北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長
半面、自ら公然と戦争に言及する姿は、金日成・金正日時代とは明確な異なる。金日成主席は戦争に失敗した後、国防での自衛という原則を掲げ、4大軍事路線(全軍現代化、全国民武装化、全軍幹部化、全国要塞化)を督励し、青瓦台(チョンワデ、大統領府)奇襲・板門店(パンムンジョム)斧蛮行(ポプラ事件)などの挑発を続けた。当時、北朝鮮の幹部が「ソウル火の海」などと戦争に言及したりしたが、最高指導者が自ら出てくることはなかった。むしろ拳を隠したまま南北対話を推進し、統一案を先制的に出した。
北朝鮮は、金日成主席が生前に最後に署名した文書が死去前日の1994年7月7日に目を通した南北最高位級会談(首脳会談)に関する文書だと宣伝する。金正日総書記も核・ミサイル開発を徹底的に隠しながら、2000年と2007年にそれぞれ当時の金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領と首脳会談をし、低い段階の連邦制など南北の平和統一と和解・協力のための合意文に署名した。北朝鮮が金科玉条とする遺訓だ。北朝鮮の『朝鮮語大辞典』は遺訓を「偉大な首領が生前に幹部と人民に残した教示」と定義している。金正恩委員長は執権直後の2012年3月に板門店を訪問し、「我々は共に首領様(金日成)と将軍様(金正日)の生涯の念願を必ず実現しよう」と述べた。2018年に3回の南北首脳会談を開いて前方の軍事衝突の可能性を遮断するとした先代の統一の遺訓を履行する考えだと把握されたりもした。
しかし最近、韓国を「主敵」と定め、公然と戦争に言及するのは、本人が自ら署名した南北合意に対する否定だ。「先代首領」の遺訓を破ることでもある。北朝鮮は首領の決定に無条件に従うべきだと強調する。首領の決定は誤謬がなく神聖ということが前提だ。金委員長が5年も経たないうちに自身の約束を覆して先代首領の遺訓と異なる道を進めば、自身を神のように崇める住民はそのような「最高尊厳」をどう考えるだろうか。
チョン・ヨンス/統一文化研究所長/論説委員
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