イスラエルとハマスの戦争にレバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派など親イラン勢力が加勢した中、これら武装勢力の後援者、中東のシーア派盟主イランの参戦の可能性に世界が注目している。一部の予想とは違い、米国・イスラエルに脅迫ばかりして直接的な行動は避けるようなイランの動きをめぐり、３月の総選挙を控えて内部管理のために紛争の拡大を望んでいないという分析が出ている。



◆イラン、総選挙控え内部管理に焦点


イスラエル・ハマス戦争が１００日以上続いているが、イランは戦争に直接介入していない。ヒズボラがイスラエル北部、フーシ派が紅海、イラクのシーア派民兵組織が自国内の米軍基地などを攻撃したが、イランはイスラエルと米国に向けて「レッドラインを越えた」「犯罪を黙過しない」などと激しく非難を浴びせただけだ。

そして今月初め自国領土内で自爆テロが発生すると、イラク・シリア（１５日）、パキスタン（１６日）にミサイル攻撃を断行し、イスラエル－ハマス戦争以降、初めて軍事行動を見せた。このため中東地域の緊張が高まったが、それ以降は追加の武力使用がない状態だ。

これに対しフィナンシャルタイムズ（ＦＴ）はイランも米国のように戦争拡大を望まない状況と指摘した。匿名のイラン政府関係者はＦＴに「イランはイスラエル・米国との直接的な戦争を望まず、カタールのような仲裁国を通じて意思疎通をしながら紛争の拡大を防いでいる」とし「イラク・パキスタンなどを攻撃したのは、米国・イスラエルに『我々に触れず早くガザ地区での戦争を終わらせろ』というメッセージを送った」と述べた。

こうした動きについて、海外メディアはイラン政府が戦争よりも内部管理と政権維持に注力しているためと解釈している。イランは３月１日に総選挙を実施する予定だ。ＡＦＰ通信によると、イランの反米・保守派は２０２０年以来４年ぶりに実施される今回の総選挙でも権力を掌握しようとするが、２年前に発生したヒジャブデモの余波で内政が依然として不安定な状況だ。

２０２２年９月、イランではヒジャブをまともに着用しなかったという理由で警察に逮捕されて疑問死したマフサ・アミニ事件をきっかけに大規模なデモが起きた。１９７９年の革命で政教一致政権が発足して以降、最大の規模だった。また、米国の経済制裁とウクライナ・ロシア戦争発の食料・エネルギー危機などで物価上昇率が５０％に迫るなど経済問題も深刻だ。海外メディアなどによると、イラン国民の６８％が議会に不満を抱いている。

特に２０、３０代は政府の強硬路線に否定的だ。したがって今年の総選挙の投票率は２０２０年の総選挙で記録した歴代最低投票率（４２．５７％）を下回るという予想が出ている。総選挙をきっかけに新たに国民的な抵抗運動が発生することも考えられる。

高麗大のソン・イルグァン中東・イスラムセンター政治・経済研究室長は中央日報に「こうした状況でイランが参戦すれば大規模なデモが起きて、内部の治安が乱れる可能性がある」と指摘した。英シンクタンクのチャタムハウスのバキル中東・北アフリカ本部長もＦＴに「イランの最優先順位はイランであることを忘れてはいけない」とし「イランは政権維持のために直接打撃を受けない限り自国の軍隊を動員せず自制するだろう」と予想した。


イラン、今にも戦争する勢いだったが…イスラエルに脅迫だけ…紛争拡大できない理由（２）