「半導体人海戦術がくる」。

世界の政治・経済が半導体供給網を中心に再編されるだろうと予言した『半導体戦争』の著者であるタフツ大学のクリス・ミラー教授の新たな警告だ。中国製太陽光パネルの低価格攻勢で欧米企業が相次ぎ倒産した事態が、低価格半導体市場で再現されかねないという話だ。




フィナンシャル・タイムズは２８日、「西側諸国は中国のチップ市場のシェア拡大に備えなければならない」という題名のクリス・ミラー教授の寄稿を掲載した。ミラー教授は寄稿で、中国１位の半導体ファウンドリー（委託生産）企業ＳＭＩＣのＣＥＯが最近「世界的な半導体供給過剰が発生するだろう」と予測しながらも「設備投資（ＣＡＰＥＸ）を７５億ドル（約１兆１０６０億円）に増やす」と宣言したことに注目した。供給過剰に生産を増やすのは経済論理に外れるが、中国の半導体企業は政府補助金に期待しむしろ生産能力を増やしているということだ。ミラー教授は「中国の半導体生産能力は今後３年間で６０％、５年以内に２倍まで増加するだろう」と予想する。

ＳＭＩＣによると、同社の７－９月期売り上げは前年同期比１５％、純利益は８０％それぞれ減少した。同社は２０２０年末に米商務省の貿易ブラックリストに登録されてから業績が下落傾向だ。それでも設備投資規模を年初計画値である例年水準の６３億５０００万ドルより１８％増やした。ＳＭＩＣは米国ブラックリストの「同志」でもある中国のスマートフォンメーカーのファーウェイと協力し昨年ファーウェイのスマートフォン向けの５Ｇチップを生産した。

ＴＳＭＣが中国のチップ人海戦術を見守りながら懸念しているとミラー教授は伝えた。米国が先端チップ製造装備の中国輸出を防いでおり中国は自動車や消費者家電向けの低価格プロセッサチップを攻略するが、ＴＳＭＣのＣＥＯはこの部門の過剰生産が自社の利益を落とすだろうと心配するという説明だ。ＴＳＭＣの１０－１２月期の業績発表によると、同社の売り上げの２５％は２８ナノメートル（１ナノメートル＝１０億分の１メートル）以上の旧式工程から出ている。

ミラー教授は「最も悲観的な分析家は中国の太陽光パネル投資を例に挙げる。一部貿易弁護士も話した過剰生産問題がいまでは主要７カ国（Ｇ７）の政策議論の最高水準で扱われる」と書いた。中国企業の低価格太陽光パネル攻勢で昨年世界の太陽光パネル価格は２５％以上急落し、欧州の太陽光企業が相次ぎ破産した。ミラー教授は「中国製チップのダンピング問題に米国は安保の側面で、ＥＵは貿易公正取引の側面でアプローチするだろう」と予測した。