資家が最も多く買い越した銘柄1位だった。だが2月には2位に押され、今月は7位と大きく落ち込んだ。その穴を人工知能(AI)の皇帝であるエヌビディアが埋めた。今月個人投資家のエヌビディア買い越し規模はテスラの4倍に達する。こうした状況から電気自動車が「キャズム」に勝てず消えるだろうと考える専門家はほとんどない。MP3プレーヤーが市場に出てきた時は注目されなかったが、2000年代にインターネットが普及して人気を呼んだように、時間が必要なだけだ。だがその時間が過ぎれば電気自動車市場は特定会社の独走ではなく多くの会社が激しく競争する「戦国時代」になる可能性が大きい。テスラはすでに昨年、世界の電気自動車販売1位の座を低価格製品を掲げた中国BYDに明け渡した。ここに韓国、米国、ドイツ、日本など既存の自動車メーカーは電気自動車開発に全力を注いでいる。
このところ世界市場では「AIブーム」となっている。AI企業の皇帝と呼ばれるエヌビディアの株価は1年5カ月前だけでも112ドル水準にすぎなかった。いまは950ドルに達し8.5倍水準に上がった。短い期間に株価が急騰したためウォール街では「AIバブル」議論が広がっている。株価がとても高評価されており、2000年代の「ドットコムバブル」と似ているという主張と、技術企業の業績やファンダメンタルズを考慮すれば当時とは違うという反論がぶつかり合う。時間が経てば強風は疾風に変わりいつのまにかそよ風になって私たちのそばにいることになるだろう。AIも同じだ。革新製品が汎用化されれば一般製品になる。
キム・チャンギュ/経済エディター
昨年までもテスラは海外株式投資家の希望だった。年初108ドルにすぎなかった株価は1年間で248ドルと1.3倍の上昇となった。当時販売不振の恐れがあったテスラは積極的な割引で世界の電気自動車市場に価格競争の燃料を投じて火を付けた。在庫を処理するための苦肉の策だが効果は良い方だった。営業利益率は以前より低くなったが自動車業界と比較すると上位に属した。昨年の電気自動車引き渡し量は前年より38%増えた181万台を記録した。実績は薄氷を歩く雰囲気で株価はジェットコースターのように変動性が激しかったが、積極的な個人投資家のおかげで株価は概ね高止まりした。これに対し、「FOMO(Fear of Missing Out)」に陥った投資家のためという分析が出てきた。取り残される不安のために個人投資家の追撃買いが続いたという診断だ。
だが今年に入って雰囲気が変わった。世界の電気自動車市場の見通しが尋常でない。2021年だけでも100%以上成長した市場が昨年は33%成長するのにとどまり、今年は19%にすぎないという見通しだ。米国では電気自動車転換の速度調節が進んでおりドイツとフランスなど主要国が相次いで電気自動車補助金を中断したり大幅縮小している。米国は昨年4月に二酸化炭素(CO2)排出量を減らすために2032年に米国で販売される新車のうち電気自動車の割合を67%まで増やすことにした。だが最近発表した最終案ではこの割合が56%に低くなった。電気自動車に関心が多い購入者の需要が限界に達して待機需要が減っており、高い電気自動車価格、不完全な充電インフラ、高物価・高金利による消費心理悪化などが重なり需要は冷え込んでいる。こうした現象をめぐりキャズム理論で説明したりもする。新たに開発された製品が一般大衆に受け入れられるまで需要が減ったり停滞したりする現象だ。
こうした雰囲気のためテスラを見るウォール街のまなざしは冷たい。時価総額も米国企業10位圏外に押し出されて12位圏をぐるぐる回っている。個人投資家の損切りも続いている。今年初めだけでもテスラは個人投資家が最も多く買い越した銘柄1位だった。だが2月には2位に押され、今月は7位と大きく落ち込んだ。その穴を人工知能(AI)の皇帝であるエヌビディアが埋めた。今月個人投資家のエヌビディア買い越し規模はテスラの4倍に達する。こうした状況から電気自動車が「キャズム」に勝てず消えるだろうと考える専門家はほとんどない。MP3プレーヤーが市場に出てきた時は注目されなかったが、2000年代にインターネットが普及して人気を呼んだように、時間が必要なだけだ。だがその時間が過ぎれば電気自動車市場は特定会社の独走ではなく多くの会社が激しく競争する「戦国時代」になる可能性が大きい。テスラはすでに昨年、世界の電気自動車販売1位の座を低価格製品を掲げた中国BYDに明け渡した。ここに韓国、米国、ドイツ、日本など既存の自動車メーカーは電気自動車開発に全力を注いでいる。
このところ世界市場では「AIブーム」となっている。AI企業の皇帝と呼ばれるエヌビディアの株価は1年5カ月前だけでも112ドル水準にすぎなかった。いまは950ドルに達し8.5倍水準に上がった。短い期間に株価が急騰したためウォール街では「AIバブル」議論が広がっている。株価がとても高評価されており、2000年代の「ドットコムバブル」と似ているという主張と、技術企業の業績やファンダメンタルズを考慮すれば当時とは違うという反論がぶつかり合う。時間が経てば強風は疾風に変わりいつのまにかそよ風になって私たちのそばにいることになるだろう。AIも同じだ。革新製品が汎用化されれば一般製品になる。
キム・チャンギュ/経済エディター
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